俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第11章 #63「痕跡」

 ---「洞穴がある場所ってここら辺かな?」

 「そうですね。足跡もこの付近にありましたし」

 村を出た俺達は依頼主が言っていた洞穴の付近まできていた。

 付近を調べてみるとゴブリンの足跡は所々ではあるがいくつか見受けられる。ここら辺を歩いていたのはたしかだな。

 「なあ有紗」

 「なに?」

 洞穴を探しながら俺は有紗に話しかけた。有紗はこっちを振り向かずに返事だけ返した。

 「あんなこと言っといてよかったのか?」

 俺はさっきの有紗の発言がいまだに不安だった。大見栄きっといて助けられなかったじゃシャレにならないぞ。

 「不安に押し潰されて自殺紛いなことされるよりマシでしょ?」

 「それはそうかもしれないけど…」

 「それに必ず助けるわよ。だから今はアイツらの寝所突き止めることに集中しなさいよね」

 「…わかった」

 しかし、有紗も有紗なりに考えがあっての発言だったようだ。たしかにあのときの女性は精神的にけっこうヤバそうでなにをやらかすかわからない。

 あれだけ期待された以上、娘さんを無事連れ帰らないといけない。とにかく早くゴブリン達の居所を見つけるために俺は有紗に言われた通り集中して他に痕跡がないか辺りを探すことにした。

 「みなさん、あそこ!?」

 「ん?」

 痕跡を探して少ししてみのりがみんなに声をかけた。なにか見つけたのか?

 「ッ?! ア、アレってもしかして…」

 みのりが指を指す方を見ると、少し離れた道沿いに茶色い大きな物体が倒れていた。俺達は急いでその物体を確認しにいった。

 「ッ!!?? ひ、ひどい」

 茶色い物体の近くまで来ると、その物体の正体がはっきりと判明した。

 茶色い物体の正体は馬だったのだが、無残な姿で横たわっているのを見て、梓が思わず悲痛の声を漏らした。

 身体のあちこちに槍のようなものでめった刺しにされており、大量出血していてかなりエグい姿になっていた。地面には血溜まりもできている。すでに息もしていないし、完全に死んでしまったようだ。

 「どうやら帰りの道中に襲われたらしいわね」

 「えっ?」

 俺達が馬の死体を呆然と見つめている中、有紗は馬の死体を近くで観察しながらぼそりとなにか呟いた。

 「向こうに血の跡が残ってる。襲われてここまで逃げてきたんでしょうね。ここまでは一本道だし、私達が来た方角には血の跡はなかったから間違いないわね。ほら、血の跡が向こう側に続いてるわ」

 有紗は俺達が理由を聞く前に説明してくれた。たしかに向こう側から血の跡がここまで点々と続いている。

 刺されたあと、逃走を図ったものの出血量が多くてここで息絶えてしまったのだろう。想像するととても歯がゆい。

 「それとここら辺に散らばってるのはきっと魔道具ね。さっきの村には売ってなかったし、隣の村で買ってきたやつだと思う」

 さらに有紗は話を続けていた。なんか久しぶりに名探偵アリサの推理が始まったな。

 馬の死体の近くには割れた小瓶や血溜まりで赤く染色した紙などが散乱していた。馬が息絶え倒れた際にぶちまけたのか。

 「死体はわずかだけどまだあったかいわね」

 「っていうことは…」

 「死んだのは私達が来る少し前」

 「ついさっきまで生きていたってことですね」

 「じゃあ馬に乗ってた人は…」

 「まだ近くにいるかもしれないわね」

 「!?」

 有紗の発言で一気に俺達の緊張感が高まった。馬に乗っていた、おそらくあの女性の娘さんがまだこの近くにいるかもしれない。そう考えると、どこかになにかしらの痕跡がまだ残ってる可能性がある。

 「みんな、もう一度手分けして…」

 「きゃあぁぁぁぁ!!??」

 「ッ!!??」

 もう一度近くを捜索しようとしたそのとき、道脇の木々の奥から女性の悲鳴が聞こえた。

 「向こうからだわ。急ぐわよ!」

 女性の悲鳴が聞こえた瞬間、有紗が悲鳴が聞こえた方角を指差し、その方向に走って行った。そのあとを追いかけるように俺達も続いて行くのだった。

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