初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

長らく疑問だったこと


 レイド二戦目。カナリアはアイテム採取に勤しんでいた。
「……カナリア君」
「何でしょう?」
「せめてひと段落つけてからやりなさいっ! 君は大事な回復役でしょう?」
「……忘れてました」
 目の前にいい採取場があったことにより、レイド戦のことがすこんと抜けてしまったのだ。
「そして、お前らもっ! スクショ取ってないでたしなめろ!!」
「えぇぇ? 採取してる時のカナリアちゃん、かなり可愛いんだもん。ウサミミ再度つけたいくらいにさ」
 悪びれることなく、スカーレットが返していた。
「ディッチさん、カナリアなら俺らが警護してましたから、怪我負ってませんよ」
「趣旨が違うっ! レイドが最重要! 暇を見て採取!!」
「まぁまぁ。カナリアが珍しい採取ポイント見つけてたからな。思わず採取させちまった」
「……ったく」
 そのあとぼそぼそとディスカスがディッチの耳ともでささやいていた。

「……なんつうか、カナリア君って何気にラック値高すぎだ」
「ビギナーズラックってやつだろ。もう、ビギナーって言っちゃ悪いような気がするが」

 そんなことを二人で話していた。


 余談ではあるが。
 カナリアはかなり珍しい採取場所、しかも時間限定というかなりレアな場所で採取していたのだ。これは攻略サイトでも見ることが出来ず、次に同じ時間に来ようが出ていないことが多い。
 挙句、見つけた当人しか採取できないという縛りつき。
 色んな意味で、見つけたのがそれなりに採取や採掘LVのあるカナリアでよかったというのが、職人系メンバーの言い分だ。

 そんなわけで、そこからは採取・採掘場所を見つけたらレイドメンバー全員に連絡、その上で行動を起こすという約束になった。


「美玖、ステータス見せて」
 唐突にイッセンが言う。
「……ジャッジさん、こりゃないよ」
 タブレットで見た、イッセンが呆れていた。
「美玖、どんな割り振りしたら、こんな偏った振り方になるの?」
 その言葉に、レイド戦を一時中断して全員がカナリアのステータスを凝視していた。
「……カナリア……」
 ステータス画面を見たジャッジまでもが呆れていた。

 そう、カナリアのステータスは他のプレイヤーよりもLUK値が居様に高いのだ。

 理由としては、始めたばかりのころに遡る。
 何をあげるか、というのをセバスチャンを話していたとき、DEXはものづくりをしていれば自然に上がると言われた。
 それを踏まえてNPCに弟子入りしたのだが、失敗の多さにその時の師匠が「少しLUK値上げておけ」と助言したのだ。勿論、師匠側としては気休め程度の話だったのだが、カナリアは「LUK値を高くすればいい!」という極論に至ったのだ。
 当然、それをジャッジもセバスチャンも知らず、注意することがなかっただけというオチなのだ。

 それを聞いたメンバーは誰一人何も言えなかった。

 ただ一人、ジャッジを除いて。
 ジャッジは初期のころの博打的な成功と失敗の原因がやっと分かった。誰が、そんなことをしていると思うだろうか。

 そして現在、カナリアのLUK値はこのメンバー内で誰よりも高かった。

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