闇夜の世界と消滅者
二十四話 迷宮探検4 奴らの狙い
戀がイルディーナたちの元に帰ると、鈴音は満面の笑みで迎えた。
「お待ちしておりました。兄様」
「ただいま、鈴音」
戀は鈴音に挨拶し、二人でイルディーナのもとへ向かう。
「すまない、待たせたか?」
「いえ、たいして待っておりませんよ。むしろシャードさんに触れさせていただいて……至福でした……」
蕩けた顔でそう述べるイルディーナに、戀は苦笑を浮かべる。
「ああ、シャードも満更じゃなさそうだし、会長さえよければいつでもモフってやってくれ」
「おい、私はペットではないのだぞ!」
「でも撫でられて気持ちよかったんだろ?」
「…………否定はしない」
シャードも満更ではなさそうに答える。
「さて、そろそろ食事にしようか」
戀がそう言いながら、背負っていたかごと引き摺っていた熊と猪を目の前に投げる。
「山菜とかキノコとかは別に不自然ではないのですが…………その熊と猪はいったい…………しかも大きすぎませんか?」
イルディーナは戀が獲ってきた熊や猪を見ながら、そう呟く。
「ここの森あんまり動物がいなくてな……仕方なく魔物のテリトリーに侵入して狩ってきた」
戀の行動に理解が追い付いていないのか、イルディーナはポカンと呆けていた。
一方鈴音は戀の行動は理解できる範囲なのか、あんまり驚いていない。
「え、じゃあこれ……魔物なんですか!?」
イルディーナの疑問に戀は当たり前だと言ったように頷く。
「でも魔物を食べるなんて、そんなこと聞いたことも………………」
「まあ、そりゃあ食糧をしっかり持っていれば魔物を食うことはないんだが…………魔物でも食材として扱われているのは知っているか?」
戀の問いにイルディーナと鈴音は頷く。
「いや、鈴音はもう知ってるはずなんだけど……まあいいか。それで、魔物で食材とされている例として、ホワイト・コーンラビット、イエロークラブ、禍根の根草、あとは、レッド・カウなんかもそうだな」
戀が挙げている魔物は、庶民用として知られているものから高級食材として扱われているものである。
ホワイト・コーンラビットやレッドカウは、極めて特殊な環境でしか生息していないため、入手することが困難とされている。
「まあ、例に挙げたのはあくまで一般人でも知られている食材なんだが……意外に知られていないのが、コボルドやオークといった小型魔物クラス、オーガやグランドフィッシュみたいな中型魔物クラスみたいなやつも、まぁ物にもよるが食えるってことだな」
鈴音は戀の説明に何の疑問を感じていないようだが、イルディーナからすれば驚きである。
モンスターを食すという考えは、イルディーナだけでなくほかの生徒でも持たないだろう。
過去の魔法大戦ならいざしらず、今は平和な世の中だ。食料に困るなどということには基本的にならない。
それを戀に伝えると、戀は逆に呆れた顔をしてこうのたまった。
「確かに魔物を食うってのはもはや廃れた文化だろう。だが、魔物が食えるって知ってるやつは結構現地で食料を調達するやつが多いんだぜ?」
ものは試しだ、と言って戀は慣れた手つきで魔物を解体していく。
肉として食べられる部分と、換金できる素材とちゃんと分けているみたいだ。
結果として、熊とイノシシの魔物の肉は非常に美味だった。
鈴音もイルディーナも満足げに食べている。
戀はそれを見てとてもうれしそうな表情をしていた。
「さて、腹も膨れたことだし、今日はここで野宿して明日からまた探索を開始すんぞ」
食事に費やした時間、約二十分。
かなりの量の肉があったはずだが、今はもう見る影もない。
「わかりました。では、私が最初に見張りを…………」
鈴音がそう申し出るが、戀は首を横に振った。
「今日は俺が見張りをやるよ。慣れてるし、何かあったときの対処に困らないだろ?」
この中で最も戦闘経験が豊富であり、数多のサバイバル知識を持つ戀にそう言われ、鈴音はしぶしぶ納得した。
なお、イルディーナは終始何か言いたげな顔をいてたが、戀は気づかぬふりをした。
女子二人が寝静まったころ、戀は火を焚きながらひとりでに呟く。
「やはりこの森はおかしい……いくら超弩級型魔物クラスが呪術を受けているとはいえ、ここまで変化するものなのか?」
『これは超弩級魔物が原因じゃないかもしれないね』
誰もいなかったはずの空間から声が聞こえる。
戀はそこに目を向ける。
そこにいたのは一匹の猫。
そう、猫だ。
だがただの猫ではない。
体は真っ黒な炎で覆われており、尻尾が三つに分かれている。
なにより最も猫と違うのは、その深紅に染まった眼だろう
だが、戀は対して驚いた様子もなく、むしろ気楽に話しかける。
「久しぶりに姿を現したな、《殺鬼》?」
そう、この黒猫はイルディーナとの決闘で使用した戀の愛刀、《殺鬼》である。
「ごめんごめん、ちょっと寝坊したよ」
「そのちょっとが一か月だということには突っ込まないでおこうか」
殺鬼はケタケタと笑うと満足したのか、早速本題に入る。
「さっきの話だけど、ちょっときな臭いことになってきたよ~」
「どういうことだ?」
「この件、第三者の介入があって間違いないね。まぁ超弩級魔物クラスが呪術になるなんてこと、偶然できるにはちょっと無理があるしね」
殺鬼の言う通り、仮にも超弩級魔物クラス、守護獣と奉られるだけあって、知性もそこらへんの一般人よりも高い。
そんな魔物が、偶然呪術に罹るなんてことがあるのだろうか。
「ありえねぇよなぁ…………」
「うん。それにちょっとやばい情報も混ざってたしね」
「やばい情報だと?」
「うん。この件に関わってる第三者の目星はついてるんだよね。ウロボロスっていう闇組織なんだけど、聞いたことある?」
「ああ。この世に存在する闇組織の中でもかなり質の悪いって評判の奴らだろ?」
戀の言葉に、殺鬼は頷く。
「そのウロボロスがさ、近々ベルクリオ学園を襲撃するっていう噂が流れててね」
「ウロボロスがベルクリオ学園を襲撃だと? いったい何を…………まさか」
戀が何か心当たりがあったのか、眉間にしわを寄せる。
そんな様子の戀に、殺鬼は確信した様子で答える。
「奴らは間違いなく…………………龍宝玉を狙ってる」
「お待ちしておりました。兄様」
「ただいま、鈴音」
戀は鈴音に挨拶し、二人でイルディーナのもとへ向かう。
「すまない、待たせたか?」
「いえ、たいして待っておりませんよ。むしろシャードさんに触れさせていただいて……至福でした……」
蕩けた顔でそう述べるイルディーナに、戀は苦笑を浮かべる。
「ああ、シャードも満更じゃなさそうだし、会長さえよければいつでもモフってやってくれ」
「おい、私はペットではないのだぞ!」
「でも撫でられて気持ちよかったんだろ?」
「…………否定はしない」
シャードも満更ではなさそうに答える。
「さて、そろそろ食事にしようか」
戀がそう言いながら、背負っていたかごと引き摺っていた熊と猪を目の前に投げる。
「山菜とかキノコとかは別に不自然ではないのですが…………その熊と猪はいったい…………しかも大きすぎませんか?」
イルディーナは戀が獲ってきた熊や猪を見ながら、そう呟く。
「ここの森あんまり動物がいなくてな……仕方なく魔物のテリトリーに侵入して狩ってきた」
戀の行動に理解が追い付いていないのか、イルディーナはポカンと呆けていた。
一方鈴音は戀の行動は理解できる範囲なのか、あんまり驚いていない。
「え、じゃあこれ……魔物なんですか!?」
イルディーナの疑問に戀は当たり前だと言ったように頷く。
「でも魔物を食べるなんて、そんなこと聞いたことも………………」
「まあ、そりゃあ食糧をしっかり持っていれば魔物を食うことはないんだが…………魔物でも食材として扱われているのは知っているか?」
戀の問いにイルディーナと鈴音は頷く。
「いや、鈴音はもう知ってるはずなんだけど……まあいいか。それで、魔物で食材とされている例として、ホワイト・コーンラビット、イエロークラブ、禍根の根草、あとは、レッド・カウなんかもそうだな」
戀が挙げている魔物は、庶民用として知られているものから高級食材として扱われているものである。
ホワイト・コーンラビットやレッドカウは、極めて特殊な環境でしか生息していないため、入手することが困難とされている。
「まあ、例に挙げたのはあくまで一般人でも知られている食材なんだが……意外に知られていないのが、コボルドやオークといった小型魔物クラス、オーガやグランドフィッシュみたいな中型魔物クラスみたいなやつも、まぁ物にもよるが食えるってことだな」
鈴音は戀の説明に何の疑問を感じていないようだが、イルディーナからすれば驚きである。
モンスターを食すという考えは、イルディーナだけでなくほかの生徒でも持たないだろう。
過去の魔法大戦ならいざしらず、今は平和な世の中だ。食料に困るなどということには基本的にならない。
それを戀に伝えると、戀は逆に呆れた顔をしてこうのたまった。
「確かに魔物を食うってのはもはや廃れた文化だろう。だが、魔物が食えるって知ってるやつは結構現地で食料を調達するやつが多いんだぜ?」
ものは試しだ、と言って戀は慣れた手つきで魔物を解体していく。
肉として食べられる部分と、換金できる素材とちゃんと分けているみたいだ。
結果として、熊とイノシシの魔物の肉は非常に美味だった。
鈴音もイルディーナも満足げに食べている。
戀はそれを見てとてもうれしそうな表情をしていた。
「さて、腹も膨れたことだし、今日はここで野宿して明日からまた探索を開始すんぞ」
食事に費やした時間、約二十分。
かなりの量の肉があったはずだが、今はもう見る影もない。
「わかりました。では、私が最初に見張りを…………」
鈴音がそう申し出るが、戀は首を横に振った。
「今日は俺が見張りをやるよ。慣れてるし、何かあったときの対処に困らないだろ?」
この中で最も戦闘経験が豊富であり、数多のサバイバル知識を持つ戀にそう言われ、鈴音はしぶしぶ納得した。
なお、イルディーナは終始何か言いたげな顔をいてたが、戀は気づかぬふりをした。
女子二人が寝静まったころ、戀は火を焚きながらひとりでに呟く。
「やはりこの森はおかしい……いくら超弩級型魔物クラスが呪術を受けているとはいえ、ここまで変化するものなのか?」
『これは超弩級魔物が原因じゃないかもしれないね』
誰もいなかったはずの空間から声が聞こえる。
戀はそこに目を向ける。
そこにいたのは一匹の猫。
そう、猫だ。
だがただの猫ではない。
体は真っ黒な炎で覆われており、尻尾が三つに分かれている。
なにより最も猫と違うのは、その深紅に染まった眼だろう
だが、戀は対して驚いた様子もなく、むしろ気楽に話しかける。
「久しぶりに姿を現したな、《殺鬼》?」
そう、この黒猫はイルディーナとの決闘で使用した戀の愛刀、《殺鬼》である。
「ごめんごめん、ちょっと寝坊したよ」
「そのちょっとが一か月だということには突っ込まないでおこうか」
殺鬼はケタケタと笑うと満足したのか、早速本題に入る。
「さっきの話だけど、ちょっときな臭いことになってきたよ~」
「どういうことだ?」
「この件、第三者の介入があって間違いないね。まぁ超弩級魔物クラスが呪術になるなんてこと、偶然できるにはちょっと無理があるしね」
殺鬼の言う通り、仮にも超弩級魔物クラス、守護獣と奉られるだけあって、知性もそこらへんの一般人よりも高い。
そんな魔物が、偶然呪術に罹るなんてことがあるのだろうか。
「ありえねぇよなぁ…………」
「うん。それにちょっとやばい情報も混ざってたしね」
「やばい情報だと?」
「うん。この件に関わってる第三者の目星はついてるんだよね。ウロボロスっていう闇組織なんだけど、聞いたことある?」
「ああ。この世に存在する闇組織の中でもかなり質の悪いって評判の奴らだろ?」
戀の言葉に、殺鬼は頷く。
「そのウロボロスがさ、近々ベルクリオ学園を襲撃するっていう噂が流れててね」
「ウロボロスがベルクリオ学園を襲撃だと? いったい何を…………まさか」
戀が何か心当たりがあったのか、眉間にしわを寄せる。
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