俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第10章 #23「締めの花火」

 ---「花火の準備がもう少しかかりそうなので、もうしばらくお待ち下さい」

 ミス・菜々志乃コンテストも終わり、教師含め全員体育館からグラウンドの方に集められていた。どうやら毎年後夜祭の締めは花火と決まっているらしい。

 花火までもう少し時間がかかるようで、その間に俺は適当な場所を探して座りながら花火でも見ようかと思い、そこら辺を歩いていた。

 「ここら辺でいっかな」

 少し歩いていると、ちょうどいい高さの段差を見つけてそこに座ることにした。芝生が生えてるから寝っ転がることもできるしな。

 「ふう」

 段差に座った俺はひと息ついていた。ようやく終わるんだなと思うと一気に疲労感と脱力感を感じる。後夜祭のときは有紗達のことばっか考えてたからな。別に変な意味ではなく心配してたという意味合いだからな。勘違いしないでよね。

 「あっ! ようやく見つけた」

 「ん?」

 そんなとき、横から声をかけられた。俺がふと視線をそこに向けると、そこには有紗の姿があった。ボーッとしていたせいか近くにいたことに全然気づかなかった。

 「と、となり座るわよ?」

 「えっ? あっ、うん」

 有紗は俺に声をかけるや否や俺のとなりに座ってきた。なんだろう。ただとなりに座っただけなのにドキッとしてしまった。

 「おつかれ。ミスコン惜しかったな。おまえの番のとき、けっこう盛り上がってたぜ!?」

 「…その話はもうやめて。あんなに恥ずかしい思いするなんて思わなかったわ。あんな大会、もう2度と出ないわよ」

 「そ、そっか」

 俺がミスコンの話をすると露骨に不機嫌そうな顔を浮かべた。原因は負けたことではなく大会に出場したことらしい。

 「なあ有紗。そろそろ聞いてもいいか?」

 「な、なにをよ?」

 「そこまでしてミスコンに出た理由ってなんだったんだ? もう終わったことだし、そろそろ教えてくれてもいいだろ?」

 「ッ?!」

 そんな有紗に俺はずっと気になっていたことを問いかけてみた。恥ずかしい思いをするなんてわかりきってたことだろうし、そこまでしてミスコンに出た理由はなんだったのだろうかとあの日からずっと気になっていたのだ。

 あのときは教えてもらえなかったが、もう終わったことなのだから教えてくれてもいいのではないかと思いこのタイミングで聞いてみたのだ。

 「イ、イヤよ!?」

 「えー?! なんで?」

 「な、なんでもいいでしょ?!」

 しかし、頑なに有紗は教えてくれなかった。人に教えたくないほどのやましい理由なのだろうか?

 「みなさん、大変長らくお待たせしました! 花火の準備ができたのでカウント5秒前からお願いします!」

 「それではいきますよーー」

 「ほ、ほら花火始まるみたいよ!?」

 「あっ、ああ。そうだな」

 余計に気になるところだったが、ちょうどそのタイミングで花火のカウントダウンが始まろうとしていた。有紗も話を逸らすためか花火が打ち上がる方に視線を向けていた。

 理由は気になるがこれ以上聞いても無駄だと思い、俺も花火が打ち上がる瞬間を見守ることにした。

 「ゴー、ヨン、サン、ニー、イーチ」

 司会の2人が大声と共に手を大きく上げ指でカウントダウンを始めると、他の生徒達もそれを真似るようにカウントダウンをしていた。まるで年越し状態だ。

 「ゼロー!!」

 そしてゼロのカウントとほぼ同時に花火が打ち上がった。

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