二つの異世界で努力無双 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いに成り上がってました~

魔法少女どま子

底辺のくせに高レベルとはけしからん

 教室に入って、まず目に入ったものがある。


 佐久間祐司 レベル30
 HP 124/124 MP 150/150
 MA 1500 MD 450


 やはりだ。ステータスが見える。
 それはつまり、俺のクラスにも能力者が存在していたことを意味する。

 ステータスの浮かんだ方向に目を向けると、ひとりの男子生徒が眠そうに席についていたーーのだが、教室に入った俺を見るなり、その表情が一気に固まった。当然、彼にも俺のステータスが見えているはずだ。

 佐久間祐司。
 たしかスクールカーストの底辺に生息する男子生徒だ。
 黒い髪を首元まで伸ばしており、細い目、細い顔が特徴的である。

 同じ底辺同士だが、彼とはろくに会話したことがない。互いに拒絶感を発していたからだ。

 思わず笑みがこぼれてくる。

 失踪事件の犯人は、きっと古山の他にも存在すると思っていた。あまりに事件範囲、および規模が大きいからだ。
 だからきっと、俺の学校に共犯者がいるかもしれないと考えていたのだが……見事に的中したようだ。

 その古山は、こっちの世界では俺のクラスメイトではないらしい。周囲を見渡しても、見覚えのある黒縁眼鏡は見当たらない。もしくは、奴の魔法によって、彼の存在自体が記憶から消されている可能性もある。

 俺は自分の席に腰を下ろした。

 佐久間とはかなり席が離れている。いまだ俺のステータスを凝視しているのか、粘っこい視線を感じるが、あえて気づかないふりをする。男同士で見つめ合う趣味はこれっぽちもない。

 ほどなくして担任の教師がやってきて、朝のホームルームを開始した。テストが近いので丹念に復習しておくようにーーという話を意識半分で聞き流しながら、俺はふと、なにかが物足りないことに気づいた。

 隣の高城絵美がいない。

 遅刻か?
 いや、高城はいじめっ子ではあれど、遅刻は滅多にしていなかった……ような気がする。

 そこまで思考が至ったとき、俺はひとつの予感を抱いた。古山率いる魔法使いに、すでに殺されているーー

 充分ありうる話だった。高城は女子生徒のリーダー的存在だ。いじめっ子としての黒い噂も何度か小耳に挟んだことがある。

 突如。

 教室の扉が勢いよく開かれ、俺の思考は一時中断された。

 入ってきた生徒の姿を見て、俺は深い安堵を覚えた。高城絵美だ。さして仲が良いわけでもないが、一応はクラスメイトだ。無事でよかった。

 教師がホームルームを中断し、高城に目を向けた。

「高城……珍しいな。遅刻か」
「…………」

 女子生徒のリーダーは、しかし、真っ青な表情でなにも答えない。激しく息を切らしており、まるで何かから逃げてきたかのようだ。

「おい……どうした、具合悪いのか?」
「大、丈夫……」

 高城は声にならない声を発しながら、俺の隣に腰を落ち着けた。それを見た教師はしばらく目をぱちくりさせていたが、気を取り直したようにホームルームを再開した。

 俺は気づいていた。
 高城を見ている佐久間祐司が、意味ありげに微笑んでいたのを。

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