初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

クエスト真っ最中


「ひぇぇぇ!!」
「カナリア! 叫ぶ暇があるなら指示出す!!」
 めまぐるしい忙しさの中、カナリアはディスカスに怒られていた。
「お話しながら別のことは難しいです~~!!」
 その言葉に、ジャッジとスカーレットが痺れを切らした。

 スカーレットが携帯を。ジャッジが指示だしを。それに従うだけでカナリアは精一杯だった。
「兄貴、少しは自重しな。カナリアちゃん大パニックよ?」
『これ位で?』
「どんだけよ」
『は? リリアーヌ君とタブレットでメールしつつ、俺と電話しろってくらいしか言ってないぞ。その中で指示出してるだ』
 内容もそこまでひどくない。
「あたしが電話取んなきゃ、ジャッジが電話取ってたんだけど」
『サンキュー。お前んとこに十数体行くからよろしくっ』
 それだけ言って一度電話が切れた。

 そのあとはスカーレットのスマホに連絡が来るようになっていた。

 カナリアがしたことは、他の人の状態を気にすること。それくらいだった。

 落ち込むカナリアを休憩中、イッセンとリリアーヌがここぞとばかりに甘やかしていた。
「美玖は慣れてないからな~~。俺らもSNSとかで連絡取り合いたいと常々思ってるよ」
「? 携帯って電話とメール機能だけじゃないの?」
「……いつ時代の携帯?」
 イッセンが不思議そうに言う。
「カナリア君が持ってたのは、十年以上前の携帯だったけど? 俺が新任で教師したばっかりのころ持ってたやつ。当時の最新機種だったかな~~。よくぞ動いてたと思ったし」
「母さんに報告してやるっ」
 それを聞いたイッセンが怒り出した。
「あの人たち自分は最新機種持ってたんだぜ? しかもそれぞれ二台ずつ」
「説教してもらってくれ。学校からのメール受信設定すら嫌がってたし」
 にこりと笑ってディッチが過去を言う。
「パパにも出張ってもらおうかな~~」
「それは止めておいた方がいいよ。そのために仕事休むことになるからね?」
 トトが苦笑して止めはじめた。
「そっかぁ。パパは土日しか休みないから、止めとく。ただでさえ針のむしろだって言ってたし」
「母さんは交代制だからね。たまに行ってるみたいだよ。その度に一日いるから、向こうでもいい顔しなくなってるみたい」
「……お前らの親は……」
 呆れたようにジャスティスが呟いていた。


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