初心者がVRMMOをやります(仮)
ある一幕
当然、このことがクィーンに伝わりジャッジはまた説教を受けることになる。
それから一週間後、ジャッジは「安楽椅子」で頭を抱えていた。
「何であれがPvPの月間ベストまであがってるんだ!?」
タブレットをのぞいていたジャッジが見つけたのは「PvPベストランキング」。
しかも、PvPを楽しむプレイヤーが作った「非公式」サイトにして、どこの情報よりも早く PvPの情報を集める「PvPで落とし穴」でのランキングだ。
どうして「落とし穴」なのかというと、やりすぎると経験値のペナルティがつくからである。それでも、このサイトの管理人は「PvPを楽しむべき」という観点からのジョークらしい。
「それだけシュウへの反発がまだあるってこった。実況の楽しみを取ったから、PvPでの会話が全く反映されないおかげだろ。俺らくらいだ。どん引きしたの」
ディスカスが呆れたように言う。
「あれからサブマスのログイン率が減ってるってのも理由だと思うっす」
テイクアウトの品を待っていたレンが割って入った。
「ログイン自体減ってるのか?」
「はいっす。ギルマスが言うには色々とリアルが忙しいらしいっすけど。就職活動しなきゃいけないからって」
その言葉自体が怪しい。そう思うのはジャッジだけのようだ。
「カナリアに近づかなきゃどうでもいい」
「確かにな」
ジャッジの言葉にディスカスが頷いた。
シュウがあまりログインしなくなってから、イッセンやリリアーヌも時々「TabTapS!」に遊びに来るようになった。
「……へぇぇぇ。そんなことがあったのか。直接見てみたかった」
のんびりと抹茶オレを飲みながら、イッセンがしみじみと言う。
「そんなことよりも、あのジャッジさんに説教できるヒトっているんですね」
「おい」
「あれ? りりはそっち?」
「うん。あんなボンボン、どうでもいいかなぁ。勿論、私の可愛い従妹に関わんなきゃだけどさ」
ジャッジの突っ込みを無視してリリアーヌが呟く。
「それにボコボコにされて悔しがるのは、いっくんが一回見せてくれたし。あんなナルシストな男、見たくもないし」
こてん、と首を傾げる仕草はカナリアに似ている。さすが従姉妹同士。……が、カナリアに比べダークさが増しているのは性格の差か。
「……それもそっか」
そんなことを気にすることなく、イッセンが同意した。
その日、カナリアが来る前にイッセンたちはログアウトした。わざとジャッジと時間をずらしてログインするという行為が、今回は裏目に出た形だ。
「明日も来るから」
「おう。本人も楽しみにしてたぞ」
そんな会話をして、二人を見送った。
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