奴隷少女の勇者道

巫夏希

2-15. あの日

 そして父さんも僕の仕事ぶりを見て、徐々に僕も働いていいように認めてくれるようになった。それと同じタイミングで仲間が増えて、仲間も僕のことを信頼してくれたからそれも大きかったけれど。
 父さんに認められて、僕は強くなった。
 でも、あの日あの時あの場所であれがあった。
 もう、言わなくても解るだろう?
 父さんが斬首刑となり死んだあの日から、僕は女であることを捨てたんだ。
 僕は男だ、と自らに言い聞かせるように。そして生き残った三人で新しく『グレーフォックス』を作った。
 誰が父さんを貶めたのかは解らない。
 でも、復讐すると心に誓った。父さんを貶めた連中を倒すんだ、と。


 最後まで話を聴き終えたレミリアとイヴァンはその話を理解するまで少しばかり時間がかかった。今彼女たちはソファに腰掛け、グレーフォックスのメンバーとともに聞いている状況にある。
 エルールは言った。

「……僕はその日を最後に女を捨てた。女という性別を捨てたんだ。それ以上でもそれ以下でもない。僕はそれから復讐するために、父さんに悪事を押し付けた人間を探した。もちろん探しているだけじゃお金にもならないから盗賊稼業でしがないながらも小銭を稼いで、の話になるけれどね。……そして、ついに見つけた」
「見つけた、って……。あなたのお父さんを悪者に仕立て上げたという、その?」

 レミリアの言葉にエルールは頷く。

「そう。いたんだよ。あいつらは性懲りもなくこの町の『裏街』にいて盗賊稼業を続けていた。しかも裏街を支配までした。父さんは支配したわけではなくて、みんなが平和で暮らせる町を作っていただけだ。父さんが奪うターゲットはいつもお金持ちだったから、そしてそれを殆ど人々に分け与えてしまったから、いつも父さんの生活は貧乏だった。……でも、あいつらはきっとそれが羨ましくて悔しくてしょうがなかったんだ。父さんがこれほどまでに、やろうと思えば独裁政治だってできるはずの権力を振り翳さないのはおかしい、だなんて思ったんだろう。そして、そいつらは……!」

 感極まって、エルールは涙を流す。

「おかしいな……。涙なんてとうの昔に枯れ果てたと思っていたのに」
「それってもしかして、そのあなたが言う『敵』ってのは……『ワイルドウルフ』のことなの?」

 その言葉にエルールは頷く。
 エルールは涙を拭って、話を続けた。

「そうだ。ワイルドウルフだ。彼らが父さんを悪者扱いして処刑した。売ったんだよ、神国教会に。偽りの罪を擦り付けてね。それはあとから調べて気がついたから、それを神国教会に言っても無駄だった。……もしかしたらあいつらは最初からグルだったのかもしれない。そうだ、きっとそうに違いない。あいつらは言葉巧みにお金をちらつかせて市民を買った。そして神国教会が目の前だから人々も手を出せない……。そして父さんは……、父さんは……っ!!」
「もういい。いいのよ、エルール」

 レミリアはエルールを抱き寄せた。
 エルールはここまで話すのが久しぶりで心にとっかかりがあったのが消えたのか、涙をわんわん流していた。その姿は少女のそれに見える。
 そしてそれを一人聞いていたイヴァンは、怒りに燃えていた。彼女はワイルドウルフを許せなかった。彼女は神国教会を許せなかった。義賊とはいえ、彼はいいことをしているはずなのに……どうして偽りの罪で裁かれなくてはならないのか、イヴァンはそれが疑問で仕方なかった。

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