デイズ

鬼怒川 ますず

そうだね

僕は君と別れたはずだった。
そのはずだった。
でも、どうして君は僕が入学した高校の校門前で、その高校の制服を着て手を振っているんだろう?

僕は驚いて、持っていたカバンを落とした。
その姿に周りの新入生たちの視線を浴びるが、そんなの気にしていられなかった。

僕のその姿に、君は不思議そうな顔で近づいてくると、カバンを拾って僕に渡す。

「入学早々にどうしたの?」

「な、なんでここにいるの…?」

そう言うと、君は悪戯っぽく笑うと僕の耳元まで近づき、そっと囁いてくれた。

「あなたの秘密を私は知ってるんだよ?あなたが縛ったのなら、私はそれに縛られないとダメかなって」

そう言って僕の顔を覗き込むように見つめる。
顔が熱い。
僕は君の気持ちに、その執着心に改めて気付かされた。
僕は周りの目なんか気にせず、初めて君に抱きついた。
ギュって絞めるように、君の背中に腕を回して。
君は突然のことに驚いていたけど、それでも僕に優しく腕を回してくれた。


「僕はかっこ悪いんだよ?」

「真面目に勉強する姿がカッコいいよ」

「僕は人と関わろうとしないよ?」

「ならそれ以上にあなたの分も私が頑張るよ」

「僕は…君とは違って明るくない」

「私はあなた以上に暗くなれない、私にはそれが羨ましいよ」

僕は自分の欠点を言うと、君はすかさず否定して僕に語りかける。
密着していた体を離して君の顔を見る。

君はほおを赤く染め、僕の顔を見ていた。

「ずっと一緒って言ったでしょ? 」

「そうだね」

僕はもう君の気持ちを受け止めることに決めた。
周りの人間から奇異の目で見られる僕らは、その日が最高の日のように感じた。

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