終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第五章75 砂塵の試練ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅢ:終わりと始まり
「あははー、これはさすがに予想外だよね」
ハイラント王国の騎士を選別する入隊試験。
それに参加するリエルは色んな人の助けを受けながら、最終試験へと駒を進めていた。順調に成長を続けるリエルだったが、一対一の模擬戦を実施する試験の相手は姉であり女神でもあるシュナだった。
ずっと探し求めていた姉との邂逅が模擬戦であり、一度は諦めかけたリエルだったがそれでも自分が果たすべき使命に決意を新たにして、強大な敵となった姉・シュナへと挑んでいた。
「美しき氷の華、凍てつく世界に咲き誇れ――氷雪結界」
姉・シュナと戦うリエルは自らが持つ最大限の力を行使して勝利を目指す。
魔法の出し惜しみはしないとリエルが唱えるのは、自分を中心とした大きなドーム状の結界を張り巡らせるものだった。結界の中は万物を氷結させる凍てつく世界と化す。
しかしシュナはそんな魔法の性質を即座に理解し、氷雪結界による氷結を防ぐために守護魔法を展開した。
「氷雪吹き荒れよ、白銀の世界で、我は舞う――氷幻幽舞ッ」
結界魔法の対策はバッチリなシュナに対して、リエルはここに来てまた新たな魔法を唱えていく。
シュナの攻撃、そしてリエルの結界魔法によって周囲が氷雪と白靄が支配する氷の世界と化す中で、リエルはそんな過酷な状況を存分に使う戦い方を披露する。
靄で視界が悪い中、降りしきる氷雪に自らの姿を映し出すことで『幻』を生成する氷幻幽舞。それはこの状況下に置いてシュナの想像を遥かに超える成果を見せることとなった。
気配すら感じさせないリエルの幻を相手に苦戦を強いられるシュナ。
現れては消えるリエルの姿に戸惑い、自らの攻撃によって発生した白靄も相まって、完全にオリジナルのリエルを見失ってしまう。
こうなってしまっては、リエルが魅せる新魔法を打ち崩すことは不可能だった。
「天地を凍てつかす究極の氷槍よ、あまねく悪を穿て――氷槍龍牙ッ!」
シュナを劣勢に追いやるリエルは、最後にありったけの力を持って巨大な氷槍による一撃を放とうとしていた。
シュナを取り囲むようにして無数に幻を生成し、その全てが片手に氷槍を持っていた。
「いいよ。おいで、リエル」
「お姉ちゃん……はあああぁぁぁッ!」
誰が見ても絶望的な状況の中で、シュナは最後の瞬間までその顔に笑みを浮かべていた。
この状況でも余裕を見せている笑みなのか、それとも諦めからの笑みなのか。その判断をすることはできないが、姉の言葉に導かれるようにしてリエルは愛する姉へ向けて氷槍を投擲していくのであった。
「――――」
凄まじい轟音と衝撃が周囲を駆け巡る。
シュナが作り上げた氷の世界も、リエルが展開した氷雪の結界も、その全てを瓦解させていく。
粉々に砕け散った氷が虚空を舞い、姿を見せる太陽の陽を受けて綺羅びやかに輝く。
そんな幻想的な光景が広がる中で、唯一立ち尽くす人物が『一人』存在していた。
「…………」
その人物は瑠璃色に輝く髪を腰まで伸ばした女性であり、全身に氷の粒を付着させながらもしっかりと大地に足をついて立つことができていた。
「ふぅ……問題は持久力ってところかな?」
リエルの全力を持って繰り出した攻撃を受けても尚、彼女の姉であり世界を守護するために戦う女神でもあるシュナは無傷で生還を果たしていた。シュナの足元には一人の少女が倒れ伏しており、少女を見て女神・シュナはその顔に嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「よっこらせっと、どうだった? リエルちゃんの戦いぶりは?」
「この顔を見れば分かるんじゃない?」
「そうだねー、その顔は予想以上に成長してて、すっごく嬉しいお姉ちゃんって顔だね」
「……まぁ、間違ってはない」
「それで、これからはどうする訳?」
「…………」
立ち尽くすシュナの隣にやってきたのは、背中まで伸びる長い茶髪をサイドテールの形に結び、太腿、肩と大胆に露出した軽装が印象的な少女・カリナだった。
「まずはカガリ、この子の治療をお願いできる?」
「おっけー。全く、自分の力を理解しないで大技を連発するんだから……」
シュナの言葉に『カリナ』という名ではなく、『カガリ』という名で呼ばれた少女は軽い調子で言葉を返す。全く気にした様子を見せないことから、『カガリ』という名が少女の正しい呼び名であることは間違いない。
「その後は目を覚ましたリエルの意志を確認して、みんなと合流する」
「おっ、ということは……?」
「私のせいで騎士隊の試験は不合格になっちゃったけど、女神と共に行動するという点においては仮合格ってところかな」
「ありゃ、仮合格なんだ?」
「確かにリエルは目覚ましい成長を遂げた。こんな小さいのに、もう最前線で戦うだけの力は持ってる。だけど、これからは世界を守るための戦い。この程度で気を失って、相手のトドメをさせないんじゃ、まだお姉ちゃんとしては心配かな」
「厳しいねぇー」
「ほら、周りもざわつき始めたし、そろそろ行くよ」
「はいはーい」
凄まじい戦いを見せた二人の少女を目の当たりにして、模擬戦を見ていた人間がにわかにざわつき始める。このままでは大騒ぎに成りかねないと判断したシュナは、隣に立つカガリに目で合図をすると、雲一つない快晴の空へ飛び立っていく。
「……最後の戦いは近い」
ハイラントの地を離れ、シュナとカガリが向かうのは広大な海を挟んだ先にある大陸。
そこは魔竜の猛威に苦しみ続ける大陸であり、世界最悪の災厄である魔竜を討つため、女神たちは集結を果たそうとしていた。
「……リエル。きっと貴方なら、この先に待ち受けるどんな困難だって越えていくことができる」
空を滑空しながらシュナは未だ目を覚まさない愛する妹へ言葉を投げかける。
「……お姉ちゃんは嬉しいよ」
規則正しい寝息を立てる妹の髪を撫で、瑠璃色の髪を風に靡かせるシュナは優しい笑みを浮かべるのであった。
◆◆◆◆◆
そして時は現代へと回帰を果たす。
砂塵の試練はまだ終わってはいない。
ハイラント王国の騎士を選別する入隊試験。
それに参加するリエルは色んな人の助けを受けながら、最終試験へと駒を進めていた。順調に成長を続けるリエルだったが、一対一の模擬戦を実施する試験の相手は姉であり女神でもあるシュナだった。
ずっと探し求めていた姉との邂逅が模擬戦であり、一度は諦めかけたリエルだったがそれでも自分が果たすべき使命に決意を新たにして、強大な敵となった姉・シュナへと挑んでいた。
「美しき氷の華、凍てつく世界に咲き誇れ――氷雪結界」
姉・シュナと戦うリエルは自らが持つ最大限の力を行使して勝利を目指す。
魔法の出し惜しみはしないとリエルが唱えるのは、自分を中心とした大きなドーム状の結界を張り巡らせるものだった。結界の中は万物を氷結させる凍てつく世界と化す。
しかしシュナはそんな魔法の性質を即座に理解し、氷雪結界による氷結を防ぐために守護魔法を展開した。
「氷雪吹き荒れよ、白銀の世界で、我は舞う――氷幻幽舞ッ」
結界魔法の対策はバッチリなシュナに対して、リエルはここに来てまた新たな魔法を唱えていく。
シュナの攻撃、そしてリエルの結界魔法によって周囲が氷雪と白靄が支配する氷の世界と化す中で、リエルはそんな過酷な状況を存分に使う戦い方を披露する。
靄で視界が悪い中、降りしきる氷雪に自らの姿を映し出すことで『幻』を生成する氷幻幽舞。それはこの状況下に置いてシュナの想像を遥かに超える成果を見せることとなった。
気配すら感じさせないリエルの幻を相手に苦戦を強いられるシュナ。
現れては消えるリエルの姿に戸惑い、自らの攻撃によって発生した白靄も相まって、完全にオリジナルのリエルを見失ってしまう。
こうなってしまっては、リエルが魅せる新魔法を打ち崩すことは不可能だった。
「天地を凍てつかす究極の氷槍よ、あまねく悪を穿て――氷槍龍牙ッ!」
シュナを劣勢に追いやるリエルは、最後にありったけの力を持って巨大な氷槍による一撃を放とうとしていた。
シュナを取り囲むようにして無数に幻を生成し、その全てが片手に氷槍を持っていた。
「いいよ。おいで、リエル」
「お姉ちゃん……はあああぁぁぁッ!」
誰が見ても絶望的な状況の中で、シュナは最後の瞬間までその顔に笑みを浮かべていた。
この状況でも余裕を見せている笑みなのか、それとも諦めからの笑みなのか。その判断をすることはできないが、姉の言葉に導かれるようにしてリエルは愛する姉へ向けて氷槍を投擲していくのであった。
「――――」
凄まじい轟音と衝撃が周囲を駆け巡る。
シュナが作り上げた氷の世界も、リエルが展開した氷雪の結界も、その全てを瓦解させていく。
粉々に砕け散った氷が虚空を舞い、姿を見せる太陽の陽を受けて綺羅びやかに輝く。
そんな幻想的な光景が広がる中で、唯一立ち尽くす人物が『一人』存在していた。
「…………」
その人物は瑠璃色に輝く髪を腰まで伸ばした女性であり、全身に氷の粒を付着させながらもしっかりと大地に足をついて立つことができていた。
「ふぅ……問題は持久力ってところかな?」
リエルの全力を持って繰り出した攻撃を受けても尚、彼女の姉であり世界を守護するために戦う女神でもあるシュナは無傷で生還を果たしていた。シュナの足元には一人の少女が倒れ伏しており、少女を見て女神・シュナはその顔に嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「よっこらせっと、どうだった? リエルちゃんの戦いぶりは?」
「この顔を見れば分かるんじゃない?」
「そうだねー、その顔は予想以上に成長してて、すっごく嬉しいお姉ちゃんって顔だね」
「……まぁ、間違ってはない」
「それで、これからはどうする訳?」
「…………」
立ち尽くすシュナの隣にやってきたのは、背中まで伸びる長い茶髪をサイドテールの形に結び、太腿、肩と大胆に露出した軽装が印象的な少女・カリナだった。
「まずはカガリ、この子の治療をお願いできる?」
「おっけー。全く、自分の力を理解しないで大技を連発するんだから……」
シュナの言葉に『カリナ』という名ではなく、『カガリ』という名で呼ばれた少女は軽い調子で言葉を返す。全く気にした様子を見せないことから、『カガリ』という名が少女の正しい呼び名であることは間違いない。
「その後は目を覚ましたリエルの意志を確認して、みんなと合流する」
「おっ、ということは……?」
「私のせいで騎士隊の試験は不合格になっちゃったけど、女神と共に行動するという点においては仮合格ってところかな」
「ありゃ、仮合格なんだ?」
「確かにリエルは目覚ましい成長を遂げた。こんな小さいのに、もう最前線で戦うだけの力は持ってる。だけど、これからは世界を守るための戦い。この程度で気を失って、相手のトドメをさせないんじゃ、まだお姉ちゃんとしては心配かな」
「厳しいねぇー」
「ほら、周りもざわつき始めたし、そろそろ行くよ」
「はいはーい」
凄まじい戦いを見せた二人の少女を目の当たりにして、模擬戦を見ていた人間がにわかにざわつき始める。このままでは大騒ぎに成りかねないと判断したシュナは、隣に立つカガリに目で合図をすると、雲一つない快晴の空へ飛び立っていく。
「……最後の戦いは近い」
ハイラントの地を離れ、シュナとカガリが向かうのは広大な海を挟んだ先にある大陸。
そこは魔竜の猛威に苦しみ続ける大陸であり、世界最悪の災厄である魔竜を討つため、女神たちは集結を果たそうとしていた。
「……リエル。きっと貴方なら、この先に待ち受けるどんな困難だって越えていくことができる」
空を滑空しながらシュナは未だ目を覚まさない愛する妹へ言葉を投げかける。
「……お姉ちゃんは嬉しいよ」
規則正しい寝息を立てる妹の髪を撫で、瑠璃色の髪を風に靡かせるシュナは優しい笑みを浮かべるのであった。
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そして時は現代へと回帰を果たす。
砂塵の試練はまだ終わってはいない。
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