奴隷少女の勇者道

巫夏希

3-5. エルフとガラムド(前編)

「実は勇者……あなたがやってくることは何百年も前から解っていたことだったのだ」
「何百年も……前から?」

 こくり、とエルフ・クイーンは頷く。

「勇者がやってくる時代は、ずっと昔からある記録に残されているのです。最初は七百年前、だったでしょうか。正確に言えば、それ以上前から、ガラムドは私たちに勇者の存在を明らかにしていました。いつか世界が滅ぶ危機に直面する時がやってくる。だから、もしそうなったのならば、勇者がどこからかあらわれてくることもまた事実だ。そうなったら、手助けをしてほしい――と」
「それって、つまり、神様に頼まれたということ?」

 レミリアの問いに、エルフ・クイーンは頷く。

「神様に、私たちは頼まれました。世界を救ってくれるであろう勇者は、きっとその武器を求めてくるだろう――と。そのためにも、この武器を守ってくれないか、と」

 もしかしてそれって。
 一番理解が早かったのはレミリアだった。
 それを聞いてこくりと頷くのはエルフ・クイーン。

「ええ、その通りです。この武器は弓と杖、そして剣になります。その名前がそれぞれシルフェと名付けられているのは、ガラムド様に仕えた神官の名前からとられているのです」
「……この武器を使うことで、どうなるというの?」
「その武器は神の加護を受けているのですよ」

 イヴァンの問いにやさしく答えるエルフ・クイーン。おそらくそれは彼女が勇者だから、そういう受け答えをしているのかもしれない。これが、レミリアがやっていたら、きっとある程度つっけんどんな言い回しになっていてもおかしくはないだろう。

「……神様の加護を受けているのは解ります。ああ、言い方がおかしかったでしょうか。神国教会の神様ではないのですよね。今は、神国教会はガラムドを神に据えてなどいないでしょうから」

 その発言にエルフ・クイーンは頷く。
 まるでその通りだと肯定するようにも見えた。

「その通り。あなたも神国教会のシスターならば解るでしょうが……、あの宗教団体が崇拝しているのはすでにガラムドではありません。四人の幹部が……、神と同じ地位に立っているといっても過言ではないでしょう」

 四人の幹部。
 それが神と同じ地位に立っている。その発言は、ほんとうにガラムドを心から崇拝している人たちから考えると裏切っているような発言にとれるかもしれない。
 そしてそれはエルフ・クイーンも理解している発言だった。

「……神様を裏切る行為になるということは、きっと、いや、確実に彼らも自覚しているでしょう。彼らは自分たちの欲のために、神と同じ地位に立っているのですから。今はあの組織だけの地位になっているでしょうが、いずれ、この世界でも神にとって代わる地位になるのかもしれませんね」

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