勇者キラーと補食を持つ俺はスライムでも強くなる

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4.食欲に正直

 川岸までたどり着くと、この川がかなり大きな川だとわかった。目測で10メートルは幅がある。俺が小さくなってるから合ってるかはわからないが。

 そして水が透き通っている。川底が鮮明に見える程だ。水の屈折があるからよくわからないが、川底まで少なくとも5メートルはありそうだ。

 そんな川がはるか遠くまで続き、左右どちらを見ても川がどこまで続くのか見えなくなっている。左から右へ水が流れているから、ここから左に向かえば山があるのだろう。しかし俺が目指すのは人里だ。だから右へ進む。

 しかしここで問題が一つ。腹が減った。さっき牛を丸々一頭食べたのに腹が減った。このスライムの体はこんなに腹が減りやすいのか。他のスライムは何を食っているのか気になるな。

 まあそれは一旦置いといて、周りに牛どころかスライム以外の生き物が見当たらないこの草原で何を食べるか。ここで一つ、俺の目の前には川がある。そう、魚だ。水が透き通っているからよく見えるが、かなりの数の魚が泳いでいる。中には額から角を生やした1メートルはありそうな魚もいる。今すぐ川に潜ってあの魚を食べたい。

 ただこの体で水の中に入れるのかが問題だ。先程から触手を伸ばして水に入れたり出したりを繰り返しているが、触手が溶けることは無かった。しかし、水に触れた触手から違和感を感じるのだ。なんかこう、何かを塞がれてる感じ。このまま水に入ったら危険なんじゃないかと思ってしまう感覚だ。

 ……とりあえず浅瀬で水に全身浸かってみるか。それでダメなら別の方法を探すしかないな。

 水深が30センチメートルしかないような場所で体の半分を浸からせてみる。違和感が増えたけど問題は無いな。

 続いて、体を薄く伸ばし全身で浸かってみる。うーむ、だんだんと違和感が強くなってくる。完全に何かを塞がれた感覚があるけどまだ大丈夫だ。スライム状の体がピクピクと痙攣して動かしにくくなってるけどだいじょ……、全然大丈夫じゃない!

 急いで動きにくくなった体を陸へ引きずり出す。少し時間がたつと、痙攣しなくなり体に弾力と柔軟性が戻った。

 いやー、あぶない。たぶんあのままだと水の中で体が動かなくなってたぞ。死ぬことはないけど考えるのを止めなければならなくなってしまうところだった。

 さて、どうやって魚を食べるか。ここまで来ると意地でも魚を食べたい。さっきの結果から全身浸からなければ大丈夫っぽいからな、体の半分に空気を入れて水上に浮かばせてみるか?よし、試してみよう。

 まずは先に体の中に空気を入れる。水に入ってからいざ空気を入れようとして無理だったら嫌だからな。しかし、俺の考えなど杞憂に過ぎなかったようで、まるで風船のように体の半分を膨らませることができた。

 そして、このまま浅瀬に突入。すると、風船のように膨らんだ部分が水に浮き、体の半分だけが水に沈んだ。違和感もさっき体の半分を水に浸けた時より小さい。どうやらこの違和感には空気が関係してるみたいだな。

 よし、移動は川底を這って進めばいいし、これで魚が食べられる!

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