異世界で勇者に選ばれたと思ったらお姫様に選ばれた件
第2話影武者
「何故そこまで拒む、異世界の者よ」
「何故って、逆にどうして俺が了承すると思ったんですか?」
「それは、まあ成り行きでなってくれるかと」
「そんな無茶苦茶な!」
王に対して滅茶苦茶失礼かもしれないけど、異世界に来ていきなり女装をしろと言われて、はいそうですかと言えるわけがない。
「そもそもどうして、俺がいきなり姫にならないといけないんですか? その辺りの理由をまず聞きたいんですけど」
「そうか、まずは理由を聞きたいんじゃな。実はのう」
流石に何も説明をしないのは悪いと思ったのか、国王は事のあらましを話し始めた。
まず今俺がいるこの場所は、地球とは全く違う世界、メイジュ。そしてこの城は、そのメイジュの辺境にある小さな国、コスモス。偶然なのかは分からないが、何故か国名だけ日本にある花の名前だった。
「それでどうして、異世界のこの辺境の国のお姫様に、男の俺が?」
「実は我が娘のランという名の次期姫の広報が、この国には一応おるんじゃが、小さい頃から身体が弱くてのう。今も部屋で寝ておる」
「身体が弱い? 病気か何かなんですか?」
「それが妻を亡くしたショックで、めっきり部屋から出なくなってしまってのう、医者には原因不明の病気と診断されてしまった」
「えっと、それはつまり」
別に病気とかではないのでは? 
多分部屋で寝たきりな原因は母親が原因だと思われるけど。
「もしかしてその引きこもりの娘さんの代わりに姫として、簡単に言えば影武者になって欲しいってことですか?」
「一言で言えばそうなる」
「それ以外の方法は考えなかったんですか?」
「そもそもランは姫になる事を受け入れられていなくてのう。まだ歳も若いから、もっと自由になりたい気持ちもわかる。しかし先代が亡くなってしまった以上、ランになってもらう道以外ないと何度も説明した。それでも、あの子は受け入れてくれなかったのじゃ」
「若い年……ちなみに娘さんは今年おいくつですか?」
「今年で十になる」
「まだ全然子供じゃないですか!」
そりゃあ嫌にもなるよ。日本で言えば小学生の年で、姫になれと言われているんだから拒否したいに決まっている。でも次期姫がその年ならば、尚更俺が影武者になる理由が見つからない。
「えっと、娘さんがまだ小さいんですよね? だったら俺がいきなり姫になるのはマズくないですか? 身長とか成長速度的に」
「その辺りは問題ない。ランはお主と身長はさほど変わらぬ」
「十歳ですよね?!」
俺の身長百七十近くあるのに、それと同じくらいって、それはそれで変かと。まあ多分それは地球上の感覚の中での話だから、異世界ではまた感覚が違うって事だろう。
(まあ何にせよ)
ここまで話を聞いて、一つ思う。
「影武者が必要なのは、何となく分かりましたけど、男の俺がなる必要はやはりないのでは?」
「この国は峭刻であるが故に、他国と戦争になった時に負けてしまうことが多い。儂の妻も戦場の姫と呼ばれるくらいの戦果を出しておったのじゃが、病に倒れ亡くなってしまって戦力が大幅に減ってしまった。おまけに次期姫の候補てある娘も年が若い。まだ戦いに出すことはできぬ」
突然国王はそんな事を語り始める。今サラッと奥さんも戦場に出てたって言っていたけど、もしかして俺がこの世界に秘めの影武者になる為に呼ばれた本当の理由って……。
「男の俺が姫の影武者になってまで、戦いの場に出てほしい、そういう事ですか?」
「お主にはもう一度戦場の姫の名を復活させてほしいのじゃ」
やっぱりか。恐らくではあるけれど、一国の姫の力を示す事によって国の士気を上げると同時に、他国に動揺を与え士気を下げて、戦況を良い方に傾かせよう、そういう事だろうか。
あの戦場の姫が復活したと。
悪くはないとは思う。ただ問題としてあげるなら、
「俺運動とかめっぽう苦手で、むしろそのランさんと同じくらいの引きこもりのスペックなんですけど」
「今から鍛えれば良い」
「それで間に合わせられるものなんですかね」
「儂は何とかなると思っておる。それにお主は選ばれたもの、つまり特別な力を授けられたものじゃ。きっと問題ない」
「特別な力って、そんな」
チート能力、俺には与えられていないかと思うんですけど。
「まさかお主、何も感じておらぬのか?」
「はい」
「何という事。これではお主を本当に一から鍛え上げなければならないではないか」
「元いた世界に帰すという選択肢はないんでしょうか」
「それはできぬ。もうお主の世界との扉は閉じてしまったからのう」
「じゃあそれをもう一度開けて……」
「それが出来ぬからこうして頼んでおるんじゃ」
「つまり俺には選択肢がないって、言いたいんですか?」
「そういう事じゃ」
何とも理不尽な選択肢に、俺は戸惑いを隠せない。家に帰れないという事は、こんな聞いた事もない異世界で彷徨うか、もしくはこのコスモスという国で身の安全を確保するか。ただしここに居続けるためには、ひ弱な姫に代わって、女装して姫になるしかない。
二十歳になって俺は、究極の選択を迫られる事になった。
「その答えって今すぐに出さないと駄目なんですか?」
「できれば明日までには決めていただきたい」
「そのランさんにも会って、話も聞きたいし少しだけ俺に時間をください」
「やはりすぐには決められぬか」
「当たり前ですよ、こんな話」
かくして俺は、一日だけ王様に猶予をもらった。とは言っても、もう逃げ場なんてない。ある意味この時間は、それを決意するための時間だ。
(こんな話、嫌に決まっている)
けど、俺には時間がない。
これから数時間後に俺は、その次期姫候補であるランに会いに行く事になるのだが、
「あなたが……お父様が言っていた私の影武者になってくれる方?」
「はい」
彼女との出会いがある意味俺の人生の転機になるとは、この時は思いもしなかった。
「何故って、逆にどうして俺が了承すると思ったんですか?」
「それは、まあ成り行きでなってくれるかと」
「そんな無茶苦茶な!」
王に対して滅茶苦茶失礼かもしれないけど、異世界に来ていきなり女装をしろと言われて、はいそうですかと言えるわけがない。
「そもそもどうして、俺がいきなり姫にならないといけないんですか? その辺りの理由をまず聞きたいんですけど」
「そうか、まずは理由を聞きたいんじゃな。実はのう」
流石に何も説明をしないのは悪いと思ったのか、国王は事のあらましを話し始めた。
まず今俺がいるこの場所は、地球とは全く違う世界、メイジュ。そしてこの城は、そのメイジュの辺境にある小さな国、コスモス。偶然なのかは分からないが、何故か国名だけ日本にある花の名前だった。
「それでどうして、異世界のこの辺境の国のお姫様に、男の俺が?」
「実は我が娘のランという名の次期姫の広報が、この国には一応おるんじゃが、小さい頃から身体が弱くてのう。今も部屋で寝ておる」
「身体が弱い? 病気か何かなんですか?」
「それが妻を亡くしたショックで、めっきり部屋から出なくなってしまってのう、医者には原因不明の病気と診断されてしまった」
「えっと、それはつまり」
別に病気とかではないのでは? 
多分部屋で寝たきりな原因は母親が原因だと思われるけど。
「もしかしてその引きこもりの娘さんの代わりに姫として、簡単に言えば影武者になって欲しいってことですか?」
「一言で言えばそうなる」
「それ以外の方法は考えなかったんですか?」
「そもそもランは姫になる事を受け入れられていなくてのう。まだ歳も若いから、もっと自由になりたい気持ちもわかる。しかし先代が亡くなってしまった以上、ランになってもらう道以外ないと何度も説明した。それでも、あの子は受け入れてくれなかったのじゃ」
「若い年……ちなみに娘さんは今年おいくつですか?」
「今年で十になる」
「まだ全然子供じゃないですか!」
そりゃあ嫌にもなるよ。日本で言えば小学生の年で、姫になれと言われているんだから拒否したいに決まっている。でも次期姫がその年ならば、尚更俺が影武者になる理由が見つからない。
「えっと、娘さんがまだ小さいんですよね? だったら俺がいきなり姫になるのはマズくないですか? 身長とか成長速度的に」
「その辺りは問題ない。ランはお主と身長はさほど変わらぬ」
「十歳ですよね?!」
俺の身長百七十近くあるのに、それと同じくらいって、それはそれで変かと。まあ多分それは地球上の感覚の中での話だから、異世界ではまた感覚が違うって事だろう。
(まあ何にせよ)
ここまで話を聞いて、一つ思う。
「影武者が必要なのは、何となく分かりましたけど、男の俺がなる必要はやはりないのでは?」
「この国は峭刻であるが故に、他国と戦争になった時に負けてしまうことが多い。儂の妻も戦場の姫と呼ばれるくらいの戦果を出しておったのじゃが、病に倒れ亡くなってしまって戦力が大幅に減ってしまった。おまけに次期姫の候補てある娘も年が若い。まだ戦いに出すことはできぬ」
突然国王はそんな事を語り始める。今サラッと奥さんも戦場に出てたって言っていたけど、もしかして俺がこの世界に秘めの影武者になる為に呼ばれた本当の理由って……。
「男の俺が姫の影武者になってまで、戦いの場に出てほしい、そういう事ですか?」
「お主にはもう一度戦場の姫の名を復活させてほしいのじゃ」
やっぱりか。恐らくではあるけれど、一国の姫の力を示す事によって国の士気を上げると同時に、他国に動揺を与え士気を下げて、戦況を良い方に傾かせよう、そういう事だろうか。
あの戦場の姫が復活したと。
悪くはないとは思う。ただ問題としてあげるなら、
「俺運動とかめっぽう苦手で、むしろそのランさんと同じくらいの引きこもりのスペックなんですけど」
「今から鍛えれば良い」
「それで間に合わせられるものなんですかね」
「儂は何とかなると思っておる。それにお主は選ばれたもの、つまり特別な力を授けられたものじゃ。きっと問題ない」
「特別な力って、そんな」
チート能力、俺には与えられていないかと思うんですけど。
「まさかお主、何も感じておらぬのか?」
「はい」
「何という事。これではお主を本当に一から鍛え上げなければならないではないか」
「元いた世界に帰すという選択肢はないんでしょうか」
「それはできぬ。もうお主の世界との扉は閉じてしまったからのう」
「じゃあそれをもう一度開けて……」
「それが出来ぬからこうして頼んでおるんじゃ」
「つまり俺には選択肢がないって、言いたいんですか?」
「そういう事じゃ」
何とも理不尽な選択肢に、俺は戸惑いを隠せない。家に帰れないという事は、こんな聞いた事もない異世界で彷徨うか、もしくはこのコスモスという国で身の安全を確保するか。ただしここに居続けるためには、ひ弱な姫に代わって、女装して姫になるしかない。
二十歳になって俺は、究極の選択を迫られる事になった。
「その答えって今すぐに出さないと駄目なんですか?」
「できれば明日までには決めていただきたい」
「そのランさんにも会って、話も聞きたいし少しだけ俺に時間をください」
「やはりすぐには決められぬか」
「当たり前ですよ、こんな話」
かくして俺は、一日だけ王様に猶予をもらった。とは言っても、もう逃げ場なんてない。ある意味この時間は、それを決意するための時間だ。
(こんな話、嫌に決まっている)
けど、俺には時間がない。
これから数時間後に俺は、その次期姫候補であるランに会いに行く事になるのだが、
「あなたが……お父様が言っていた私の影武者になってくれる方?」
「はい」
彼女との出会いがある意味俺の人生の転機になるとは、この時は思いもしなかった。
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