[休止]The#迷走のディフォンヌ

芒菫

第八走 「天命下らぬ交渉人」

この状況、確実に分からないのは俺だけだ。大きな物音がして駆けつけたらこの様だ。
 挙句の果て、美少女『セシュレ』とこの倉庫にいた『エレミー』は知り合いらしい。
しかも、相手の男は自分の手から火の玉を出している。
 寄り添っている2人に俺が出来る事はこれだけ。俺は、一歩づつ踏み出した。

 「おい、そこのチンピラ野郎。何があったか知らんが1人の美少女をここまで痛めつける必要性はないだろ!!」

 「・・・おい、セシュレ。お前何部外者連れてきてんだよぉ?どうやら本当にイカれちまったようだな」

どうも彼女は本当のことをいい気になれないらしい。ついて来たのは俺。セシュレは何もしていないのに。
 男は、火の玉と心が連携しているのか、業火にし始めた。

 「おいおい、彼奴本当にこの檎集庫を燃やしちまうつもりかよ!?」

エレミーがガチに止め気で男に言う。しかし、そんなことはお構いなく男は炎に圧力をかけた。
すると、突然セシュレが俺の方に来てあの炎の説明をし始めた。

 「あなたレイジだっけ。今はそんなことどうでもいいわよね。あの炎は魔法じゃないわ。人工的に作られた炎なのよ!あれは絶対そうよ。炎系魔法なら一々呪文を唱えないと発動しないから面倒なのよね。貴方もさっきから見てるから分かると思うけど、全く呪文を唱えずに炎の玉が大きくなっていってるのが分かるでしょう?それに・・・辺りも熱く・・・このままいくと完全に焼かれるわ。確かに、私なら滝並みの水を魔法で出すことが出来るわ。でも、それには時間がいるの。だから、少しばかり時間稼ぎして欲しいのよ。お願いできるかしら?」

いきなり過ぎるし成功できるか分からない。しかし、頼まれたからにはやるしかない。相手に止めるよう説得している。と見せかけてその間にセシュレが魔法発動の準備をしている・・・これが成功できれば最もだ。

 「分かった。天命下らぬ交渉人にお任せを」

 俺は、勝ち気やり気に言うと勇気を振り絞って男に話しかける。これでも昔から怖がり屋、臆病で皆から笑われてきた。しかし、今日は退くに退けない。譲れもしないのだ。なら、一つ俺がその異名の通りやって見せるまでだ。

 「おい、そこのチンピラ」

 相手は威圧を俺に押し付けるかのように良い返した・

「あぁん?」

 俺は勇気を振り絞って、男に交渉を持ち掛けた———

「あとなぁお前。さっきから俺をチンピラ言ってるが俺はこの国の者でもねぇしチンピラでもないんだよ。俺は、龍韮衆りゅうきゅうしゅう観察委員主任『ロハン・アルダイル』なのだからなぁ」

と、俺とロハンの会話にセシュレが割り込みし、龍韮衆について話し始めた。

 「龍韮衆・・聞いた事があるわ。600年前。この国のある王の末裔が、兄によって追い出され、その兄に恨みをもった末裔がこの国に祟りと恨み、怨み、憾みの4つを込めて作った宗教的団体があると」

 「ご名答。流石エリア王選挙候補の右腕。よく分かっていらっしゃる」

 「ただ書物を読みまくっているだけじゃないって事よ」

どうも龍韮衆という言葉に、意味があるような気がする。しかしその根拠はない。何故なら読み方が龍りゅうに韮ニラだ。語呂合わせがどうも可笑しく感じる。何か意味でもあるのだろうか。俺はそう思いつつ、2人の会話に耳を傾けているが、突然ロハンが本音をぶちまけた。

 「しかし、龍韮衆にはもう一つ意味があるのだ。龍はこの王国の守護者の龍を意味している。そして韮。ニラには独特な匂いがあるのはお分かりかな?」

ん?ちょっと待て。俺は元居た世界とは全く違う別次元に来ているはずだ。何故ニラという植物がこちらの世界にあるのだろうか。確かに、ニラには独特な匂いがあって、なにかの料理では五華とも言われているらしい。この時、授業に参加して良かったと今改めて感じた。もしかすると、この世界には俺のいた世界と同じ植物などもあるのだろうか?しかし、その考えは裏付けられた。

 「韮。ニラという花は突然600年前に姿を現した。出現理由は不明だがぁ・・・。その花を最初に手にしたのは龍韮衆初代本部総担当様だ。そう、すなわちお前がいった王の末裔様だよぉ?今頃龍韮衆の情勢が分かったのかぁ?」

 「600年前・・・初耳ね」

————辺りにはモヤモヤとした熱い空気が漂っている。俺とエレミーは顔を合わせて熱いという事をジェスチャーで伝え合っていた。最初、向こうは何が何だか分からなかったようだが。

 「茶番は終いだぁ。お前らの姿を見ることはもうないだろぉ。さぁ、ここで死ねぇ!!!」

 地獄の業火のように辺り一面に炎が生み出される。数十分ほど前、セシュレが人工的炎だって言っていたのは本当のようだ。真面目に呪文を唱えていない。だが、こちらにはまだセシュレの水術という秘策がある。まだ負けたと決まった訳じゃない。

 「セシュレ。どうだ?そろそろ発動できそうか!?」

 「えぇ!勿論よ。といいたい所だけれど・・・さっきの会話中に魔法を止めてしまったのよ。発動は不可能ね」

 熱い中、沈黙タイムが漂う。結局、俺たちはこのまま死ぬという事なのだ。天命に抗う事すら。

 「ってことは、コブ爺ちゃんすら助けられないって事かよ!?」

 「・・・残念だけれど。」

 完全に詰んだ。俺はこのまま死んで成仏するんだろうか。未練が2つ残っている。この状況を回避出来る作が思いつかなかったという事。2つ目はこの次元から元の次元に戻ることが出来なかったという事だ。いずれの未練、ここにいる奴らにはまったく縁も縁もない。ただ、俺が最後に叶えたかった運命だ。

 「くくく。せめて天国でエリア・ローズ様が死する所をお前たち3人で見守っているが良いのだぁ!!そして、王になるお方は———様なのだからなぁ!!!」

 「天命下らぬ交渉人・・・」とセシュレは口ずさむ。エレミーはセシュレに抱き着き、眼を瞑っている。そして次の瞬間。火傷程の熱気が俺たちを襲ったのだ。

・・・何も聞こえない。何も見えない。そして俺は・・死んだ。

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