東方魔人黙示録外伝〜東方大罪録〜

怠惰のあるま

ゲームの始まり


「あの野郎...!絶対に許さねぇ...!!」

憤怒の感情を垂れ流し、地上への道を進む男がいた。
赤い炎を頭から生える二対のツノから噴き出し、バチバチと口から雷を纏った炎が溢れる。
まるで返り血を浴びたデザインの白いタンクトップに色々な武器を仕込んだ頑丈なズボン。肘から手の甲を守る鉄のガントレットを左だけにつけていた。
名は桐月アルマ。魔界を治めてた魔王であるが今は地底で魔人として生きている。

「どうして俺がこんな目に会わなきゃいけないんだ...!」

アルマが怒っている理由は、ついさっきの出来事である。




△▼△




今日も今日とて地底で橋姫と呼ばれる種族である女の子。水橋パルスィと一緒にいたアルマ。彼女といることが生きている中での一番の幸せらしい。
だが、この二人が二人っきりになる時は必ずと言っていいほどに何かが起きるのだ。
そう。今回も二人は邪魔をされるのだった。

「いや〜!相変わらずお暑いですな〜?」
「げっ!?」

二人の目の前に現れたのは白いパーカーに黒いカーゴパンツ。しかも、どちらも長袖という暑そうな格好した男。終始終作。
厭らしく笑うその顔をアルマは苦手な奴が来たと嫌そうに思った。

「嫌がるなよ〜!俺とお前の仲だろぉ?」
「勝手に心を読むな!!」
「どうせさとりに毎日読まれてるだろ?少しぐらい気にするなって!」
「気にするわ!!」

はぁ...はぁ...と荒い呼吸をするアルマを宥めるように頭に手を置いてポンポンとした。
それが火に油を注ぐようなものだった。憤怒の炎に油を注がれ、アルマのツノから赤い炎が噴き出した。

「感情解放!憤怒!」
「お?お?怒ってる?怒ってる?」
「うるせえ!!今からてめえを次元の果てまでぶっ飛ばしてやる!!」
「お〜怖っ!ヒヒヒ!」
「憤怒 憎悪の怒号!!」

勇儀さんのような怒号を放った。
大気を震わせる声は聞いた者の足をすくませ恐怖を与える威圧Maxだった。まあ、それでも始祖神である終作にとっては怒り喚いているようにしか見えないだろう。
煽るように終作は厭らしい笑いを続ける。

「イラつく!!憤怒 怒りと憎しみの輪廻!」

スペルカードをクシャクシャに握り潰し、終作を挟むように血のように真っ赤に染まる巨大な鉄球とまるで黒鉄のように頑丈そうな真っ黒に染まる巨大な鉄球を空中に召喚した。

「これは痛そう!グヒヒ!」
「余裕だなおい?」
「そりゃあもう!簡単に避け...て...あり?」
「逃すわけないじゃない...邪魔ばっかりして...妬ましい...!!」

気づけば右目から嫉妬に燃える緑の炎が漏れているパルスィが真っ黒いオーラを放ち立っていた。
終作が動けないでいるのは見えない何かに掴まれていたためだ。

「嫉妬 緑色の目をした見えない怪物...!」
「ありり?絶体絶命?」
「その口...今黙らせてやるよ...」
「あ、待って!?ちょっとターーー」

命乞いを聴き終える前に鉄球は緑眼の怪物の手ごと潰した。断末魔の叫びが地底に響いた。

「と、思うじゃん?そう簡単にはいかないのよ〜?」

バッと後ろを振り向くとニコニコと厭らしい笑みを浮かべる終作が手を振って立っていた。今まさに目の前で潰したはずの彼が無傷でそこにいたが、二人は想定内のように冷静だった。

「まあ...一度会えば何度も出てくるしな」
「本当にしつこい....」
「え?俺ってG扱い!?」
「なら駆除してやるよ!!憤怒 雷神と炎神の怒り!」

雷と炎を纏う弾幕を大量に出現させた。
その数は容易に視界を埋める量だった。だが、それでも終作の顔は曇ることはない。さらに煽るように笑みを浮かべる。
その笑みにさらに憤怒の炎を燃やし、終作に指をビシッと向けると合図のように弾幕が終作に集中砲火。避ける様子もなくゴソゴソとパーカーについてるポケットに手を入れて何かを取り出した。

「反射 乱反射ダイアモンド」

迫る弾幕の雨に取り出したダイアモンドをぶつけた。すると、キン!とダイアモンドにぶつかった弾幕が反射し別の弾幕とぶつかり相殺した。
その後もキン!キンキン!と反射する音が続きダイアモンドに触れる弾幕を全て反射し、他の弾幕を相殺させていく。結果、終作に被弾することなくアルマの弾幕は全て相殺させられた。

「う、嘘だろ!?」
「ひひひひ!!まだまだ!全方位 360!」

驚くアルマを嘲笑い、終作のスペルカードが発動した。彼を中心とし球状の弾幕が大量に現れた。
避ける隙間もなくアルマを追い詰めるように弾幕は迫ってくる。

「どうしますか〜?アルマく〜ん?」
「イ・ラ・ツ・ク!憤怒の獄 怒りの灼熱地獄!」

3人を取り囲むように青い炎の障壁が現れた。
青い炎は意思を持っているように不規則に蠢いている。

「アッツイね〜!まるで君らの関係みたいだ」
「減らず口を!憤怒の獄 神魔アルマーニの銃殺処刑!!」
「妬ましい...!怨み念法 積怨返し!」

アルマの背後に魔法陣が出現し、大砲やミニガン、RPGなどの重火器が大量に召喚された。合図を待つように銃口は全て終作に向けられていた。
同じく終作を狙うようにパルスィの周りに青と赤の嫉妬の炎に燃える弾幕が浮いていた。

『消えろ!』

二人が同時に合図を出し、集中砲火が始まった。

「【Between observer of dimension】」

攻撃が始まったのを見計らい、終作は次元の狭間へと消えて行った。
だが、憤怒と嫉妬の炎に燃えた二人には次元へ消えようと見境なしに攻撃を続けていた。ひょこっと次元から体を出すと見つかった瞬間に集中攻撃を浴びせられた。

「おっとっと...!こりゃあやばい」

また次元の中に消えると二人の背中に軽い衝撃が走る。

「よっし!当たった!」

次元の狭間から半身だけを出した終作がニヤニヤと笑っていた。

「クソッ!」

ヤケクソに投げた弾幕が終作に当たりそうになったがスレスレで躱した。

「もう絶対に当たらないぜ?」
「黙れ!憤怒 アルマーニイレイザー!!」

赤いレーザーが赤い雷を生じながら放たれた。余裕の表情で見ている終作はまたもスレスレのところでかわす。
追加攻撃の電撃でさえもかわしていた。

「なんだってんだ!!」
「さっき俺に攻撃されたろ?お前の攻撃方法は全て見た!簡単によけれるぜ!」
「じゃあ私の攻撃も...」
「簡単にかわせる!」
「勝てねえじゃねえか!!」
「クヒヒヒヒ!ほらほら〜当ててみ〜?」

ピキッ!
何かが割れる音がした。
どうやらアルマの中で何かが壊れたようだ。赤い憤怒の炎はさらに燃え上り、火山の噴火とも呼べるレベルにまで噴出していた。
だが、目に光は灯っていない。

「道先 滅亡への道しるべ」

アルマは右手を前に出し、赤い球体状の弾幕を作った。それを終作に向けて思いっきり殴ると残像を道のように残し光速を超える速さで終作に迫る。
それでも終作は余裕の笑みを浮かべて腕を組んでいた。直撃寸前というところで終作はよける体勢に入った。
その姿を見てアルマはニヤリと笑い、指を鳴らした。
すると、弾幕は大きな爆音とともに破裂した。突然の爆発に終作でさえも驚いている。避けようとした弾幕が強烈な爆音を出したのだ。驚くのも無理はない。

「さすがのお前も驚くよな?安心しろ今の技はただの虚仮威しだ」
「びっくりするわ!!顔面スレスレで手榴弾が爆発したようなもんだぞ!?」
「全く...気づけたからいいものの...先にやるって言ってよ」
「悪いなパルスィ。あいつに嫌がらせしたくて......ん?」

終作を見たアルマはある異変に気付いた。頭がダランと下がり、俯いている状態で表情が伺えない。だが、何か恐ろしいものを感じた。

「ケクク...クヒ!クヒヒヒヒ!!」
「...なんだ?」
「イヒヒヒヒ!!いやぁぁ!嫌がらせされたのいつぶりダァ!?久々過ぎて笑いがトマらねぇよ!」

不気味すぎる笑い声にパルスィとアルマは若干というか完全に引いていた。

「ヒヒヒ......ふぅ。落ち着いた。さて、アルマ。さっきの嫌がらせ...いいじゃないか」
「そりゃあどうも」
「と、いうわけで...」

突然、終作が目の前から姿を消した。

「なんだ?」
「きゃっ!?」

小さい悲鳴が横から聞こえるとパルスィの半身が次元の狭間に飲み込まれていた。

「パルスィ!」
「アルーーーーー」

手を伸ばすが届かず完璧に次元の狭間へと飲み込まれてしまった。そして、代わりに終作が次元からヒョコッと現れ、先ほどの不気味な笑いを出して嘲笑った。

「てめぇ...!」
「いやぁ...相変わらずパルスィの事になると鋭い殺気を放つな。俺でも寒気がするぜ」
「パルスィをどこにやった!」
「そうだな。ルール説明をば...今、お前のお姫様は地上のどこかにいる。俺ももちろん今からそこに行ってお前がお姫様に近づけないように嫌がらせをするぜ」
「その前に今ここで消してやるよ!!感情解放!傲慢!」

憤怒に満ちていた雰囲気が消え、気品溢れる王族のような雰囲気に包まれた。ツノから噴き出す炎は金色に輝く炎となり、口から出ていた炎は無くなり手を纏うように炎が生じていた。
雰囲気の変化に終作はある違和感を覚えた。体が勝手に跪こうとしているのだ。

「な、なんだぁ?体が勝手に...」
「俺様の前に立つもの全ては跪く...何故なら俺は偉いからな」
「へぇ...これが傲慢...だが始祖神には効きにくいようだな」
「ああ、そうだ。俺と同じかそれ以上に傲慢な奴には効かねぇ」

それでも気を許すと跪きアルマの言うことを全て聞いてしまいそうだった。傲慢故に彼の命令は絶対になる。

「地味に恐ろしい能力だな...さて、ルールの続きだ嫌がらせを潜り抜けてお姫様を救出できればお前の勝ち。逆に明日までに見つけることが出来なければ俺の勝ちだ」
「俺が負けたらパルスィはどうなる?」
「そうだねぇ...俺の世界に連れて帰るか」

ボォ!と傲慢の炎を掻き消すように憤怒の炎がツノから噴き出した。

「フザケンナヨ.....?」
「お〜怖っ!まあこのゲームは強制参加です!」
「ブッコロス!!」
「ざーんねーん!あったりませ〜ん!それではゲームスタート!」

指をパチンと鳴らし次元の狭間へと消えて行った。

「クソがぁぁぁぁぁぁ!!」

アルマの咆哮は虚しく地底に響いた......





△▼△





そして、冒頭に戻る。
彼はその後、多少冷静に戻り参加せざるをえないゲームに不本意だが参加することにした。
だが、憤怒の炎は消えることはなかった。

「見つけたらパルスィを攫ったことを後悔するほど痛めつけてやる......!!」

こうして彼は久々の地上へと向かうのであった。


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