異世界行ったら魔王になってたんだけど(以下略)

N

30 . 予想外の事態


すたたたーっと玄関の手前でマイはアイを走って追い越した。はて何事だと思いながらマイは…

「ただいまかえりましたー!」

バァンという効果音でもつけてるのか、勢いよく重そうな扉を開け飛び込んだ。中のメイド服を着た人達が凄く驚いた顔をしているのがうかがえる。すいません、うちのバカが。
すると一人の低身長の銀髪メイドがこちらにぱたぱたと寄ってきた。マイ達の着ている茶色ベースのメイド服とは違い、白黒の正にメイド服というような服に陶器のような白い肌、透き通る蒼の瞳にふっくらとした紅の唇。ボブでぱっつんに切り揃えてあるふっくら仕立てのクレオパトラカットの子は恥ずかしそうにこちらに近づいて来た。どうせ私のファンだろう。苦しゅうないぞ。その子は私達の前に立ち止まると俯きもじもじさせながらこう言った。

「マ、マイさん!!それにアイさん!メイさんも!!おっおかえりなさいませ…!!」

は?
「マイさん!?にアイさんにメイさん…もしかして…って言うか髪色的に絶対そうじゃない!?」
はぁ?
「そうよそうよ!!圧倒的な成績で3人共主席卒業、魔王城に雇われたあの方々よ!!」
はぁぁ?
「伝説のメイデス家直血のエリート三姉妹よ!!ほら、アンタサインもらうならいまよ!?こんなチャンス滅多にないんだから!!」
はぁぁぁぁぁぁああ?
三人共主席卒業??
伝説のエリート三姉妹??
「こら!お前らこの方を誰と心得る!この国の魔王アイナ様だぞ!」
少し呆れ混じりの怒った口調であの有名なセリフを言い放ったアイに広間に集まり口々に話していたメイド達は恐縮し押し黙った。するとまだ顔を赤らめていた銀髪メイドっこがか細い声で呟く。
「えっと…失礼しました…。旦那様がお呼びですのでお部屋へどうぞ…」
慌ただしくぺこっと頭を下げた銀髪の女の子の後にマイはルンルンで、メイもルンルンで、アイだけこの場にふさわしい深刻な様子で廊下を歩いた。やっぱりアイはともかく、この二人が主席卒業伝説エリートなんてありえない。都市伝説並みだとしみじみ改めてチラッと可哀想な目で二人を見やった。
「いだいいだいいたいいたいいたあああやめてやめてやめろやめろくださいやめてえええ!」


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