[休止]The#迷走のディフォンヌ

芒菫

第十七走 「俺を呼んでる声がする」

「しかし、善蔵。小魚は無いんじゃねーかい?まず、ここは湖も無い平地だぞ?」

辺りを見渡せば、森林折々の広大な平地が広がり、その中心に立つのが『エリア・ローズ』邸だ。

「油断禁物。それこそ一択の命、将来見てるんですかー?礼司さん」

「うー。」

またもや、善蔵に一手取られた。幾時も油断を怠らない善蔵だからこそ言れる言葉だと俺は思う。
なんてことは、どうでもいいんだが。
ところで、気になったのはセシュレが何処にいるのか。後ろから続く衛兵がセシュレを運んでいる様子は見られず、逆に向こうから「お前が持っていけ」と言っているような顔でこちらを見ている。

「なぁ、リリー」

「ん?どうされましたの?」

「セシュレんはどうした?後ろから運ばれる様子は見られないし、そこまで時間は経ってないからね。車でも宮殿に運ぶのは時間かかるでしょ?」

「うーん、確かにそう思われるかもしれませんが・・・・我々は、能力が使える。それは魔法系であったり、環境系であったり、科学系であったり、大気系であったり。それぞれの能力によって成し得られる技や作品があるわけです。ちなみに、私の能力は水流弱火すいりゅうじゃくびでありまして。水も火も体内から放出することが出来るのですの。まぁ、水流で屋敷まで飛ばした、と簡単に思っていただければ幸いです事よ。」

「そうか。確かに、セシュレの場合は氷系ひょうけい魔法。納得できるね。」

その話に乗っかって、善蔵も聞いていたらしく話に入って来た。

「因みに、俺の能力は風魔術。あれだよ、風を操れるわけだ。」

「・・・は?」

と、思わず声を出してしまった。一番驚いたのは、外の世界の人間が能力持ちだと言う事。
何故俺にはない?

「じゃ、なんで俺は能力がないんだよ?」

「あぁ、それは貴方が無能力者だという事ですわね。このウルニア国内でも、無能力者の割合は7割5分くらいいますし。事実上、無能力というのが常識ですのよ。」

「あ、俺、常識人、ならいいや。っておい。マジかよ」

「あぁ、そうですわね・・私の自己紹介を詳しくさせていただいては居ませんでしたわね。」

「あぁ、そうだな。俺と礼司もそこまでしてないが」

「二方の事はよく分かりましたわ。私、リリーは小妬坂中学1年。エリア様の右腕でありながら、衛兵の幕僚長を務めておりますの。私の能力はこの国で5段階あるうちの4つ目、その2番目ですわ。以後、よろしくお願いいたしますわ」

今回の自己紹介で、真面目にロリという印象だけでなく、トップクラスの強者だというのがよく分かって、正直俺はビビっているのだが、そのことに関しては触れないでおこうと思う。
昨日までの日常だった日々がどうしてこのような形で並行世界に流れたのかは知らないが、約1日を経とうとしている時間を過ごすのは今一回だけだという事を噛み締める。
謎だらけのこの世界で俺がやらないといけない事は一つ。

俺を呼んだ奴を、必ず探してやる――――



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