老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
152話 風龍が御前
ユキムラはよく眠れなかった。
抱きしめたソーカの柔らかい体。そして重ねた唇、実際には触れた程度、その感触が16・7歳の肉体をマグマのように焚き付けた。
彼は内に秘めた炎を抑えるのに、その情熱を料理に叩きつけた。
「す、凄いですね師匠。朝から……」
「ああ……」
「若さと勢いって素敵……」
ヴァリィはなんでも知っている。
「これは……ここはダンジョンの中だよね……凄いな……」
円形のテーブルに広げられた数々の料理、山の幸、陸の幸、海の幸。全てを用いた料理の一つの極み。
満漢全席だった。
「ユキムラさんおはようございます」
「お、おはよう……」
ユキムラは動揺している。煮えたぎるような劣情は全て情熱として料理にぶつけた。
それでも気恥ずかしさは消えない。
「どうしたんですか?」
ソーカが覗き込んでくる。
ユキムラの正面にちょこんと座って上目遣いで見上げてくるソーカ。
戦場において攻め時とその戦法を見極める力は日々磨き上げている。
(!? こんなに、可愛かったっけ?)
ずきゅーん。
小中学生のような友達の延長の付き合いから、男女を意識した途端に相手が可愛く見える。
若い時にありがちなことだ。
「な、なんでもにあよ!」
ユキムラは、戦いが始まるまでそのドギマギが収まらず難儀することになる。
一度戦いに入り込めばまたいつものユキムラを取り戻すことが出来た。
ソーカからすれば、強力にユキムラに楔を打ち込むことができ、地盤を盤石なものへと変えられた。
二人の関係は、牛歩のようにゆっくりではあるが、確実に近づいていくのであった。
そんな二人のお遊戯のような恋物語を生暖かく見守っているパーティのメンバーは、満漢全席を堪能してダンジョン攻略を続けていく。
圧倒的火力による殲滅はダンジョン攻略をスムーズに進めていく、敵は確かにレベルが高く強力だが、一戦一戦をこなすごとに特にヴァリィとリンガーは成長著しかった。
「体に羽が生えたように動けるよ!」
「力が体に馴染んでいくのがわかる。私、強くなってる……」
もちろん他のメンバーもどんどん強化されていく。
手に入れたアイテムは毎晩毎晩強力な武具へと変貌していく。
当たり前のように聖剣、魔剣、神話の金属が宝箱から手に入ることに、リンガーがすっかりと慣れたころ、最深部である70階層へと到達していた。
風龍の巣だ。
「ダンジョンを潜った先は山頂だった……」
「レン、それはよくあることだから突っ込んだら負けだよ」
「さてと、ここは風龍がお相手なのかしらね」
「本当に風龍を討伐できれば、これほど嬉しいことはない。アイツのせいで北東部は全く開発ができん」
「風耐性はしっかりと取っているからまず大丈夫。あとはスピードに慣れることが大事だ。
良い訓練になると思う。あいつらと戦う……」
ユキムラの表情がぐっと引き締まる。
少しダメムラに成りかけていたのもすっかりと吹き飛んだようだ。
もちろん全員引き締まった表情をしている。
この高レベルダンジョン、後半は特に激戦続きだった。
それでもその一戦一戦が自らの血肉となり強くなるのがわかる。
それは戦いに身を置くものとしてこれ以上無い喜びだった。
さらに宝箱から手に入る物は今まで見たことがないような物だらけ。
「あ、鉱石が濃縮系になってきたね」
「師匠なんですか濃縮系って……?」
「簡単に言えば上位互換の鉱石だね。単純に同じ名前の鉱石でも濃縮ってつくと強いっていう安易な物だよ」
濃縮→上級→上級濃縮→超級→超級濃縮→神級→神級濃縮
できるものは同じだが、ステータスが高い。名前の前に真、名前の後ろに改がつくなど、まぁはっきり言ってしまえば延命措置がこれからずっと、レベルが9,999になるまで続いていくことをユキムラは知っていた。
もちろんこの世界の人々はそんなレベルのものが存在することを知る由もない。
それでもユキムラは少しでも皆の武器防具、戦闘魔道具などを良いものにする努力を続けている。
全ては惨劇を防ぐためだ。
たぶん、まだここだけでは終わらない。
VOのイベントが少し改変され、時間を渡りながら各大陸を旅することになるだろうことは推測できた。
時間はもとに戻って風龍の巣。
一本道の山道を歩くと山頂が巨大なすり鉢状になっている。まるで闘技場のようだ。
【矮小な人間が、我が住処に入るとは。どうやら死にたいらしいな】
威圧感を込めた声が天上より響く。
ごうっ! と風が吹き抜ける。
巨大な影が地面に現れる。風龍のお出ましだ。
【さて、逃しはせぬが申し開きがあるなら聞こう】
「風龍殿、女神を知っているか?」
【ああ、あの娘なら奥に吾が護っているぞ】
「彼女を開放しに来た!」
明らかに風龍の機嫌が悪くなる。
【馬鹿な!? 奴を蝕む呪いは吾でも食い破れんのだぞ? 貴様らごとき人間がどうこうできるものではないわ!!】
「私たちは女神の加護を受けている。できればこのままその女神のところへ通してくれないか?」
【くくく……ほざくな人間ごときが!! どうしても通るというなら吾を倒していけ!】
体長10mほどと小振りな風龍だがその翼を広げると20mに達するだろう。
緑色に光る鱗が波立って風龍の怒りを示している。
周囲に巻き起こる風がその身を守るように渦巻いている。
見事な角に鋭い爪、威風堂々な佇まいの風龍が、大きく羽根を羽ばたかせる。
突風が白狼隊を打ちつける。しかし白狼隊は身じろぎ一つしない。
それが癪に障ったのか風龍がいきり立つ。
「そうさせてもらおう!」
いざ、風龍退治だ。
抱きしめたソーカの柔らかい体。そして重ねた唇、実際には触れた程度、その感触が16・7歳の肉体をマグマのように焚き付けた。
彼は内に秘めた炎を抑えるのに、その情熱を料理に叩きつけた。
「す、凄いですね師匠。朝から……」
「ああ……」
「若さと勢いって素敵……」
ヴァリィはなんでも知っている。
「これは……ここはダンジョンの中だよね……凄いな……」
円形のテーブルに広げられた数々の料理、山の幸、陸の幸、海の幸。全てを用いた料理の一つの極み。
満漢全席だった。
「ユキムラさんおはようございます」
「お、おはよう……」
ユキムラは動揺している。煮えたぎるような劣情は全て情熱として料理にぶつけた。
それでも気恥ずかしさは消えない。
「どうしたんですか?」
ソーカが覗き込んでくる。
ユキムラの正面にちょこんと座って上目遣いで見上げてくるソーカ。
戦場において攻め時とその戦法を見極める力は日々磨き上げている。
(!? こんなに、可愛かったっけ?)
ずきゅーん。
小中学生のような友達の延長の付き合いから、男女を意識した途端に相手が可愛く見える。
若い時にありがちなことだ。
「な、なんでもにあよ!」
ユキムラは、戦いが始まるまでそのドギマギが収まらず難儀することになる。
一度戦いに入り込めばまたいつものユキムラを取り戻すことが出来た。
ソーカからすれば、強力にユキムラに楔を打ち込むことができ、地盤を盤石なものへと変えられた。
二人の関係は、牛歩のようにゆっくりではあるが、確実に近づいていくのであった。
そんな二人のお遊戯のような恋物語を生暖かく見守っているパーティのメンバーは、満漢全席を堪能してダンジョン攻略を続けていく。
圧倒的火力による殲滅はダンジョン攻略をスムーズに進めていく、敵は確かにレベルが高く強力だが、一戦一戦をこなすごとに特にヴァリィとリンガーは成長著しかった。
「体に羽が生えたように動けるよ!」
「力が体に馴染んでいくのがわかる。私、強くなってる……」
もちろん他のメンバーもどんどん強化されていく。
手に入れたアイテムは毎晩毎晩強力な武具へと変貌していく。
当たり前のように聖剣、魔剣、神話の金属が宝箱から手に入ることに、リンガーがすっかりと慣れたころ、最深部である70階層へと到達していた。
風龍の巣だ。
「ダンジョンを潜った先は山頂だった……」
「レン、それはよくあることだから突っ込んだら負けだよ」
「さてと、ここは風龍がお相手なのかしらね」
「本当に風龍を討伐できれば、これほど嬉しいことはない。アイツのせいで北東部は全く開発ができん」
「風耐性はしっかりと取っているからまず大丈夫。あとはスピードに慣れることが大事だ。
良い訓練になると思う。あいつらと戦う……」
ユキムラの表情がぐっと引き締まる。
少しダメムラに成りかけていたのもすっかりと吹き飛んだようだ。
もちろん全員引き締まった表情をしている。
この高レベルダンジョン、後半は特に激戦続きだった。
それでもその一戦一戦が自らの血肉となり強くなるのがわかる。
それは戦いに身を置くものとしてこれ以上無い喜びだった。
さらに宝箱から手に入る物は今まで見たことがないような物だらけ。
「あ、鉱石が濃縮系になってきたね」
「師匠なんですか濃縮系って……?」
「簡単に言えば上位互換の鉱石だね。単純に同じ名前の鉱石でも濃縮ってつくと強いっていう安易な物だよ」
濃縮→上級→上級濃縮→超級→超級濃縮→神級→神級濃縮
できるものは同じだが、ステータスが高い。名前の前に真、名前の後ろに改がつくなど、まぁはっきり言ってしまえば延命措置がこれからずっと、レベルが9,999になるまで続いていくことをユキムラは知っていた。
もちろんこの世界の人々はそんなレベルのものが存在することを知る由もない。
それでもユキムラは少しでも皆の武器防具、戦闘魔道具などを良いものにする努力を続けている。
全ては惨劇を防ぐためだ。
たぶん、まだここだけでは終わらない。
VOのイベントが少し改変され、時間を渡りながら各大陸を旅することになるだろうことは推測できた。
時間はもとに戻って風龍の巣。
一本道の山道を歩くと山頂が巨大なすり鉢状になっている。まるで闘技場のようだ。
【矮小な人間が、我が住処に入るとは。どうやら死にたいらしいな】
威圧感を込めた声が天上より響く。
ごうっ! と風が吹き抜ける。
巨大な影が地面に現れる。風龍のお出ましだ。
【さて、逃しはせぬが申し開きがあるなら聞こう】
「風龍殿、女神を知っているか?」
【ああ、あの娘なら奥に吾が護っているぞ】
「彼女を開放しに来た!」
明らかに風龍の機嫌が悪くなる。
【馬鹿な!? 奴を蝕む呪いは吾でも食い破れんのだぞ? 貴様らごとき人間がどうこうできるものではないわ!!】
「私たちは女神の加護を受けている。できればこのままその女神のところへ通してくれないか?」
【くくく……ほざくな人間ごときが!! どうしても通るというなら吾を倒していけ!】
体長10mほどと小振りな風龍だがその翼を広げると20mに達するだろう。
緑色に光る鱗が波立って風龍の怒りを示している。
周囲に巻き起こる風がその身を守るように渦巻いている。
見事な角に鋭い爪、威風堂々な佇まいの風龍が、大きく羽根を羽ばたかせる。
突風が白狼隊を打ちつける。しかし白狼隊は身じろぎ一つしない。
それが癪に障ったのか風龍がいきり立つ。
「そうさせてもらおう!」
いざ、風龍退治だ。
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