俺の高校生活に平和な日常を

ノベルバユーザー177222

第6章 #3「夏休みの始まり」

 2016/7/21

 ---とうとう高校生になって初めての夏休みがやってきた。今年の上半期は色々ありすぎてこの日がくるまで1年ぐらい経ったんじゃないかと思えてくるほどに濃密な期間だった。特に4月以降からだがな。

 「うーむ、どうしようか?」

 しかし夏休み初日、何をして過ごそうか悩みどころだった。ちなみに梓はまだ夏休みに入っていないから普通に学校に行っている。有紗は…よくわからん。朝から見かけないが、部屋にこもっているのか、どこかに出かけたのかもわからん。

 「あっ、そうだ!」

 そんなことを考えていると、ふとあることを思い出した。

 それは水着だった。ここ数年、海どころか市民プールにすら行ったことがない俺は、水着を持っていない。

 せっかくの小旅行だ。かたちからでも楽しまねば損だ。

 「よし、そうとなれば、買いに行くか」

 そう思った俺は早速、水着を買いに行くことにした。梓達も今週末に新しいやつを買いに行くと言っていたしな。

 ---俺は近くのデパートの水着売り場に来ていた。女物の水着が目立つ為、普段は立ち寄ったりしないが、いちおうメンズ用も売っているらしい。

 「……」

 しかしこういう場所で買い物をするのに慣れていないからか、ものすごくここにいるのが恥ずかしい。ここにいるところを同級生とかに見られるのはマズイな。そう思った俺は早々に水着を選んだ。

 「…これでいっか」

 思いのほか早く自分好みのデザイン柄の水着を見つけ試着もせず足早にレジカウンターに持って行こうとした。まあサイズさえ合えば問題ないだろう。

 「お客様、とっってもお似合いですよ!」

 「ん?」

 そんな時だった。試着室の方から女性店員さんがやや興奮気味に声を上げていた。接客トークにしては少し大げさな気もするが。

 俺はふと試着室の方に視線を移すと、女性店員2人が試着室の中をジッと愛らしいものを見るように目を輝かせていた。

 しかし俺の方からは店員さんが試着室を囲んでいるため、中がよく見えない。

 「そ、そうかな?」

 「はい! とっっても可愛いですよ!!」

 試着室に入っている客は若干反応に困っている様子だが、店員さんはさらに称賛の声をあげた。

 しかし気のせいか、客の声に聞き覚えがあるのだが。

 「じゃあ、これにしよう…かな?」

 店員に乗せられた客は少し戸惑いながらも購入を決めたらしい。

 「あっ」

 そんな時だった。俺の方からわずかに試着室の中が見えてしまった。

 すると試着室の中には有紗の姿が見えていた。

 迷彩柄の水着を身につけた有紗と目が合いお互い思わず声が出てしまった。

 「……」

 見られた有紗は顔を赤くし身体が硬直していた。

 「? お客様、どうされましたか?」

 有紗の異変に気がついた店員さんは有紗に声をかけているが、全く耳に入っていないようだった。

 気まずい雰囲気を感じた俺は見て見ぬ振りをして足早にレジカウンターに向かって行き、会計を済ませた後、すぐに水着売り場を後にした。後で何をされるのだろうかという恐怖心を抱きながら。

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