異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)

N

52 . 会議

カツカツと誰かの指が机とぶつかる音が響く。朝の10時程になるのだろうか、少し曇った空から降り注ぐ白い光が部屋いっぱいに包まれた。
前の幹部の会議と同様に同じ人たちが集まり同じ席に座り、今朝起きたという重大事件を話し合っているようだ。
しかしなにも知らない私は半端蚊帳の外である。
「人間国、アルストロメリア地方で何者かによる大量虐殺があり主要都市のアルストロメリアが潰れました、それにより国王は犯人の特定、処刑を要求しているいます」
イオの黒板から浮き出た白い途切れ途切れの線が形を作り動き出す、アニメーションのように動くそれはわかりやすく状況を伝えた。
「殺し方は全て刺し傷又は切り傷。大きな無数の針で串刺しにされた例が多く生存者ゼロらしいでんな。皆殺しにされたようで目撃情報は一切ありはしん。生き残った烏共は影からいきなり現れた黒いやつ、と申してありんした」
右手の奥の方に座る黒い鳥の羽の生えた女、色鮮やかな着物を着た私とまた違った濃い黒髪のパッツン、昔の日本女性というような美貌に丸メガネをかけた彼女は確かリロロと言ったであろうか。
リロロが独特な方言のような訛りで事の詳細を告げた。
「はぁーん。もういっそオーディンが地下復活して海をこえて攻撃したのじゃない?」
なんだかだるそうな銀髪ツインテールのロリ。考える気もさらさらないというような彼女の背中には鳥の羽というより昆虫の羽のようなすこし透けた銀の羽が時々パタパタと光る粉を散らしはためいた。
フリフリの姫服を着た彼女は妖精地方、言わばテイス地方のテイスティ公爵とも呼ばれるルミルだ。
本名は…なかなか凄い。
「…まさかそんなに早く復活するわけない」
ゴスロリに身を包んだ黒から赤の毛先へのメッシュの巻き髪をした彼女がぼそりと呟く。黒い透けたベールのようなものをかぶり悪魔の羽のようなものが左右の頭に生えて時々パタパタとロリっ子と同じように動く。長いパッツンの前髪で鼻から上は見えない。幾何学模様というより不可解な古代模様のような金の刺繍の模様が目立つドレスだ。確かキメラのスティフだ。
「…まさかとは思いますが、オーディン教信者の仕業、ではないでしょう?」
待ってましたソレラちゃん。艶のある青髪はいつ見ても美しい。 
「しかしそのような力のあるオーディン教信者は知られてないし少なくとも我輩は知らぬぞ」 
相変わらずなんだかうざっ気のあるデュールが口に出した。
「とりあえずこの国の幹部クラスに裏切りモンがいることは明らかでありんす」
リロロがそれに付け加えると足を組む。
「でも闇を操るやつなんていた?」
銀髪妖精ちゃんがそれにふっかけた。
「…誰の犬か」
なに闇の深いこと言ってるんだスティフちゃん。
「まずここにいない幹部を調べるべきでは?」
さすがしっかりしたラインちゃんというべきか。適切な指示をだし脱線した話を戻した。
「そうですね、ここに出席していないのはゼロ、ロゼッタ、エール、カルテット、アレア、モルテ、デイド、ピーディフ、テドロ…あたりですね」
それにすこし考え込んで名簿のように名前を並べたイオ姉さんに後ろで金髪娘の声が飛ぶ。
「ちょっと、鬼人総括党のお父様、カルテットはありえませんよ」
「わかってるわよ、一応リストに入れておくだけなんだからそんなにカッカしなくてもいいでしょ」
それに呆れたように銀髪ロリのルミルがつっかかった。どうやらここら辺は仲が悪いようで見えない火花が散っている。
「…とりあえずお暇な方、こちらの方々に事情聴取を」
イオの言葉で会議は閉じられた。

本当は私、いなくてもいいんじゃないのだろうか。


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