勇者の神剣《ブレイブソウル》

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プロローグ

 僕を取り囲む人々、旧友のように接してくれる友達、毎日のように聞き慣れた女の子たちの歓声。それが僕の日常だ。そんな仲間たちとの日常は唐突に崩れ去った。

「ようこそ。我らの国、ルーズ王国へ」


――時間は少しさかのぼる――


「天王司君!おはよう!」

「やあ、安藤さん。おはよう」

 教室に入った僕、天王司てんおうじアルフを出迎えてくれたのは、安藤さんの明るい声だ。彼女、安藤千夏あんどうちなつの声は聞いていると元気が湧いてくるような感覚がある。

「よう、今日は遅かったじゃねぇか」

「困っている人を見るとつい体が動いちゃって」

「お前は相変わらず優しいなぁ」

 彼は青木吉宗あおきよしむね、僕の数少ない男の友達だ。この学校に転校してきた僕にも仲良く接してくれる。

 僕はイギリス人の母と日本人の父を親に持つ所謂ハーフだ。でもイギリスには長期休みに行くぐらいで、大体は日本で暮らしている。この学校には、母の仕事の都合で引っ越してきた。前の中学校ではいじめられていたけど、この学校はみんな優しくてとても良い学校だと思う。

 でも、そんなこの学校でも気になることが一つある。それは、僕の反抗勢力と言われている四人の男子だ。彼らのリーダーは若林健二わかばやしけんじと言って、かなり大柄な生徒だ。おそらく先生でも組み合えば勝つことはないだろう。彼らは僕と同じこのクラスの生徒だ。目を向けると、今も教室の隅の若林君の席に集まって何かを話している。

「何を見てるの、って、あいつらか。天王司君を嫌うなんて、信じられないよね」

 僕の見てるものに気づいた安藤さんが嫌悪感丸出しの顔で呟いた。周りの女子もうんうんといった様子でうなずいている。

「僕はただみんなと仲良くなりたいだけなんだけどな……」

 ふと意識もせず呟いたその言葉は、チャイムの音に紛れて消えた。

「おっと座るか。……このチャイム、なんか変じゃないか?」

 青木が何かに気づいたように顔を上げた。言われてみれば、少しエコーがかかったように聞こえる。

 嫌な予感を感じながら耳を澄ませると、教会の鐘のようなゴーンゴーンという音が頭の中で響き始めた。その音はだんだん大きくなる。

 ふと白い光を感じて、足下を見ると、白く輝く複雑な図形がそこにはあった。

「みんな!逃げろ!」

 咄嗟にそう叫ぶと同時に、視界は白く塗り潰された。

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