老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
89話 ファッションセンス
なぜかそのままヴァリィズラブの作業場で夕食になった。
基本的には受注生産なのでお客さんは予約待ち状態だそうで店舗側はもう閉めたそうだ。
カイラさんはユキムラが出した料理のあまりの美味しさに驚いていた。
「マジックバックは始めて見ました! 食事も保存できるんですね。しかも熱々!
どれもとっても美味しいです! なんかほんと逆にスミマセン」
ヴァリィは物凄い勢いで作業を続けている。
レンもソーカもその作業に目を奪われている。
二人共裁縫スキルは持っている、スキルではない実際のプロの技と言うものを目の当たりにして感動しているようだ。
「凄いですね、師匠の技とは違いますが、これがプロの技なんですね」
「おや? ユキムラさんも洋服を作られるんですか?」
「ああ、ちょっとズルみたいなものですけど……」
「凄いんですよユキムラさんは、これなんかこの間作ってもらったんですよ!」
ソーカがこの間のドレスを取り出す。
「凄いじゃないですか……ん? これ、どうやって……え?……なんでこんな曲線……」
カイラの目の色が変わる。
一流の職人が見ればこのドレスがただならぬものであることがわかる。
「見せて」
気がつくとヴァリィが立っていた。
ドレスをまじまじと見ている。
食いつかんばかりで見ているせいで、ソーカがハラハラしている。
しばらく一通り見終わるとその太い腕からは想像もできないほど優しくソーカへドレスを返す。
「ユキムラちゃん、あなた何者?」
その目は一流の戦士が発するソレであった。
「自分は来訪者、サナダ ユキムラです」
思わず隠し事せずに答えてしまう。
「来訪者……あんな技術見たことがないわ、素晴らしい。いや、素晴らしすぎる。
一体どれだけの修練をこなせばあの域に到達するのか想像もできない!
ユキムラちゃんまだ16・7よね!? どうやってあの技術を手に入れたの!!」
疑問と、悔しさが交じるような口調でユキムラに詰問するヴァリィ。
自分が積んできた修行が高ければ高いほどその気持が大きいんだろう。
ユキムラはその気持が痛いほどわかるので隠さずに話すことにする。
「今からヴァリィさんに服を作ります。たぶんヴァリィさんほどの人ならソレだけで理解できると思います」
それからユキムラはスキルを授与するのと同じように指導を始める。
ヴァリィもカイラも食い入るようにそれを聞いている。
そして、目の前であっという間に出来上がる服に言葉を失った。
スーツ。日本では一般的なヴァリィに似合いそうな深いブラウンのスーツだ。
ヴァリィはそれを受け取るとまじまじと引っくり返したり引っ張ってみたり穴が開くほどに見つめ、そしておもむろに脱ぎだす。
そして袖を通しながらその洋服の異質さを確認する。
「私、採寸もされていない。それなのに、何この服……
身体を動かしても全く邪魔しない。着ているのも忘れてしまいそう……
これよ、私はこれを目指しているの……
しかも、なに今の……あんな画面触っていたら服が出来るなんて……」
「ヴァリィさん、画面が見えたの!?」
ユキムラは驚いた。どんなに才能がある人でも数カ月は現れないVOのシステムが初見から見えている。
「え、ええ。なんかマス目をすごい速さでいじってたわよね?」
「ヴァリィさん。座って。作りたい洋服を想像して、目の前に何か出て来る!?」
ユキムラは大男を無理やり腰掛けさせ作業させる。
後ろから抱きしめるようにスキルの説明をする。凄い絵面だ。
「え、やだ。なにこれ……」
「そしたら素材が出てるでしょ、それを選んで、そのままやってみて」
ヴァリィはとんでもない才能の持ち主だった。
ユキムラ以上の才能を持っていた。
出来上がったドレスはまるで一枚の布から作られたような鏡のような輝きを放っていた。
色はショッキングピンクで目に痛いけど。
「これを、私が……?」
「私もぼんやり見えました……ユキムラさんわたしもやっていいですか?」
そしてカイラも素晴らしい才能を持っていたのだ。
その後、取り憑かれたようにヴァリィは創作を続けた。
夜も更けたので明日の朝、必ず、王城へ向かう洋服を作るというヴァリィの真剣な申し出を受けて、ユキムラ達は宿へと帰ることにした。
「すごい人でしたね、いろいろな意味で……」
「確かに……、それでもすごい才能を持っていたね」
  色々と思い出してブルりと身が震える。
「私未だにあんなに早く作れないですよ」
「正直俺よりも上だと思う。本当の天才っていうんだろうねあの二人は……」
ユキムラはVOにおいてほぼ全ての分野で最強と言ってよかった。
それでもほんの一握り、ある部門において同等か上の人間もいた。
そういう人が天才なんだろう。ユキムラの凄いことは全てのことで超一流だという点だ。
一点において頂点に立つのはたぶん戦闘だったんだと振り返って思う。
UBMを使っている時点でやや土俵が違う面もある。
久しぶりに天才に触れてユキムラは興奮していた。
(戦闘においてはガレオン、服飾でヴァリィ。さすがに王都だな)
宿も流石は王都、一流で上等な布団に包まれあっという間にぐっすりと眠りにつくのだった。
そして眠りにつく寸前思うのだった。
ヴァリィの趣味で服を作ってもらって大丈夫なのか……? と。
しかし、いろいろあって疲れていた身体は睡眠の欲求に抵抗ができなかったのであった。
基本的には受注生産なのでお客さんは予約待ち状態だそうで店舗側はもう閉めたそうだ。
カイラさんはユキムラが出した料理のあまりの美味しさに驚いていた。
「マジックバックは始めて見ました! 食事も保存できるんですね。しかも熱々!
どれもとっても美味しいです! なんかほんと逆にスミマセン」
ヴァリィは物凄い勢いで作業を続けている。
レンもソーカもその作業に目を奪われている。
二人共裁縫スキルは持っている、スキルではない実際のプロの技と言うものを目の当たりにして感動しているようだ。
「凄いですね、師匠の技とは違いますが、これがプロの技なんですね」
「おや? ユキムラさんも洋服を作られるんですか?」
「ああ、ちょっとズルみたいなものですけど……」
「凄いんですよユキムラさんは、これなんかこの間作ってもらったんですよ!」
ソーカがこの間のドレスを取り出す。
「凄いじゃないですか……ん? これ、どうやって……え?……なんでこんな曲線……」
カイラの目の色が変わる。
一流の職人が見ればこのドレスがただならぬものであることがわかる。
「見せて」
気がつくとヴァリィが立っていた。
ドレスをまじまじと見ている。
食いつかんばかりで見ているせいで、ソーカがハラハラしている。
しばらく一通り見終わるとその太い腕からは想像もできないほど優しくソーカへドレスを返す。
「ユキムラちゃん、あなた何者?」
その目は一流の戦士が発するソレであった。
「自分は来訪者、サナダ ユキムラです」
思わず隠し事せずに答えてしまう。
「来訪者……あんな技術見たことがないわ、素晴らしい。いや、素晴らしすぎる。
一体どれだけの修練をこなせばあの域に到達するのか想像もできない!
ユキムラちゃんまだ16・7よね!? どうやってあの技術を手に入れたの!!」
疑問と、悔しさが交じるような口調でユキムラに詰問するヴァリィ。
自分が積んできた修行が高ければ高いほどその気持が大きいんだろう。
ユキムラはその気持が痛いほどわかるので隠さずに話すことにする。
「今からヴァリィさんに服を作ります。たぶんヴァリィさんほどの人ならソレだけで理解できると思います」
それからユキムラはスキルを授与するのと同じように指導を始める。
ヴァリィもカイラも食い入るようにそれを聞いている。
そして、目の前であっという間に出来上がる服に言葉を失った。
スーツ。日本では一般的なヴァリィに似合いそうな深いブラウンのスーツだ。
ヴァリィはそれを受け取るとまじまじと引っくり返したり引っ張ってみたり穴が開くほどに見つめ、そしておもむろに脱ぎだす。
そして袖を通しながらその洋服の異質さを確認する。
「私、採寸もされていない。それなのに、何この服……
身体を動かしても全く邪魔しない。着ているのも忘れてしまいそう……
これよ、私はこれを目指しているの……
しかも、なに今の……あんな画面触っていたら服が出来るなんて……」
「ヴァリィさん、画面が見えたの!?」
ユキムラは驚いた。どんなに才能がある人でも数カ月は現れないVOのシステムが初見から見えている。
「え、ええ。なんかマス目をすごい速さでいじってたわよね?」
「ヴァリィさん。座って。作りたい洋服を想像して、目の前に何か出て来る!?」
ユキムラは大男を無理やり腰掛けさせ作業させる。
後ろから抱きしめるようにスキルの説明をする。凄い絵面だ。
「え、やだ。なにこれ……」
「そしたら素材が出てるでしょ、それを選んで、そのままやってみて」
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ユキムラ以上の才能を持っていた。
出来上がったドレスはまるで一枚の布から作られたような鏡のような輝きを放っていた。
色はショッキングピンクで目に痛いけど。
「これを、私が……?」
「私もぼんやり見えました……ユキムラさんわたしもやっていいですか?」
そしてカイラも素晴らしい才能を持っていたのだ。
その後、取り憑かれたようにヴァリィは創作を続けた。
夜も更けたので明日の朝、必ず、王城へ向かう洋服を作るというヴァリィの真剣な申し出を受けて、ユキムラ達は宿へと帰ることにした。
「すごい人でしたね、いろいろな意味で……」
「確かに……、それでもすごい才能を持っていたね」
  色々と思い出してブルりと身が震える。
「私未だにあんなに早く作れないですよ」
「正直俺よりも上だと思う。本当の天才っていうんだろうねあの二人は……」
ユキムラはVOにおいてほぼ全ての分野で最強と言ってよかった。
それでもほんの一握り、ある部門において同等か上の人間もいた。
そういう人が天才なんだろう。ユキムラの凄いことは全てのことで超一流だという点だ。
一点において頂点に立つのはたぶん戦闘だったんだと振り返って思う。
UBMを使っている時点でやや土俵が違う面もある。
久しぶりに天才に触れてユキムラは興奮していた。
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