初めまして。
最終話 初めまして。
私は残った体力を全て使い切るように、体育館へと走った。
もしもハルちゃんが体育館の近くにいたら手遅れになるかもしれない。
私は重い足と必死に空気を求める荒い呼吸を携えて、体育館へと入る。
体育館には何百ものパイプ椅子が並べられ、ここにも大勢の人が座っていた。
どうやら目論見通り今はイベントをやっているらしく、マイクを持った生徒が観客を盛り上げていた。
そう、これが私に出来る最後の事。そのイベントは参加者を募って心から叫んでもらい、その音量で勝敗を決める。
ここなら、ハルちゃんに向かって叫べる。
今ならやれる、このアドレナリン大放出の今なら!
「さぁさぁ次の挑戦者はいるかな?早い者勝ちだ!」
「はい!」
私はいち早く反応して手を挙げた。どうやら他に挑戦者はいないらしい。
息はまだ完全に整ってないけど、ハルちゃんはきっと見てくれてる、今しか無いんだ。
司会者に誘導されてステージに上がると、思っていた以上に多く感じる観客に尻込みしそうになる。
ハルちゃんが見てると自分を鼓舞し、私はステージの真ん中に立ち大きく息を吸った。
「私は本が好きだ!」
――きっとハルちゃんは私だって気付いてくれるはず。
「本を好きだと言ってくれる人が好きだ!」
――だからハルちゃん。
「私のことを認めてくれて、何度も楽しく感想を言い合えて!」
――私の気持ちを聞いて。
「あなたと話すことが楽しくて!」
――私はこんなにも。
「いても立ってもいられない!」
――ハルちゃんのことを想ってるよ。
「ハルちゃん!いや、新波晴!!」
――だから勇気を出して、そのためなら私は。
「私は新波晴が好きだあああああああああ!!」
――何度だってこうやって、叫んであげるから。
あまりの熱に司会者さえも静まりかえった体育館に、一人の足音が響く。
初めて見るあなたの制服、初めて見る顔、初めて見るその綺麗な瞳。
一挙手一投足が私の目に焼きついた。何故だか私はすぐに確信出来た。
この人が、晴ちゃんなんだって。
そして視界の晴ちゃんはステージ前で立ち止まり、大きく息を吸い込んだ。
「最初見たときから本が好きなんだなって、すぐに仲良くなりたいって思った!」
――ああ、やっと。
「引き籠もりだって言っても、ユズルさんはいつも通り話してくれた!」
――勇気を出してくれたんだね。
「今日も、こうして頑張ってくれた!!」
――うん、晴ちゃんがいたから頑張れたんだよ。
「ユズルさん、ユズルが大好きだあああああああ!!」
――私は、私も気付かない内に。
涙を流していた。
静まりかえった体育館を埋め尽くしたのは、司会者や観客達の喜びの叫びだった。
よく言った!かっこいいぞ!やるじゃん!すごい!彼ら彼女らは私達にそう言ってくれた。
……なにこれ恥ずかしい!
私は真っ赤になるのを意識しながら、晴ちゃんの腕を掴んで体育館から走って逃げた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ゆ、ユズル」
「ご、ごめんね。急に走っちゃって」
「恥ずかしかったから、大丈夫」
「でも、やっと会えたよ。晴ちゃん」
「うん、ユズル」
「勇気出してよかったでしょ?」
「はい、本当に。ここに来ることが出来て、よかった」
「そうだ、私言いたいことがあったんだ」
「え?」
私は深呼吸して、ハルちゃんを見据える。
そして私は、ハルちゃんにずっと言いたかった言葉を。
「初めまして。私は、飯川由鶴です」
呆けている晴ちゃんに視線で促すと、クスリと笑って返してくれた。
「初めまして由鶴さん。新波晴です」
そして私は満面の笑みで。
晴ちゃんを、力いっぱい抱きしめた。
もしもハルちゃんが体育館の近くにいたら手遅れになるかもしれない。
私は重い足と必死に空気を求める荒い呼吸を携えて、体育館へと入る。
体育館には何百ものパイプ椅子が並べられ、ここにも大勢の人が座っていた。
どうやら目論見通り今はイベントをやっているらしく、マイクを持った生徒が観客を盛り上げていた。
そう、これが私に出来る最後の事。そのイベントは参加者を募って心から叫んでもらい、その音量で勝敗を決める。
ここなら、ハルちゃんに向かって叫べる。
今ならやれる、このアドレナリン大放出の今なら!
「さぁさぁ次の挑戦者はいるかな?早い者勝ちだ!」
「はい!」
私はいち早く反応して手を挙げた。どうやら他に挑戦者はいないらしい。
息はまだ完全に整ってないけど、ハルちゃんはきっと見てくれてる、今しか無いんだ。
司会者に誘導されてステージに上がると、思っていた以上に多く感じる観客に尻込みしそうになる。
ハルちゃんが見てると自分を鼓舞し、私はステージの真ん中に立ち大きく息を吸った。
「私は本が好きだ!」
――きっとハルちゃんは私だって気付いてくれるはず。
「本を好きだと言ってくれる人が好きだ!」
――だからハルちゃん。
「私のことを認めてくれて、何度も楽しく感想を言い合えて!」
――私の気持ちを聞いて。
「あなたと話すことが楽しくて!」
――私はこんなにも。
「いても立ってもいられない!」
――ハルちゃんのことを想ってるよ。
「ハルちゃん!いや、新波晴!!」
――だから勇気を出して、そのためなら私は。
「私は新波晴が好きだあああああああああ!!」
――何度だってこうやって、叫んであげるから。
あまりの熱に司会者さえも静まりかえった体育館に、一人の足音が響く。
初めて見るあなたの制服、初めて見る顔、初めて見るその綺麗な瞳。
一挙手一投足が私の目に焼きついた。何故だか私はすぐに確信出来た。
この人が、晴ちゃんなんだって。
そして視界の晴ちゃんはステージ前で立ち止まり、大きく息を吸い込んだ。
「最初見たときから本が好きなんだなって、すぐに仲良くなりたいって思った!」
――ああ、やっと。
「引き籠もりだって言っても、ユズルさんはいつも通り話してくれた!」
――勇気を出してくれたんだね。
「今日も、こうして頑張ってくれた!!」
――うん、晴ちゃんがいたから頑張れたんだよ。
「ユズルさん、ユズルが大好きだあああああああ!!」
――私は、私も気付かない内に。
涙を流していた。
静まりかえった体育館を埋め尽くしたのは、司会者や観客達の喜びの叫びだった。
よく言った!かっこいいぞ!やるじゃん!すごい!彼ら彼女らは私達にそう言ってくれた。
……なにこれ恥ずかしい!
私は真っ赤になるのを意識しながら、晴ちゃんの腕を掴んで体育館から走って逃げた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ゆ、ユズル」
「ご、ごめんね。急に走っちゃって」
「恥ずかしかったから、大丈夫」
「でも、やっと会えたよ。晴ちゃん」
「うん、ユズル」
「勇気出してよかったでしょ?」
「はい、本当に。ここに来ることが出来て、よかった」
「そうだ、私言いたいことがあったんだ」
「え?」
私は深呼吸して、ハルちゃんを見据える。
そして私は、ハルちゃんにずっと言いたかった言葉を。
「初めまして。私は、飯川由鶴です」
呆けている晴ちゃんに視線で促すと、クスリと笑って返してくれた。
「初めまして由鶴さん。新波晴です」
そして私は満面の笑みで。
晴ちゃんを、力いっぱい抱きしめた。
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