デイズ

鬼怒川 ますず

小笠原千愛


「…ショウくん、私たちはいつでも一緒だって言ったよね?」


「……あー…ああ…」


「…私さ、汚れちゃった。たくさん人も殺したし親も失った。今だってショウくんを殺して自分だけ生き残りたいって思ってるくらいに汚れてる」


私は、君の手を取るとその暖かさに涙をこぼす。


「でもダメ…私にショウくんは殺せない。ショウくんだって私を殺せないって言うだろうしこれじゃダメだね! わ、私ってば本当についてないよね!」


私がボロボロと涙をこぼす。


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君は涙をこぼしていた。


伝う涙が顔の血を落として涙の道を作り出す。


僕は何も言えない。


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私は言葉が出そうもない。

でも出す。

それがショウくんの好きな私だから。


「……ショウくんと幸せになるって言ったじゃん。あれさ無しにしといてくれないかな? 私はもう人の子の親にもなれないしそれに見合う価値もない。大きな罪を背負ってるからさ…」


「あ、あぁ…」


「でもさ! こんな私でも誰かを守り通せた! 最愛の人が生き続けることを願った! これって神様もいい評価くれそうじゃない?」


泣きながら私は涙をこぼし続ける。

息が詰まってしゃくりそうになるが、それすら我慢して最期のプロポーズをする。


「大好きです。あなたが本当に私を愛してくれたことが何よりもかけがいのないものです……さようなら、愛…し、て…る…」



そう言って私は名残惜しく彼の手を離す。
君は何か言いたげに私に手を差し伸ばすが、私は上から見ていたあの男を睨みながら言った。



「さぁ、早く自決用の拳銃を差し出してくれないかしら」


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「…ふざけんな」


スペースレンジャーはドンッと操作盤を叩いていた。

それに驚いて研究員が視線を向けるが御構い無しに彼は悔しがる。

本来なら生きるためにあの女が男を殺すと予想していた。

もう十分に人格も精神もズタズタになったと思ってこの実験を行ったというのに、女にはまだ正気であり信念もあった。

普通なら人間をやめている。

それは数千ものモルモット達を弄んだ彼だからこそ断定ができる。

生きるためなら愛すら捨てる。
それが人間のはずだ。


「ど、どうしますか?拳銃を出すのは…」


研究員がオドオドしながらスペースレンジャーに尋ねる。
非人道的な実験をするくせに決断力が鈍い研究員にイライラを募らせるスペースレンジャーだったが。


「ダメだ、そいつはルール違反になるから絶対に渡すな!こうなりゃあの女が男を殺すまで閉じ込め…」


ズガン。

そこまで言って実験場から聞こえる音に気付いて止まる。
スペースレンジャーが視線を向ける。

そこには、他の超能力者が出した鋭利な刃が付いたツノのようなもので自らの腹部を貫く。


被験体、小笠原おがさわら千愛ちおの姿があった。

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