奴隷少女の勇者道

巫夏希

2-18. リスタート

「ねえ、レミリア!」

 レミリアはイヴァンの言葉で目を覚ました。いや、正確には意識を取り戻した――といったほうが正しいかもしれない。

「急に話を聞かなくなったのよ」

 イヴァンは言った。この感覚は彼女にとって久しいものだった。
 死に戻り。
 そう言えば体がいいかもしれないが、要はこういうことだ。レミリアはどうしてかこの世界の理から外れた存在となってしまっている。しかし、それ以外はまったくの平凡な人間であることには間違いない。
 そして、彼女がどうしてこの能力を得たのかも、はっきりとはしていない。つまり、そういうことだった。

「イヴァン、ごめんね。疲れていたのかもしれないわ」
「だったら、休みましょう。どこかに町でもあればいいんだけど……」

 そんなことを言っていると、レミリアたちの視界にあるものが映った。
 壁だ。高い壁。何かを囲うように壁ができていた。そして、それがレスポークであるということはレミリアは知っていた。

「あれが自由の街、レスポークよ」
「自由の街?」
「そうよ。なんでも自由なの。自由を求めてここにたくさんの人がやってくる。……あの、レスポークという街はそういう街なの」
「へえ……。行ってみたいなあ……!」
「行ってみたいもなにも、これから行くに決まっているじゃない」

 出来ることなら、逃げてしまいたかった。
 彼女を救うためなら、逃げたほうがいいのではないかとレミリアは思った。
 だが。
 あの街には助けを求める人間がいた。エルールだ。助けを求めている人を助けないで、何がシスターだというのだろうか。
 彼女はそう思っていた。
 そして、レミリアとイヴァンは再びその門をくぐったのだった。


 ◇◇◇


 宿屋で一人、レミリアは考えていた。ちなみにイヴァンは今汗をかいたためにシャワーを浴びている。

「このあと夜の買い物に出かけて、そこでロザリオが奪われる……。また奪われるのは正直厄介な話だけど、そのほうが彼女と会う最適解になるのは間違いないわね……」

 レミリアは呟いて、ノートに可能性を書いていく。
 彼女はもうこのループを恐ろしいほど繰り返している。数えてはいるが、あえてそれを明言したくなかった。

「……最初はうまく行っていたのに。あの少年、急に違った戦法を使い出した」

 少年、と彼女は言った。それはあの時現れた存在のことだった。
 彼女はその存在を知っていた。彼女はその存在に何度も殺され、何度もここまで戻されているのだから。
 今度こそ、そのループを打破しなくてはならない。
 そう思った彼女は、ノートのページをめくる。そこにはずらりと何かが箇条書きされてあった。


 ――槍を人間めがけて突き刺す。この場合、人間は直前に避けていれば当たらないことが確認済み。


 ――瞬速魔法を繰り返すことによる瞬間移動による攻撃。攻撃自体は普通の格闘技であるが、そのスピードがネック。封じ込める魔法を一発当てることで無効化される。


 そんなことがずらりと書かれてある。
 これは彼女が今まで命を代償にして見てきた、戦闘パターンの数々を記したものだった。
 今度こそ、このループに打ち勝つ。
 彼女はそんなことを思った、その対策法を練り出すために書き上げたノートだ。もちろん、彼女以外の人間がこれを見ることなどない。見る意味がないし、見ても意味が解らないからだ。
 でも、彼女としては大事なものだ。――物語を、進めるために重要なキーアイテムになるからである。

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