二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~
【転章】 高城絵美4
「はあ……」
ぽつりと、私は重たい息を吐いた。
さきほどの自分自身との会話。
異世界の「高城絵美」と対話することで、自分の気持ちを整理しようと思っていた。
すなわち、吉岡くんへの想いをどうするか。このままぐいぐいアタックするか、あるいはもう辞めてしまうか。
本当は諦めたくない。彼と交際したい。
だけど彼には彩坂という運命の相手がいる。そこに私が介入できる余地はない。そりゃあ、一緒に警察署に侵入したり、ちょっとドラマティックな出来事はあった。けれどたぶん、あの二人にはそれ以上のなにかがある。
「はあ……」
もう一度、重厚なため息。
屋上の柵に捕まり、眼下を見下ろす。こっちの世界もテスト期間中のようで、せっせと帰宅する生徒が目立つ。
あのなかに、もしかしたらカップルもいるのかな……
そう考えると、ぎゅっと胸が締め付けられる。
たぶん、この世界の高城絵美は恋の苦しみに耐えられなかったのだ。だからいじめという手段に出た。
それがいつの間にか「目的」と「手段」がすり替わり、彩坂への憎悪を溜めていき、ただのいじめっ子になり果ててしまった。それが手に取るようにわかる。
そこまで考えてふっと笑ってしまった。
なんて馬鹿馬鹿しい。私はまだいじめっ子の思考から抜け出せていない。こんなんじゃきっと吉岡くんも振り向いてくれない。
いじめの理由なんて単純だ。
そのターゲットが、気に入るか、気に入らないか。ただそれだけ。そこに特別な理由なんてないし、私も先日まではそこまで深く考えていじめをしていなかった。
でも、人の気持ちを知ってしまったいまは。
自分自身も虐げられ、殺されかけた経験もしたいまは。
三度目のため息を吐き、私は空を見上げた。
自分もさんざん人を傷つけてきたのだ。だから今度は傷つけられて当たり前。この上吉岡くんを求めるなんて、きっとただの傲慢だ。
心のなかでひとつの決断をくだし、私はくるっと身を翻した。
教室にはまだ彩坂さんがいるかもしれない。
実際にいじめをしたのは私ではないけれど、私には謝る義務があるだろう。そして彼女に、吉岡くんのすべてを任せよう。
そう思って歩き出そうとしたときーー
「こんなところにいたのか」
思わず怖ぞ気が走った。聞き慣れない声が響いたからだ。
さっと周囲を見渡すと、五人の男子生徒がニヤニヤ笑いを浮かべながら私を囲んでいた。彼ら全員の頭上にステータスが浮かんでいる。
「そ、そんな……」
物思いに耽るあまりにすっかり油断してしまっていた。いま私は奴らのターゲットになっているのだと。
「やめて……」
と私はかすれた声を発した。
「そうやって人を傷つけても、あとでまた後悔することになる……だから……」
「っは! おいおい、なんだそのでっかいブーメランはよ!」
「おまえが言うな! この犯罪者が!」
犯罪者……
数秒遅れて理解した。
私たちのようないじめっ子を、彼らは《犯罪者》と呼んでいるのだ。
そう言われるとなにも反論できない。
私のやってきたことはたしかに重罪だ。「ごめん」と一言謝ったところで済まされる問題ではない。
まるで心に重たい雲が覆い被さっていくようだった。抵抗する気力さえも失われていく。
「さあ」
とリベリオンの一人が言った。
「復讐の時間だ。高城絵美、貴様には死んでもらう」
瞬間。
私の意識は暗転した。
ぽつりと、私は重たい息を吐いた。
さきほどの自分自身との会話。
異世界の「高城絵美」と対話することで、自分の気持ちを整理しようと思っていた。
すなわち、吉岡くんへの想いをどうするか。このままぐいぐいアタックするか、あるいはもう辞めてしまうか。
本当は諦めたくない。彼と交際したい。
だけど彼には彩坂という運命の相手がいる。そこに私が介入できる余地はない。そりゃあ、一緒に警察署に侵入したり、ちょっとドラマティックな出来事はあった。けれどたぶん、あの二人にはそれ以上のなにかがある。
「はあ……」
もう一度、重厚なため息。
屋上の柵に捕まり、眼下を見下ろす。こっちの世界もテスト期間中のようで、せっせと帰宅する生徒が目立つ。
あのなかに、もしかしたらカップルもいるのかな……
そう考えると、ぎゅっと胸が締め付けられる。
たぶん、この世界の高城絵美は恋の苦しみに耐えられなかったのだ。だからいじめという手段に出た。
それがいつの間にか「目的」と「手段」がすり替わり、彩坂への憎悪を溜めていき、ただのいじめっ子になり果ててしまった。それが手に取るようにわかる。
そこまで考えてふっと笑ってしまった。
なんて馬鹿馬鹿しい。私はまだいじめっ子の思考から抜け出せていない。こんなんじゃきっと吉岡くんも振り向いてくれない。
いじめの理由なんて単純だ。
そのターゲットが、気に入るか、気に入らないか。ただそれだけ。そこに特別な理由なんてないし、私も先日まではそこまで深く考えていじめをしていなかった。
でも、人の気持ちを知ってしまったいまは。
自分自身も虐げられ、殺されかけた経験もしたいまは。
三度目のため息を吐き、私は空を見上げた。
自分もさんざん人を傷つけてきたのだ。だから今度は傷つけられて当たり前。この上吉岡くんを求めるなんて、きっとただの傲慢だ。
心のなかでひとつの決断をくだし、私はくるっと身を翻した。
教室にはまだ彩坂さんがいるかもしれない。
実際にいじめをしたのは私ではないけれど、私には謝る義務があるだろう。そして彼女に、吉岡くんのすべてを任せよう。
そう思って歩き出そうとしたときーー
「こんなところにいたのか」
思わず怖ぞ気が走った。聞き慣れない声が響いたからだ。
さっと周囲を見渡すと、五人の男子生徒がニヤニヤ笑いを浮かべながら私を囲んでいた。彼ら全員の頭上にステータスが浮かんでいる。
「そ、そんな……」
物思いに耽るあまりにすっかり油断してしまっていた。いま私は奴らのターゲットになっているのだと。
「やめて……」
と私はかすれた声を発した。
「そうやって人を傷つけても、あとでまた後悔することになる……だから……」
「っは! おいおい、なんだそのでっかいブーメランはよ!」
「おまえが言うな! この犯罪者が!」
犯罪者……
数秒遅れて理解した。
私たちのようないじめっ子を、彼らは《犯罪者》と呼んでいるのだ。
そう言われるとなにも反論できない。
私のやってきたことはたしかに重罪だ。「ごめん」と一言謝ったところで済まされる問題ではない。
まるで心に重たい雲が覆い被さっていくようだった。抵抗する気力さえも失われていく。
「さあ」
とリベリオンの一人が言った。
「復讐の時間だ。高城絵美、貴様には死んでもらう」
瞬間。
私の意識は暗転した。
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