二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

俺が最強たる理由

「くそーー!」

 俺は後方に飛び退き、髮一発で敵の攻撃を避けきった。

 ザクッという嫌な斬撃音ともに、床に穴が抉られる。反して剣のほうはまだピンピンしている。

 思わず鳥肌が立った。あんな攻撃、一撃でも喰らったら即死だ。

 俺は負けじと右腕を突き出し、即座に闇の可視放射を放った。それは闇の残滓を引きながら空を切り裂き、佐久間を呑み込んでいく。

 はずだった。

「はっ!」

 佐久間はかけ声とともに剣を斜め上に切りつけた。

 俺が全力で放った可視放射は、呆気なくも弾き返され、明後日の方向に飛んでいった。警察署の天井に穴が穿たれ、闇の線がいずこへと消えていく。

 天井の一部が破壊された影響で、コンクリートの屑がひらひらと落ちる。それを恍惚と眺めながら、佐久間は得意げに俺を見やった。 

「いくらステータスに開きがあるといっても、これが経験の差だよ。君は俺に勝てない」

 強え……
 思わずひとりごちた。

 こんな戦い方があるなんて思いもしなかった。ただ可視放射をぶっ放していた俺とはなにもかもが違う。

 突如。
 軽快なサウンドとともに、俺の視界上部にテキストメッセージが表示された。

《レベルが上がりました。
 吉岡勇樹 レベル5


 HP 59/87 MP 26/170
 MA 3000 MD 700


 いまの魔法を使用したことで経験値が上昇したようだ。高城と比べてずいぶんとレベルの上がりが早い。

 しかし、だからといって何になろう。MDが上がったぶん命はより頑強になったが、それでもこの状況を打開できるほどじゃない。

 そのとき、メッセージの最後に、いままでなかった表示があることに気づいた。


 スキル 闇の双剣を修得しました》


 闇の双剣?
 なんだこれは?
 しかもスキルとはどういうことだ。

 スキルなる能力があることは聞かされていたが、レベルが高くならないと修得できないから、しばらく気にしなくていいと教わっていたのにーー

 そのとき、以前彩坂から言われた言葉を思い出した。

 ーー吉岡くんは最強の魔法使いなんだよーー

 それとこれとが関係するかはわからない。
 だがこのピンチを切り抜けるにはこの新しい力を使うしか……

 瞬間。

「おおおっ!」

 大声を張りながら、佐久間が再び突進してくる。床に落ちたコンクリートの破片が、ざらついた音ともに周囲に舞い上がる。

 俺は静かに目を閉じた。

 さっきは避けられたが、また同じことができる保証はない。なら、俺も全力以上の力でもって立ち向かうしかない。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品