遅熟のコニカ

紙尾鮪

61「キョウカイトカイキョ」

 「は?」
 コニカが疑問を感じた瞬間、ヒルコの机を挟んで目の前にいる、スータンと言う祭服を着た、神父が、机を乗り越え、ヒルコに、触れんばかりに近づき、叱責した。

 「八百一殿ッ! どうしたのですか! 駄女に唆され、いや、惑わされたのですか?! いぃやそうに違いない、でなければおかしい、我、八百一殿が、そのような事でなければ、等の昔に我が手中に収まっている筈、しかし私はその様な事は出来ない……何故ならば、歩み寄るのは私ではなく、八百一殿であるべきなのだからァアアアアハアアアアァア!!」
 若干声が上ずっている白髪のオールバックの神父は、ヒルコの目の前で、演説に近い、持論を延べ、そして、手を合わせ、拝む。
 偶像崇拝などではない、現、存在する神、ヒルコに対して感謝と、親愛を捧げながらも、自分の中の神像を押し付け、そして、手に入れようとしている。
 それは教徒と呼べるか、否、凶徒である。

 「唾が顔にかかった、拭けギルズ・デ・ライズ」
 ヒルコは若干眉をしかめ、自分の目の前で頭を垂れ、膝をつくライズに、命令をする。
 ヒルコはライズとの主従関係を結んだ訳でもなく、ただ、命令したらそれを行うだけの存在として認知していた。

 「仰せのままに」
 ライズは、白のハンカチを出して、優しくヒルコの顔を拭く。
 そして、拭き終わり、一礼し、コニカを睨む。

 「貴女? 那由多なる、八百一殿を恋慕する全ての民を差し置いて、唯一無二の存在となるその覚悟、ここに示しなさい」
 コニカの目の前に立ち、ライズは、怒りを隠すことなく、全面に表し、そして、問う。

 自分の崇拝する者が、一、人間と言う動物に汚される事を考えれば、今、生命の若葉を摘むことすら考えたが、一応、神の妻帯となる者、無考慮の上に成り立つ行為が背徳行為に繋がるかもしれない 。
 であれば、唯一の抵抗、神と寄り添うに値するか、それを知り、納得、もしくは反抗するしかないと思っていた。
 しかし、コニカにとってヒルコは神ではない。

 「いや……そのだな……なんというか……」

 「このような優柔不断な女を妻と?! あぁなげかわしや、こんな女にたぶらかされ、脅され、結婚を強要されたのでしょう、あぁ可愛そうな八百一殿……しかし、今一度お考えになられたのならば! このギルズ・デ・ライズ、八百一殿を私の『天使の矢』教会にへとご招待しようではございませんか!!」
 「求婚したのは我輩だが、半ば無理矢理」
 ライズは、その白髪をグシャグシャと掻き、言葉と取れぬ叫びをあげて机の下に潜り込み泣いていた。

 「……ん?終わった?」
 湯飲みにいれたお茶をゆっくりとリーダーは飲んでいて、何処からか出した椅子に座り、和んでいる。
 
 「そうだね、君には昼子くんとつがいになる椅子をあげるよー」
 リーダーと呼ばれる男は、コニカの肩を叩き、そして元いた場所にへと歩いていく。

 「君達が連れてこられたのは他でもない、この集まりと言ってはあれだけど、これに参加してほしいんだ」

 「なンの集まりなんだよ! 目的、意味、メリット、それらを答えてからだろうが!!」
 リーダーと呼ばれる男に突っかかるように、壁にもたれるヤンキー風の男が怒号を出して責め立てる。

 「もぉ、『爆音努ハネイド』くんは怒りっぽいね。だけどそうだったね、言い忘れてた。目的だね、簡単に言おうか」

 「神の遺物の発見、独占、そして、魔女の子孫の立場向上、まぁ簡単に言えば、人間狩りかなぁ」
 その目的に、ツレの者達は言葉を失った。
 コニカも、無論同じだったが、また違う所で、コニカは驚いた。
ヒルコが笑っていた。

 ヒルコは椅子から立つと、喜の声で言った。

 「我輩は、先の"意味"の達成により、神の遺物『Eiアイ』の発見。更に、このコニカという我が妻、破・生の両極性を持つ、始祖の魔女だ」

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