俺の高校生活に平和な日常を
第6章 #29「脱出」
「お兄ちゃん!? 大丈夫?!」
「梓にイーリスちゃん? なんで2人がここに? 2人も大丈夫なのか?」
たしかに俺の目の前にいるのは梓とイーリスちゃんだった。それがわかった途端、俺は起き上がり2人に声をかけた。
「実はあの時、イーリスちゃんに呼び止められてたの。嫌な予感がするって言われて」
「嫌な予感? それってまさか…」
俺の問いかけに梓が説明してくれたのだが、イーリスちゃんが嫌な予感を感じとったということは、あの光りは魔法の類のものなのだろうか?
「いいえ。あれは魔法とは違うものだわ」
「!? 違うって?」
そう言いかけた時、俺が言おうとしたことを悟ったのか、イーリスちゃんが割って入ってきた。
「アレは魔法の類ではないわ。少なくともあの光りには魔力を感じなかった。嫌な予感がしたのはただの勘よ」
「勘って…」
イーリスちゃんは魔法の類を否定したが、じゃああの光りは一体なんなのだろうか?
「おそらくあの像になにかしらの力が備わってるんでしょうね」
「なにかしらの力って、白石先生みたいな超能力とかってことか?」
イーリスちゃんから気になるワードが飛び出してきた。俺はふと白石先生みたいな超能力の類かと思いイーリスちゃんに問いかけてみたが、イーリスちゃんは「さあ?」と小首を傾げるだけだった。自分から言っといてなんだよ。
「とりあえずここから出るわよ。話しはそれからよ」
イーリスちゃんはそう言うと指先を鉄格子のドアにかかった錠前に当て何か詠唱らしき言葉を一瞬呟いた。
すると静電気の数倍もの雷が錠前を破壊した。錠前が破壊されるとドアがひとりでに開いた。
「他の人はどうする? このまま放っておくのか?」
俺は部屋から出るとふと後ろを振り返り他の人達の様子を伺った。数人ほど呻き声を上げてはいるものの、まだ目覚める様子はない。特にケガをしているわけではなさそうだし、命にかかわるようなことはなさそうだな。
「放っておいてもいずれ自分達で出ていくでしょう。それよりも早く急がないとマズイことになりそうよ」
「えっ? マズイって、何が?」
しかしイーリスちゃんは俺を急かすように背を向け歩き出しながら俺の問いかけに答えた。かなり急いでいるようだが、外で何かあったのか?
「実は私達、ここに来る時にこっそり聞いちゃったの」
すると梓が話しに割って入ってきてイーリスちゃんの代わりに説明しようとしてくれた。なにを聞いたというのだろうか?
「早くしないと、有紗ちゃん達が、皆んなが汚されちゃう!」
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