終末の異世界と大罪のグリモワール ~英霊は異世界で斯く戦えり~
第五章33 砂塵の試練ⅩⅩⅡ:顕現せし真なる魔竜
「さぁ、全てを終わらせよう」
ハイラント王国を舞台にした壮絶なる戦いは、様々な展開を見せつつも最終局面を迎えようとしていた。
世界を守護する剣聖姫へと進化を果たし、神竜が持つ聖なる力をもってして魔竜の力を行使するルイス・ハイラントを圧倒することができていた。リーシアに苦戦を強いられたルイスは、自らが描いていた計画を壊す形で四大魔竜と融合を果たした。
業炎を支配する魔竜・エルダ。
大自然を司りし魔竜・ギヌス。
絶氷を支配する魔竜・アーク。
黒雷を支配する魔竜・ティア。
かつて破壊の限りを尽くした結果に世界を支配していた四大魔竜と融合したルイスは、自らの身体を禍々しい姿に変えると、先ほどとは比べものにならない魔力を放出していく。
「竜さん、あれって……」
『魔竜を取り込んだということだ……まさか、人間にそんなことが出来るとは……信じられないが』
「魔竜を、取り込む……?」
リーシアたちの眼前に存在するルイスは人間の姿を保ってはいるのだが、その身体を包むのは禍々しき竜の鱗であった。頭から手足の先までを分厚い黒竜の鱗が覆っており、背中には黒翼と、腰部分には鋭利に尖る竜の尻尾が生えている。
「そうだ。俺は今、魔竜と一つになっている。本来、この姿になるのは世界を支配する最終段階だったはずなんだけどね……まぁ、力を試したかったしちょうどいいかな」
「…………」
「君のような小娘に力を使ってやることを光栄に思って欲しいね」
黒翼を使い、空を浮遊するルイスはその表情に笑みを浮かべてリーシアを見下ろしている。
「――消え失せろ」
ルイスは冷酷に言い放つとその身体に魔力を集中させていく。
右手を天高く突き上げると、手の平に巨大な光球を生成していく。
黒い太陽にも似た光球はルイスの手の平で成長を遂げていく。
「なに、あれ……」
『直撃はまずい……退け、主ッ!』
「…………」
「ふーん、逃げないんだ? それならそれでいいけど……消えてしまえ――黒炎破玉」
突き出す手の平で城下町の中央広場を覆い尽くす程の炎球を、ルイスはその顔に嗜虐的な笑みを浮かべてリーシアの元へと放っていく。手の動きに合わせて動き出す黒く輝いた炎球は凄まじい轟音と共に地面を目指す。
『主ッ!』
「ここで逃げたら町が酷いことになる……それはダメッ!」
『――――』
リーシアは強情であった。
どれだけ無謀だと神竜が助言しても、彼女は自分が守りたいものを守るためにその身を簡単に犠牲にしようとする。
「ふん、全てを守ろうなんて無理なんだよ」
「無理なんかじゃないッ!」
リーシア目掛けて一直線に落ちてくる炎球。
それは少女の身体を容易に包み込む大きさを誇っており、魔竜の力が盛り込まれていることもあり破壊力は想像を絶するものだ。
常人であるならば、恐怖して逃げ出す状況の中で、リーシアだけが自分の行動を信じて立ち止まっていた。
「お願い、力を貸して――聖なる剣輝ッ!」
地面を強く蹴り炎球へと飛翔するリーシア。
彼女が放つ言葉に呼応するようにして、両手に握られた聖剣・ハールヴァイトが眩い輝きを放ち始める。リーシアが持ち得る攻撃の中で最も強い破壊力を持つ剣技であるのだが、しかしルイスが放つ炎球を破壊するのは難しい。
「ふん、そんな攻撃で俺の攻撃が防げるはずがないッ!」
「そんなの、やってみないと分からないッ!」
炎球へと真っ直ぐに飛ぶリーシア。聖剣が炎球へと触れた瞬間、ハイラント城下町の空中で強烈な轟音が周囲に轟く。この日一番の凄まじい衝撃が街全体へと広がり、リーシアの小柄な身体は暴発した炎球の中へと消えていく。
「ふは、ふはははははッ! みたかッ、これが魔竜の力……俺の力だッ!」
空中で破裂した炎球は城下町の広場に夥しい数の火の粉を降らしていく。
リーシアの行動によって大地に着弾することはなかったが、それでも少なからずハイラント王国に影響をもたらしていた。それほどまでにルイスが放つ攻撃が強大であったことの証拠であり、もしこれが大地に着弾していた場合は、更なる壊滅的な被害を生んでいたのは間違いない。
「さて、少し予定は狂ったけど……そろそろ王城へと向かうとするか」
ルイスが放った漆黒の炎球はまだ消えない。
リーシアが生きているはずない。彼女の遺体を確認するまでもないと判断したルイスは、自分の背中に生える黒翼を羽ばたかせ、遠くに見えるハイラントの王城へ飛ぼうとする。
「――いかせないッ!」
「……ん?」
粉塵と黒炎の中、鋭く木霊する少女の声音がルイスの鼓膜を震わせる。
「私はまだ、生きているッ!」
「……しぶといなぁ、全く」
「ありがと、竜さん」
『……主が剣聖姫となったから、より強く私の力を授けることが出来た。しかし、あまり何度も助けられる保障はないぞ?』
黒炎の中から姿を見せるリーシアは、ルイスが放つ攻撃を正面から受けてもその身体に目立った外傷を生んではいなかった。元気いっぱいといった様子で黒炎から離脱すると、再びルイスの眼前に立ち塞がる。
「なんだ、その姿は?」
「竜さんが力を貸してくれた。これで私は戦えるッ!」
神竜の力を最大限に借り受けたリーシア。
少女の身体は聖なる力に包まれており、その背中に純白の翼を生やしていた。
白銀と金色が混じった髪に、白く輝く甲冑ドレス。そして背中に生える純白の翼。その姿はまさしく女神と呼ぶのに相応しいものであった。
「どうやら、徹底的に痛めつけないとダメみたいだね、君は……」
「次はこっちの番……今なら誰にも負ける気がしないッ!」
禍々しき魔竜と聖なる剣聖姫の戦い。
人智を超えた戦いの果てに何が待つのか。
その答えはまだ、誰も知らない。
ハイラント王国を舞台にした壮絶なる戦いは、様々な展開を見せつつも最終局面を迎えようとしていた。
世界を守護する剣聖姫へと進化を果たし、神竜が持つ聖なる力をもってして魔竜の力を行使するルイス・ハイラントを圧倒することができていた。リーシアに苦戦を強いられたルイスは、自らが描いていた計画を壊す形で四大魔竜と融合を果たした。
業炎を支配する魔竜・エルダ。
大自然を司りし魔竜・ギヌス。
絶氷を支配する魔竜・アーク。
黒雷を支配する魔竜・ティア。
かつて破壊の限りを尽くした結果に世界を支配していた四大魔竜と融合したルイスは、自らの身体を禍々しい姿に変えると、先ほどとは比べものにならない魔力を放出していく。
「竜さん、あれって……」
『魔竜を取り込んだということだ……まさか、人間にそんなことが出来るとは……信じられないが』
「魔竜を、取り込む……?」
リーシアたちの眼前に存在するルイスは人間の姿を保ってはいるのだが、その身体を包むのは禍々しき竜の鱗であった。頭から手足の先までを分厚い黒竜の鱗が覆っており、背中には黒翼と、腰部分には鋭利に尖る竜の尻尾が生えている。
「そうだ。俺は今、魔竜と一つになっている。本来、この姿になるのは世界を支配する最終段階だったはずなんだけどね……まぁ、力を試したかったしちょうどいいかな」
「…………」
「君のような小娘に力を使ってやることを光栄に思って欲しいね」
黒翼を使い、空を浮遊するルイスはその表情に笑みを浮かべてリーシアを見下ろしている。
「――消え失せろ」
ルイスは冷酷に言い放つとその身体に魔力を集中させていく。
右手を天高く突き上げると、手の平に巨大な光球を生成していく。
黒い太陽にも似た光球はルイスの手の平で成長を遂げていく。
「なに、あれ……」
『直撃はまずい……退け、主ッ!』
「…………」
「ふーん、逃げないんだ? それならそれでいいけど……消えてしまえ――黒炎破玉」
突き出す手の平で城下町の中央広場を覆い尽くす程の炎球を、ルイスはその顔に嗜虐的な笑みを浮かべてリーシアの元へと放っていく。手の動きに合わせて動き出す黒く輝いた炎球は凄まじい轟音と共に地面を目指す。
『主ッ!』
「ここで逃げたら町が酷いことになる……それはダメッ!」
『――――』
リーシアは強情であった。
どれだけ無謀だと神竜が助言しても、彼女は自分が守りたいものを守るためにその身を簡単に犠牲にしようとする。
「ふん、全てを守ろうなんて無理なんだよ」
「無理なんかじゃないッ!」
リーシア目掛けて一直線に落ちてくる炎球。
それは少女の身体を容易に包み込む大きさを誇っており、魔竜の力が盛り込まれていることもあり破壊力は想像を絶するものだ。
常人であるならば、恐怖して逃げ出す状況の中で、リーシアだけが自分の行動を信じて立ち止まっていた。
「お願い、力を貸して――聖なる剣輝ッ!」
地面を強く蹴り炎球へと飛翔するリーシア。
彼女が放つ言葉に呼応するようにして、両手に握られた聖剣・ハールヴァイトが眩い輝きを放ち始める。リーシアが持ち得る攻撃の中で最も強い破壊力を持つ剣技であるのだが、しかしルイスが放つ炎球を破壊するのは難しい。
「ふん、そんな攻撃で俺の攻撃が防げるはずがないッ!」
「そんなの、やってみないと分からないッ!」
炎球へと真っ直ぐに飛ぶリーシア。聖剣が炎球へと触れた瞬間、ハイラント城下町の空中で強烈な轟音が周囲に轟く。この日一番の凄まじい衝撃が街全体へと広がり、リーシアの小柄な身体は暴発した炎球の中へと消えていく。
「ふは、ふはははははッ! みたかッ、これが魔竜の力……俺の力だッ!」
空中で破裂した炎球は城下町の広場に夥しい数の火の粉を降らしていく。
リーシアの行動によって大地に着弾することはなかったが、それでも少なからずハイラント王国に影響をもたらしていた。それほどまでにルイスが放つ攻撃が強大であったことの証拠であり、もしこれが大地に着弾していた場合は、更なる壊滅的な被害を生んでいたのは間違いない。
「さて、少し予定は狂ったけど……そろそろ王城へと向かうとするか」
ルイスが放った漆黒の炎球はまだ消えない。
リーシアが生きているはずない。彼女の遺体を確認するまでもないと判断したルイスは、自分の背中に生える黒翼を羽ばたかせ、遠くに見えるハイラントの王城へ飛ぼうとする。
「――いかせないッ!」
「……ん?」
粉塵と黒炎の中、鋭く木霊する少女の声音がルイスの鼓膜を震わせる。
「私はまだ、生きているッ!」
「……しぶといなぁ、全く」
「ありがと、竜さん」
『……主が剣聖姫となったから、より強く私の力を授けることが出来た。しかし、あまり何度も助けられる保障はないぞ?』
黒炎の中から姿を見せるリーシアは、ルイスが放つ攻撃を正面から受けてもその身体に目立った外傷を生んではいなかった。元気いっぱいといった様子で黒炎から離脱すると、再びルイスの眼前に立ち塞がる。
「なんだ、その姿は?」
「竜さんが力を貸してくれた。これで私は戦えるッ!」
神竜の力を最大限に借り受けたリーシア。
少女の身体は聖なる力に包まれており、その背中に純白の翼を生やしていた。
白銀と金色が混じった髪に、白く輝く甲冑ドレス。そして背中に生える純白の翼。その姿はまさしく女神と呼ぶのに相応しいものであった。
「どうやら、徹底的に痛めつけないとダメみたいだね、君は……」
「次はこっちの番……今なら誰にも負ける気がしないッ!」
禍々しき魔竜と聖なる剣聖姫の戦い。
人智を超えた戦いの果てに何が待つのか。
その答えはまだ、誰も知らない。
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