闇夜の世界と消滅者
二十一話 迷宮探検 1 幻狼シャード
ティナたちの話し合いが終わり、戀と鈴音、イルディーナは早速迷宮《草薙》まで行くこととにした。
「迷宮までは歩いてくのか?」
戀が問うと、イルディーナは呆れたように溜息をつき、戀に向きなおった。
「歩いても到着はできなくはないですが、二日は覚悟したほうがいいですよ?」
「兄様。今回は馬車で行きます」
馬車と聞いて戀が顔を顰める。
イルディーナはなぜ戀が嫌がっているのか理解できなかったが、それに心当たりのある鈴音はイルディーナにそっと耳打ちする。
「兄様は馬車に乗ったことがありません。馬車に乗ろうとすると馬が怯えて動かなくなるんですよ」
その説明を聞いてイルディーナは思わず納得した。
馬はただの馬ではなく、魔力を持って生まれてくる馬だ。当然、普通の馬よりも感覚が鋭いし、危機察知能力も高い。戀が持つプレッシャーを直に浴びて、普通にしていられるはずがない。
「確かにそれでは馬には乗れませんが………それならばどうやって《草薙》まで行くのですか?」
馬に乗れないのでは迷宮までたどり着くのに何日かかるか分かったものではない。
それは戀もわかっているようで、難しい顔で悩んでいる。
すると鈴音が戀に助け舟を出す。
「兄様。兄様が使役されている魔物を出してみてはどうでしょうか」
………この場合は泥船だったかもしれない。
イルディーナは戀の顔を見て驚愕の表情を浮かべる。
魔物を使役している、所謂『ビーストテイマー』と呼ばれる者は存在する。しかし、その大抵が小型魔物クラスである。ここから迷宮まで移動でき、尚且つ自分を含めた三人を乗せて移動できるほどのビーストテイマーは存在しない。いるとしても天空都市ハーピッドを治める大天魔ウィルガルトスの超大型魔物クラスのドラゴマギアと呼ばれる竜種だけだろう。
「あいつか………確かに三人程度なら運べそうだが、少し遠いな。呼び出せるか?」
使い魔を呼び出す際、必要な魔力は主人と使い魔の距離によって変化する。
「まあいい、呼び出してみるか。《コール》」
戀が手をかざし、魔法陣を形成していく。
「《幻狼シャード、われの呼びかけに応じ、出現せよ》」
戀がそう唱えると、魔法陣が紫色に光り始めた。
「ワオォォォォォォォン!!」
魔法陣から獣の叫び声が聞こえた。イルディーナは咄嗟に腰の『リゼール』に手を伸ばしたが、それを鈴音に止められる。
鈴音は「大丈夫ですから」とイルディーナに諭すように小さく呟き、イルディーナの手を握る。
いきなり手を握られたことに驚きながらも、イルディーナは警戒を解いて、戀の行動を見守っている。
パリィン、と魔法陣が砕け散った。
イルディーナは戀を見やり、そして目を見開く。
戀が立っていた場所には、体調1メートル半はあるであろう大きな狼がいた。
その狼はこちらをじっと見つめている。
戀はイルディーナを庇うように立ち、口を開く。
「シャード、こいつは俺の仲間だ。だから警戒しなくてもいい」
戀がそういうと、シャードと呼ばれた狼は戀を見やり
「久しいな、我が主よ。急に呼び出されたかと思えば、見知らぬ女子がいるではないか。警戒するなというほうが無理であろう」
「狼がしゃべった!?」
イルディーナの素っ頓狂な声に、シャードはじろりと睨み、
「我をそこら辺の駄犬と一緒にするな。我はこれでも幻狼王の血を引くものだぞ」
と威嚇した。
「迷宮までは歩いてくのか?」
戀が問うと、イルディーナは呆れたように溜息をつき、戀に向きなおった。
「歩いても到着はできなくはないですが、二日は覚悟したほうがいいですよ?」
「兄様。今回は馬車で行きます」
馬車と聞いて戀が顔を顰める。
イルディーナはなぜ戀が嫌がっているのか理解できなかったが、それに心当たりのある鈴音はイルディーナにそっと耳打ちする。
「兄様は馬車に乗ったことがありません。馬車に乗ろうとすると馬が怯えて動かなくなるんですよ」
その説明を聞いてイルディーナは思わず納得した。
馬はただの馬ではなく、魔力を持って生まれてくる馬だ。当然、普通の馬よりも感覚が鋭いし、危機察知能力も高い。戀が持つプレッシャーを直に浴びて、普通にしていられるはずがない。
「確かにそれでは馬には乗れませんが………それならばどうやって《草薙》まで行くのですか?」
馬に乗れないのでは迷宮までたどり着くのに何日かかるか分かったものではない。
それは戀もわかっているようで、難しい顔で悩んでいる。
すると鈴音が戀に助け舟を出す。
「兄様。兄様が使役されている魔物を出してみてはどうでしょうか」
………この場合は泥船だったかもしれない。
イルディーナは戀の顔を見て驚愕の表情を浮かべる。
魔物を使役している、所謂『ビーストテイマー』と呼ばれる者は存在する。しかし、その大抵が小型魔物クラスである。ここから迷宮まで移動でき、尚且つ自分を含めた三人を乗せて移動できるほどのビーストテイマーは存在しない。いるとしても天空都市ハーピッドを治める大天魔ウィルガルトスの超大型魔物クラスのドラゴマギアと呼ばれる竜種だけだろう。
「あいつか………確かに三人程度なら運べそうだが、少し遠いな。呼び出せるか?」
使い魔を呼び出す際、必要な魔力は主人と使い魔の距離によって変化する。
「まあいい、呼び出してみるか。《コール》」
戀が手をかざし、魔法陣を形成していく。
「《幻狼シャード、われの呼びかけに応じ、出現せよ》」
戀がそう唱えると、魔法陣が紫色に光り始めた。
「ワオォォォォォォォン!!」
魔法陣から獣の叫び声が聞こえた。イルディーナは咄嗟に腰の『リゼール』に手を伸ばしたが、それを鈴音に止められる。
鈴音は「大丈夫ですから」とイルディーナに諭すように小さく呟き、イルディーナの手を握る。
いきなり手を握られたことに驚きながらも、イルディーナは警戒を解いて、戀の行動を見守っている。
パリィン、と魔法陣が砕け散った。
イルディーナは戀を見やり、そして目を見開く。
戀が立っていた場所には、体調1メートル半はあるであろう大きな狼がいた。
その狼はこちらをじっと見つめている。
戀はイルディーナを庇うように立ち、口を開く。
「シャード、こいつは俺の仲間だ。だから警戒しなくてもいい」
戀がそういうと、シャードと呼ばれた狼は戀を見やり
「久しいな、我が主よ。急に呼び出されたかと思えば、見知らぬ女子がいるではないか。警戒するなというほうが無理であろう」
「狼がしゃべった!?」
イルディーナの素っ頓狂な声に、シャードはじろりと睨み、
「我をそこら辺の駄犬と一緒にするな。我はこれでも幻狼王の血を引くものだぞ」
と威嚇した。
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