[休止]The#迷走のディフォンヌ

芒菫

第五走 「筒井善蔵という男」

暗い夜道。いつもなら街灯に照らされ、夜でも明るい生活をおくっていた。
しかし、実際に街灯が1本もない状態で夜道を歩ってみると、18歳でも異常な警戒心と共に、怖かったりする。
しかも、新しい世界に来て初めての夜だ。怖がるのも無理がない。
そのように、辺りを見渡し、警戒しながら一歩づつ慎重にあるっていく俺に、善蔵は後で声がでないよう、静かに笑っていた。
 俺は、後ろに振り向きて善蔵に言った。

 「さっきからなに笑ってんだよ!?笑われてる人の気持ちも考えて笑ってもらえますかねぇ!?」

と、忠告感も混ざった言い方で言うと、善蔵は俺の目を石のようにガッチリと見た。
しかし、それでも顔は笑っている。

 「悪い悪い。お前の行動が面白くてついつい笑ってしまった。すまない。」

やはり、俺を小馬鹿にしていたようだ。
それにしても、寒い。こっちの世界も俺の居たもとの世界と同じ夏なのに強烈な寒さが俺を襲った。

 「おい、礼司。この状況まずくねぇか?」

 突然、善蔵が警戒気に俺に話しかけてきた。彼はなにか感じてるようだが・・・
突然、周りの草木からカサカサと去る音がした。そちらに向くが何も気配がない。
また、反対側で音がする。しかし、そちらに向いても気配はなかった。
 善蔵は音の集極点がどこにあるか、集中して音を感じていた。
しかし、それよりも早く向こうは動いた。
 集中している善蔵に向かって一匹の犬が噛み付きにかかる。
 善蔵は犬の音を瞬時にキャッチして木刀を抜き出して、オオカミから身を守るため、刀を盾の代わりにして攻撃を弾く。

 「俺は音で辺りを感知できる事もあるんだぜ。っと、次々に飛び交ってくるなぁコイツら!!」

 一匹でればもう一匹と、次々に飛び出してくる野生の犬。
この欲と姿から見ると、血塗られた猛獣にしか見えない。
それを何匹も相手をしている善蔵はただ者ではないと、改めて感じた。

――――しかし、善蔵も30匹以上もいるこの状況に、少し厳しい顔をしていた。
なにせ、犬の攻撃を回避しながら俺を守っていくんだ。
 自分が無力なのが悲しい。そう思っていると、突然善蔵が俺を突き飛ばした。
 瞬間、善蔵が猛獣を次々に切り裂いていく。

 「礼司。逃げろ!!この状況、俺が押されてる。このままいくとお前も死ぬかもしれない!!だから早く!!」

 「だからといって善蔵を―」

 「こんな猛獣、30匹相手にできる人間が存在すると思ってんのか?大丈夫だ。時間稼ぎにはなる。早く行け!!」

 確かに、善蔵の理屈は整っている。
しかし、善蔵を死なせてしまえば、せっかく分かりあえた仲間が居なくなってしまう。
それだけはさせない。そう思う俺に頭痛が襲う。その頭痛は早く逃げろ。と、善蔵が俺に伝えてくれるようだった。人を信じて旅をし続け、相手を思いやるこの正義感。30匹猛獣オオカミを相手にしていても一言もボロをこぼさずここまでやって来たのだ。

―――これが、筒井善蔵という男だった。

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