東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

魔怪負傀vs死欲



「もう!ちゃんとやってよ!」
『はい...すいません...』

二人のダラケきった姿を見かねたアリュレルトは怒ってしまい、能力を使って二人から怠惰を消し去ってしまった。
そして、ただいま説教タイムとなっている。

「ほらぁ!終作にぃを倒しに行こう!!」
『はぁい...』
「そうか。なら俺は帰る」
「は?マジで言ってるの?てか帰れるの?」
「まあね。ああ、それとアルマ。魔王の集会が近々あるぞ。俺は出ないが」

訛とアリュレルトはその言葉の意味を理解できない。だが、魔王の集会という単語が出た時、アルマの表情は少々青ざめていた。

「ま、マジで言ってんのか...?」
「マジだ。それじゃあ縁があったらまた会おうぜ?」

ピッと指を振り魔法陣がダーマの足元に現れると魔法陣が光り、ダーマを包み込むとその場から消え去った。

「なんというか...不思議な男やったな〜」
「ねぇねぇ魔王の集会って何〜?」
「......悪いが今は話せないな。その時になったら話すよ」

アルマの深刻な表情に二人は首をかしげることしかできなかった。

「さぁてと...終作を廃人にすんぞ」
「それはいいんやけど....何処におるかわ。わしは知らんで?」
「そのことなんだけど。さっきからこの城の何処かで戦ってる音が聞こえるよ」
「ということは......そこにいる可能性があるな。詳しく場所を特定できるか?」

待って、といい目を閉じ耳に意識を集中させる。
龍人の聴力なら正確に場所を特定できるだろう。ウンウン...と唸ること数秒、目を開きアルマが立っている床を指差した。

「真下!」
「近いなおい!?」
「いいやないか。楽やん?」
「そうだけどよ...まあいいか...」

アルマは跪いて自分が立っている床をコンコンと叩き、音を確かめるように他の部分もコンコンと叩いている。
その行動に訛は不思議そうな顔をする。何回か叩くと目的の場所が見つかったのか立ち上がる。そして、拳に魔力を込めていく。

「何するんや?」
「ん?床をぶち抜く」
「ほぉ.........はい!?」
「アリュレルト、訛!準備はいいか?」
「あたしはいいよ〜!」
「わ、わしはまだダメや」
「いっくぞ〜!」

容赦なく床をぶん殴り、三人が立っていた床をぶち抜いた。当然、床に穴が開けば重力に引っ張られる。そう。三人は重力に逆らうことなく下の階に自由落下。

「ダメって言うたやんかぁぁぁぁ!?」

叫びながら落ちていく訛。そして、楽しそうにキャッキャッと笑うアリュレルトと厭らしい笑みで笑うアルマの二人。
だが、下の階と言ってもすぐ下に部屋があるわけではなく城の入り口ホールのように広い大広間であるため、長ぁい自由落下が続いた。
下の階の全貌が見えるとアルマのツノから憤怒の炎が噴き出した。
そこにいたのは厭らしい笑みを浮かべて魔晴と磔と戦う終始終作がいた。

「終作ぅぅぅぅ!!!」

その声に気付いた終作は不気味に笑い、アルマに視線を移した。
落下の力と全体重をかけた拳が終作に放たれるが終作には当たらずアルマはその場に何事もなかったように立っていた。

「な、なんで俺は普通に立ってるんだ!?」
「フヒ!フヒヒヒ!やぁっと会えたね〜?アルマく〜ん?」
「てめぇ...!今すぐ廃人にしてやるよ!!」
「待てアルマ!」

今にも攻撃を仕掛けそうなアルマを止める磔。その言葉に怒りを覚えるが少し冷静になり出そうになった拳を抑える。

「なんで止めるんだ......?」
「今の終作はいつもの終作じゃない...」
「どうゆうことだ?」
「まじかいな......終作の奴...魔怪負傀発動させとるやないか...」

うまく着地をすることができた訛は終作の状態を見て半ば呆れた様子で言った。

「負け負け?」
「魔怪負傀や。七つの大罪を周りの生き物から奪い取り込んだ姿。まあいわゆる本気やな」
「珍しいな...あいつが本気とか」
「見てるだけじゃつまんないだろぉ?ああ、それとアルマ君の彼女からも根こそぎ嫉妬を奪わせてもらったよ〜ん!」

その言葉にアルマの怒りの炎はさらに火力をあげる。

「パルスィから嫉妬を奪ったのか!?」
「そうそう。奪って数分後にパタッ!って倒れたけど...まあ死んでーーーーグヘッ!?」

魔力を込めた拳が終作の腹にめり込み、くの字に体が曲がると壁に向かって殴り飛ばされた。
その光景に訛はひゅぅと口笛を吹き、それ以外のその場にいた者は目を見開き体が固まった。

「てめぇ...!何やってくれてんだ!!」
「そ、そんな怒るなよ〜?ちょぉぉっと嫉妬を奪っただーーーーー危な!?」

話の途中でも容赦なくアルマは終作に襲いかかる。

「お前は重罪を犯した!!よって死に値する!」
「な、なんだってんだよ〜?嫉妬奪っただけだろ?」
「パルスィから嫉妬を全部奪ったんだろ!?あいつは嫉妬心の塊だ!嫉妬を根こそぎ奪われたらどうなると思ってんだ!!」

怒り狂うアルマの声に終作は憤怒の炎に油を注ぐかの如くニンマリと厭らしく笑うと狂気的な笑い声をあげた。

「アヒャヒャヒャ!!うん!死ぬかもな!」
「下衆野郎が....!!訛ぃぃ!!」
「なんやぁ〜?」
「全員城の外に連れ出せ!!」
「はいよぉ〜ほな。行きまっか」

訛に言われ、外に行こうとする者は誰一人としていなかった。磔は自分の武器を構え、魔晴は詠唱をしている。アリュレルトとレフィーも戦闘態勢に入っていた。
それに気づいてアルマは全員の前に薄く黒い壁のような物を張った。磔は弾幕を撃つが触れた途端に灰となった。
だが、それでもアリュレルトの力の前では意味がなかった。能力を使うと一瞬でその壁は消滅した。
壁が消えると磔はアルマに怒鳴りつける。

「おい!どうゆうつもりだアルマ!」
「いいから出ろ。お前らを巻き込まない保証はない」
「お前ごときにやられるほど、こっちは弱くないんだよ!」
「チッ...!知らねえからな.......」

今も下衆な笑みを浮かべる終作に一歩ずつ近づき、ある程度の距離まで来るとアルマはポツリと呟いた。

「死欲...開放...」

シュン......と音を立ててアルマの憤怒の炎が燃え尽きた。終作は疑問を投げかけようとするが、アルマから発せられるピリピリと感じさせる嫌な気配に言葉を飲み込んだ。
炎が燃え尽きたツノからまた炎が現れた。ただ、今度の色は怠惰の黒でも、強欲の青でも、嫉妬の緑でもない。黒よりも深く...この世の色とは思えないほど暗く澄んだ綺麗とも汚らしいとも言えない不思議な色であった。
ずっとその炎を見続ければ魂が飲み込まれてしまいそうな引力のような謎の力を放つその色の象徴とも言える感情は......



ーーーー《死欲》ーーーー



周りの空気が淀み、建物の建材は石だろうが鉄だろうが大理石だろうが関係なく腐敗を始め、灰と化していく。空気に触れた磔と魔晴体に異変が起き始める。傷が出来ている箇所から体が朽ちていくのだ。
急いで傷を治そうとするが魔法も能力も使えなかった。訛でさえも能力を封じられた。
アリュレルトとレフィーは龍神力のおかげで磔達のように影響を受けなかった。
この現象はアルマの周囲だけで起こっている。その射程範囲はウイルスが侵食するように徐々に...徐々に...広がる。これが死欲開放の力。
アリュレルトは急いで自分達の周りの淀んだ空気を消滅させ、レフィーは磔と魔晴の傷をどうにか治していた。
アルマの死欲開放の力に魔晴は驚愕していた。

「す、すごい力だ...」
「あいつ死欲開放って言ってたよな?そもそも死欲ってなんだよ」
「簡単に説明すると死を欲する感情やな。死にたがりともいうな」
「死にたがり......」

それにしても...呟いた訛はアルマを見つめ、額から冷や汗を垂らす。

「いやはやまったく恐ろしい感情を操るの〜わしらは能力を消し去られてすんどるが他の意志が弱い生き物だったら死んでたと思うで?」
「この空気に触れただけでか!?」
「今のアルマは周りの生き物の死欲を昂らせて自由に死に至らしめることができる...ということかい?」
「半分あたりで半分間違いだ...」

訛の代わりに死欲を開放し、服装も雰囲気も変わったアルマが答える。
武装ズボンは禍々しい色となり、タンクトップは真っ黒く染まり紅い十字架が浮かんでいた。ガントレットは赤黒く染まり右腕全部を包み込んでいた。

「俺は確かに死欲を昂らせるがそれはただのきっかけだ。死にたいと思った瞬間に昂った死欲に細胞が押し潰されて灰と化していく......お前らは死を一度も望んだことがないし、望まねえだろ?」
「当たり前だ!」
「なら...さっさと離れてろ...」

パチン!と指を鳴らし、自分の周りの床から大量の武器を生成した。

「武装 感情武具」
「お〜怖い怖い...!ウヒヒヒ...!」
「その余裕そうな顔をぶち壊してやる」
「やれるものならやってみなよ〜?アルマく〜ん!」

死欲を開放した姿を見ても一切の恐怖もなく、ただ相手を嘲笑い弄ぶことしかこの男は考えていない。だが、本気を出さないとただではすまない......それは理解していた。

「死欲 アルマーニイレイザー」

黒よりも深い色をしたレーザーをアルマは放った。
終作は厭らしく笑い、アルマの攻撃を避けずに直撃でもするかのように突っ立っていた。目の前までに迫るレーザーは終作に直撃ーーーーせず。彼の背後にある壁が壊れていた。

「さっきから何が起こってんだ?」
「なぁにが起こってるでしょ〜か!」
「どうせ...お前の能力だろうが」
「つまらないね〜...?アヒャヒャ!」

スゥ...と次元の狭間に移動し、終作は背後に立っていた。
回し蹴りを放つアルマだが、また蹴ろうと上げた足は地面に着き平然と立っていた。

「攻撃したいけどできないって辛いよね?ね?」
「煽るの好きだな。本当にお前は」
「楽しいじゃ〜ん?」
「ああそうかよ。ならちょいと本気を出させてもらおうかね。死欲 逃れられない運命」

ごく普通に小さい弾幕を終作に向けて全力投球。まっすぐストレートに飛んでいくと、また嘲笑い、迫っていた弾幕は消えた。だが、消えたはずの弾幕は終作の背後に直撃した。

「グヘッ!?な、なんで...?」
「お前、結果を変えて避けただけろ。なら当たるっつーの」
「追尾式か!面白いことするね〜...」
「お前ほどじゃねえよトリックスター」
「お褒めに預かり光栄だね。怠惰の魔王様?」

二人はニヤリと不気味に笑った。



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