二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

異世界越しの縁

 くそ……

 俺は自分の弱さを呪った。

 現実世界の古山章三。
 あいつのステータスはとっくにカンストに達している。昔の俺では到底適う相手ではなかった。

 あいつを残して、俺だけが異世界に来てしまった。
 いま、古山があの世界でなにをしているのか。考えるだけでもおぞましい。
 しかも俺の父親の命すら、奴に握られたままだ。

 くっそ……

 戻りたい。いますぐあの世界に。

 けれど、いまや俺のHPは見るも無惨な数値。
 このまま奴に立ち向かっても絶対に勝てない。

 ただし、ステータスそのものは、これであいつにも並ぶことができた。我ながら、このチート級の成長っぷりがありがたい。

 倒すしかない。もうひとりの大魔王を。

 俺が考え込んでいると、佐久間が気遣うような声を発した。

「どうした、険しい顔して」

「ん? あっーと……」

 すこし悩んだが、彼らにはすべて話すことにした。教えたらいけない内容でもないはずだ。

 俺が長話をしている間、みんな黙りこくり、一言も発さなかった。

 向こうで佐久間祐司が死んだこと。そして高城絵美の最期。
 長い長い話のなかで、一部涙する者もいた。
 そして最後まで話し終えると、数分の沈黙を経て、佐久間が決然とした瞳を俺に向けた。

「……なら、俺たちにも協力させてくれないか」

「……え?」

 さすがに驚きを隠せなかった。俺はあんぐり口を開けながら、続いて発せられる佐久間の話に耳を傾けた。

「別世界ではあるが、古山をあそこまで狂わせたのには、俺たちにも責任がある。なにより、俺たちは《リベリオン》だからな」

 リベリオンーーいじめっ子に仕返しをし、いじめをなくす組織。

 なんとも皮肉な話だ。いまではすっかりいじめっ子となってしまった古山を、リベリオンの連中が退治するということか。

 だが、ありがたい。
 敵は古山章三だけでなく、二百人近くの構成員までいるのだから。

 そこまで思考を巡らせたとき、古山がきょとんとした顔で訊ねてきた。

「……なんだ。なぜ笑ってる」

「へ?」

「おまえいま、確実に笑ってたぞ」

「いや、まあな……」

 かつて俺が願った、佐久間との共闘。もう絶対に無理だと思っていたのに、不思議な縁もあるものだ。

 ーーありがとう。おまえと出会ってよかったよ。

 俺は二人の佐久間へ感謝の念を抱きながら、佐久間と固い握手をかわした。

「二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く