とある御人の日常譚
7
ノービスの町。
それがこの、別名始まりの町と呼ばれる地の正式名称だ。
そこは今、現在進行形で大量の人ごみでごった返していた。
当然だ。その人ごみは所謂プレイヤーであり、今日が待望のサービス開始の日なのだから。
その人ごみを避けた場所にまた次々と新しくログインしてくるため、町はてんやわんやしている。
そんなサービス開始のMMOならどこでも見られる光景をよそに、クラウドは一人町中の道という道を通って探検していた。
「助かったよ。ありがとう」
~♪
~♪、♪
否、正確には一人ではなく、クラウドの周りでは綿毛のようなふわふわとした光がいくつも漂っていた。
クラウドが礼を言うと、そのいくつもの光の綿毛は嬉しそうにそれぞれ跳ね回る。
火の精霊 精霊種Lv.5 適性:火属性
水の精霊 精霊種Lv.5 適性:水属性
風の精霊 精霊種Lv.4 適性:風属性
土の精霊 精霊種Lv.3 適性:土属性
光の精霊 精霊種Lv.4 適性:光属性
闇の精霊 精霊種Lv.4 適性:闇属性
彼ら綿毛の正体は、精霊。
そう。あのネットに消息不明と書かれていた精霊だった。
いきなり大本命の存在に出会ったクラウドだがしかし、初めに一度びっくりしたような顔をして以降は、まるで近所のこどもを相手にするがごとく接していた。
これには運営側も精霊側もびっくりである。クラウドはとんだ肝っ玉の持ち主であった。
ちなみに現在クラウドは精霊たちに案内され、彼らのオススメの穴場に移動中である。
そうして精霊についてのいろいろなことをのんびりと学びながらクラウドは町並みを歩いていく。
本来精霊の言葉を初めから理解出来はしないのだが、そこは最高神の加護持ち。
精霊たちが何を伝えたいのかを深くまで知れる《超直感》のスキルが遺憾無く発揮され、おまけにカウンセリング(リアル職)で培った持ち前の対人スキルでもってほぼ完璧に精霊との意思疎通ができている。
《スキル《精霊言語》を取得しました》
《※言語スキルについては後ほどヘルプにてご確認ください》
「うん?」
ど✽した✽? ✽✽か✽たい?
✽かれ✽✽った? や✽む?
「いや、大丈夫だよ」
先程まで、今にも消えてしまいそうなほどの小さな小さな音が、意味のある言葉に変わっている。
が、スキルレベルが低いため聞き取り難く、また所々の言葉がわからない。
クラウドは聞き漏らさずに注意しながら、精霊たちに導かれるままに歩を進めた。
たどり着いた場所は、彼ら曰く『秘密の場所』。
もうすっかり精霊の言葉をマスターしたクラウドは、その秘密の場所の光景を目にして思わずほうっと息が漏れた。
街並みが突然途切れ、ぽっかりと拓けた場所に一本の大樹。千年は生きているだろうその大きな姿に、ただただ圧倒される。
その大樹から溢れる木漏れ日が、この空間を柔らかく包んでいる。
大樹の枝葉は青々と生い茂り、テーブルを根元に設置してもおそらく余裕で木陰に入るほどに大きく広がっている。
種類は広葉樹の類だろうか。
だがクラウドが驚いたのはそれだけではない。
――――――精霊だ。
見渡す限りに、いくつもの淡い色をした綿毛のような光たちが思い思いに過ごしている。
それらは全て精霊と呼ばれる存在で、まさにここは精霊にとっての『秘密の場所』・・・精霊の楽園とも言える場所であった。
「これはまた、とても良い場所だねぇ」
クラウドは柔らかな笑みを浮かべて、その秘密の場所に足を踏み入れた。
その場の精霊たちはクラウドが自分たちの場所に入ってきても逃げなかった。
何か、自分たちと似た匂いがするからだ。
普通の、ただの人間とは違う。かといって、獣人のような獣の気配は強くはなく普通の人間と同じ。
竜人族かといわれたら、それも違う。精霊に敬意を払うエルフでもドワーフでもない。
もっと神秘的な・・・そう、自分たち精霊と同じ存在だ。
同じ、『神様に通じる匂い』がするのだ。
精霊とは元々は神様がこの世界に注いだ魔力という存在から産まれる存在。
なので精霊は実質、神様の子供や孫のような存在だ。
クラウドの種族は神人。人から産まれた設定ではあれど、元々は神様にそういう風習で落とされた神の子の種族。
精霊たちが恐れずにいるのはそれが要因だろうとクラウドは思っている。
さしずめ自分は、親戚のおじさんだろうか。それも母方や父方の兄弟という、一番近い位置の。
現に彼ら精霊たちは、大樹の方へ向かうクラウドの後を興味津々についてきたり、離れたところから様子を伺ったりしている。
クラウドはそんな精霊たちににこにこと挨拶を返して大樹の根元に腰を降ろし、メニューを開いた。
[ステータス] [アイテム]
[メール]新着![フレンド]
[ガチャ] [掲示板]
[ショップ] [各種設定]
開くと、一つのウインドウに八つの項目が縦2列に並んでいる。
クラウドはまず、各種設定の項目を押して一つ一つの設定を確認し、変更したりしていく。
神眼の効果はウインドウが出てくるのを頭の中に入ってくるものに変えたり、自分のHPとMPが常時見えるようにしたり。
そうしていろいろな設定を終えた後は、近寄って自分の膝や頭の上でぽんぽん跳ねて遊んでいる精霊たちをそのままにステータスを開いた。(※精霊には質量という概念がない)
クラウド 神人Lv.1
職業≪精霊術士Lv.5≫ サブ職業≪――――≫
HP 650/650
MP 1145/1150
攻撃 200
防御 300
精神 600
知力 710
器用 350
敏捷 300
運気 ∞〈カンスト〉
ステータスポイント のこり0
スキルポイント のこり6025
所持金 462,000エン
スキル
種族スキル
《神眼Lv.4》《変幻自在Lv.4》
通常スキル
《精霊術Lv.5》《杖術Lv.1》《棒術Lv.1》《体術Lv.1》《蹴りLv.1》
《火魔法Lv.1》《水魔法Lv.1》《風魔法Lv.1》《土魔法Lv.1》
《光魔法Lv.1》《闇魔法Lv.1》《召喚魔法Lv.1》《付加魔法Lv.5》
《呪魔法Lv.5》《生活魔法Lv.1》《念動魔法Lv.1》
《鍛冶Lv.1》《裁縫Lv.1》《彫金Lv.1》《調薬Lv.1》《皮革加工Lv.1》
《宝飾Lv.1》《木工Lv.1》《料理Lv.1》《錬金術Lv.1》
《採取Lv.1》《採掘Lv.1》《解体Lv.1》《平衡Lv.3》《跳躍Lv.1》
《走行Lv.1》《持久Lv.3》《HP自動回復Lv.1》《MP自動回復Lv.4》
《HP上昇Lv.1》《MP上昇Lv.3》《知力上昇Lv.1》
《MP消費削減Lv.4》《魔法才能Lv.3》《魔力操作Lv.1》
《魔力感知Lv.5》《気配感知Lv.4》《気配遮断Lv.3》《隠蔽Lv.4》
《健康Lv.1》《声Lv.1》《テイムLv.1》《魔法陣Lv.1》《占いLv.1》
《散歩Lv.4》《釣りLv.1》《読書Lv.1》《筆記Lv.1》
《マッピングLv.4》
《精霊言語Lv.10★》
称号スキル
《神気Lv.4》《超直感Lv.5》《超運》《次元の門》《神格召喚》《多才》
《危機回避Lv.1》《不殺の心得》《サポートの心得》《精霊知識》
《精霊召喚》《士気向上》
称号 神に見守られし者 最高神の加護 賢者の卵 スキルコレクター
才能に恵まれし者 死を恐れる者 殺さずの心 AIカウンセラー
精霊言語のスペシャリスト 精霊に認められた者 注目の的
クラウドはここに来るまでにいくつかスキルの発動実験を行っているうちにいつの間にかレベルが上がっており、また新しいスキルや称号が増えていた。
職業レベルが上がっているのはおそらく、視認した精霊と接触し続けていることが関係している可能性が高い。
じっと見ていると職業の上に小さくメーターが表示され、左から右に黄色のバーが伸びていて現在も伸び続けている。
それがメーターの左の端までいくとレベルが上がるのだろう。
ネットでレベルが上がらないといっていたのに上がっている。
ここまでの相違点は明らかに精霊との意識的な触れ合いが経験値取得の鍵であることに間違いはないだろう。
ここに来るまでに《付与魔法》で自分や精霊たちにステータスを上げる魔法を付与し、精霊たちは人ではないため人が通れる道を選んでくれていたとはいえ、躓きそうな足場の悪い所も通ったためバランスを保つ《平衡》や体力を使ったために《持久》のレベルも上がっている。
魔法を使ったためにMP関連のスキルも上がり、ドキドキ感を味わうために《気配遮断》や《隠蔽》を使ってコソコソしてみたり、感知系スキルで周囲を把握して景色を別の目線で見てみたりしたためそういったスキルも上がっている。
《超直感》や《神眼》は大いに活躍していたため、上がっているのも納得である。
レベルが一律でないのは、必要経験値の差だろう。
《マッピング》のスキルが上がったのは、視界の隅に表示された町の簡易マップが関係しているようだ。
どうやら、自動で埋められるこのシステム的なマップにもこのスキルが反映されるらしく、メモなどが書けるようになっているようである。
《散歩》はまあ、精霊たちに案内されていたとはいえ、のんびり気分で歩いていたので間違いなくあれは散歩だろうなとクラウドは苦笑した。
《精霊言語》パッシブ
精霊の言葉が理解でき、また精霊の言葉を話すことができる。スキルレベル上限はLv.10まで。
スキルレベル上昇により、理解難度の高い言葉も理解できる。
レベルMAX報酬:精霊との好感度が大幅上昇・スキル《知力上昇》を獲得。※スキルが被った場合は統合され、該当スキルに経験値が上乗せされます。
精霊たちと交流している途中に得たスキルだ。他の《超直感》などのスキルが言葉を覚えるのに役立ったため、あっという間にMAXになっている。
初めて見るが、スキルレベルがカンストするとスキルのレベルの横に星が付くらしい。
死を恐れる者
死を恐れ、殺し殺されることを嫌う者。この称号がある限り、自分から戦闘(討伐)で攻撃行動ができない。
称号効果:討伐時戦闘攻撃動作不可・回復行動時回復量増加・称号スキル《危機回避》を獲得。
殺さずの心
チュートリアルの戦闘で相手を殺さず慈愛を与えた者、殺さずの意志(精神力)を持って戦闘(討伐)を回避した者に贈られる称号。
称号効果:攻撃以外のステータス+50・慈善活動に大幅補正・称号スキル《不殺の心得》を獲得。
AIカウンセラー
AIの心を解きほぐした者。
称号効果:精神+50・全てのAIとの好感度が大幅上昇・称号スキル《サポートの心得》を獲得。
精霊言語のスペシャリスト
スキル《精霊言語》のレベルをMAXまで上げた者。
称号効果:知力+100・称号スキル《精霊知識》を獲得。
精霊に認められた者
精霊に好かれ、懐かれた者。一定数以上の精霊に信頼を受けている証。
称号効果:精霊との好感度が上昇しやすくなる・称号スキル《精霊召喚》を獲得。
注目の的
一定数以上の視線を好奇心やプラスの感情で一度に受けた者。
称号効果:自身にプラスの感情または好奇心を向けている者からの支持率が上昇しやすくなる・称号スキル《士気向上》を獲得。
《知力上昇》パッシブ
知力のステータスを上昇させる。上昇値はスキルレベル×5。
《危機回避》パッシブ
危機を察して回避できる。(フラグをへし折り、新しいルートを構築できる)
《不殺の心得》パッシブ
どうすれば命を奪わずに済むかがわかるようになる。
《職業レベルが上がりました》
《サポートの心得》パッシブ
回復・補助などの行動に大幅な補正が付く。
《精霊知識》パッシブ
精霊の知識を得られる。精霊の誕生・精霊の存在意義・在り方・現存する全ての精霊の種類・・・その他あらゆる精霊関連の情報を知ることができる。
《精霊召喚》アクティブ
MPを消費して精霊を召喚できる。※職業が精霊術士でない場合、召喚できる数に制限がかかります。
《士気向上》アクティブ
自身にマイナス感情以外のものを持っている者のコンディションを最高まで引き上げ、少しだが全てのステータスも上昇する。範囲による複数指定が可能。
持続時間は対象者の使用者への信頼度依存。信頼度が高ければ高いほど効果が強く出るが、懐疑的だったり最初から使用者の全てを疑う者はスキル対象外になる。
14の新しい称号とスキルの獲得。開始数十分で酷いありさまである。
普通はここまで短時間で大量の称号やスキルを得るなどありえないことなのだが、皆様憶えているだろうか?
一番最初の称号にトンデモ称号があったことを・・・。
ヒントは最高神からの称号である。
要因はそれだけではないのだが、突き詰めていけば彼にこの称号付きのVR一式を送った張本人が事の発端であり、クラウド自身は流されるままに人並みの興味でゲームを楽しもうとしているだけである。
それで職業上AIもカウンセリングしてしまったり、友人曰く枯れた思考のままに兎モンスターや精霊を近所の子供のように接したりしているのだとしても、そもそもその称号に付いた効果や特典コードがなければそのほとんどの行動に制限がかかるので、決して彼だけのせいでは断じてない。
そんなぶっ壊れたステータスを改めて全体的に見たクラウドの感想はただ一つ。
「凄いことになってるのはわかるんだけど、多過ぎて目が滑っちゃうなぁ・・・」
これに尽きた。
昔にゲームを一通りとはいっても、クラウドは重度のゲーマーではなかった。
ストーリーがあるものはストーリークリアをゴールとし、パズルゲームなどは最高難易度までは一度クリアすれば満足してそこまで。
レベルがある場合は全て上限まで上げきるもののそれだけで十分満足してしまうし、ましてや見えない数値を上げることにはあまり興味が持てなかった。
そんなライトもライト、浅く広くを地で行くぺらっぺらに軽いライトゲーマー精神の彼は、興味のままにスキルを取ったことをほんの少しだけ反省しながらゆっくりと説明を頭に入れていった。
ちなみにクラウドの辞書には反省はあっても後悔という文字はない。
クラウドは『何を選んでも後悔だけはしないように』という親の教えのもと、元から後悔しないように今まで生きてきた人間であった。
懇話休題。
頭に入れ終わったクラウドは休憩もそこそこに作業を続けた。
ステータスを閉じアイテムを開くと、全体のほぼ80%の枠がアイテムで埋まったアイテム覧が現れた。
一つ一つ見ていくと、どうやら入手順で並んでいるらしい。
[最高神からの贈り物]
[中央図書館への通行許可証(無料パス)]
[マジックポーチ]
[万能万年筆]
[魔法手帳]
[ルビー]
[サファイア]
[エメラルド]
[モルガナイト]
[シトリン]
[アメジスト]
[ラッキーホーンラビットの皮×5]
[ラッキーホーンラビットの肉×4]
[ラッキーホーンラビットの尻尾×2]
[幸運角兎の心石]
[幸運の輝石]
[赤の屑宝石×50]
[青の屑宝石×50]
[緑の屑宝石×50]
[黄の屑宝石×50]
[白の屑宝石×50]
[紫の屑宝石×50]
[初級鍛冶セット]
[屑鉱石×50]
[初級裁縫セット]
[普通の布×50]
[初級彫金セット]
[銅のインゴット×50]
[初級調薬セット]
[薬草×50]
[初級皮革加工セット]
[ホーンラビットの皮×50]
[初級宝飾セット]
[無色の屑宝石×50]
[初級木工セット]
[廃材×50]
[初級料理セット]
[ホーンラビットの肉×50]
[初級錬金術セット]
[小石×50]
[占術大全]
[散歩杖]
[釣り具一式]
[世界大全]
[筆記具]
[地図作成キット]
《職業レベルが上がりました》
中身はメニューを全部見てからにするようで、クラウドはそのままアイテム覧を閉じて次のメール画面を開いた。
ウインドウの上部には〔システムメール〕と〔フレンドメール〕というタブがあり、タブをタッチするとそれぞれのウインドウに切り替えられる仕組みである。
その中のシステムメールの方にいくつかメールが届いているが、クラウドは確認のため開いただけなのですぐにメール画面を閉じた。
[フレンド]は、フレンド登録が必須らしい。
リアルのアドレスも登録できるらしいので、とりあえずはゲーム関係者である杉原氏のアドレスをクラウドは登録しておいた。
[ガチャ]はどうやら昔遊んだよくあるオンラインゲームと同じ、ネタ衣装やらなんちゃって伝説の武器などの攻略にあまり関係のないアイテムから、召喚士が欲しがりそうな召喚モンスターの装備や召喚に必要な強そうなモンスターの心石の他、剣士職が欲しがる剣や盾、魔法職や回復職が欲しがる宝石付きの杖、その他実用性のあるものも用意されている。
生産職御用達の素材なんかも、複数がセットになってるものが配置してある。
オンラインゲームでよくみた、『初回無料!』なんてものもあった。
掲示板はそのままだ。
開いてみると、ゲームが開始して少ししか経っていないにも関わらず実に多種多様なスレが既に存在している。
総合スレはもとより、職業別だったり○○好きスレだったり。
自分のプレイを語る日記スレのようなものもあったりして、タイトルだけ流し見するだけでもなかなかに秀逸なものもあって面白く、思わずふふっと笑ってしまった。
ショップは、実に様々なものが売られている。
リアルマネーでの換金やガチャチケットなど、所謂『メタい』と呼ばれる品物が一覧に並んでいるのだ。
取得経験値を1時間の間1.5倍にするチケットや、武器防具はもちろんマジックアイテムやスキルポイント無しでスキルが覚えられるスキル石など全てのジャンルのアイテムが詰め込まれたランダムボックスなるものもあって、見ているだけでなんだか楽しくなってくる。
リアルマネーだけでなく、ゲーム内通貨用のアイテムコーナーも設置されているので、ここを覗く人も多そうだなぁとクラウドは思った。
そうして一通り確認を終えた後は、少しだけ目を休めたあとにメール画面を開いた。
新着メールは4件。
差出人は上から順に運営、GM、GM、システム。
運営メールの内容は『ようこそ!ファンタジーな剣と魔法の異世界へ!!本日は――――』といった、プレイヤー全員に送ったのであろう常套句が述べられていた。
クラウドはそれを最後まで目を通すと、次のメールを開いた。
こちらは『クラウドさんへ。このゲームを初めてくれてありがとな!』といった感じの、杉原さんからの感謝や、このゲームは本当に面白いからぜひ楽しんでくれ!という旨が書かれたものだった。
続けて送られたメールは追記のようで、何か面白かったこと楽しかったことなど、不満でもいいから思ったことがあれば教えてほしいというものだった。
あと、プレイヤー間でトラブルになった場合は連絡をよこしてほしいというようなことが最後に記載されていた。
クラウドは友人からの用件をしっかりと記憶に刻んでから、最後にシステムメールを開いた。
内容には、『ラッキーホーンラビットの経験値を受け取れます』と簡潔に書かれていて、メールの最後に[受け取る]というボタンが点滅している。
あとは持ち物の詳細を確認するだけで他は特にないので、クラウドは一切の迷いもなくぽちりと受け取りボタンを押した。
《ラッキーホーンラビットの経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
ステータスは後で確認しようと思ったクラウドは、まずこの大量のアイテムたちを整理するところから取り掛かった。
アイテムの枠の数は縦×横で10×5=50。
一つの枠には99個同じものを纏めて入れられるが、違う種類同士は纏められない。
それがおよそ46種類。まだ空いてる枠はあるがどう見ても逼迫してしまっている。
生産セットとその素材が場所を取っているのは明らかである。
アイテム枠の上限を解放することもできるにはできるが、解放条件が『種族レベルを5の倍数に上げること』である。
5、10、15とレベルを上げるごとに枠が5ずつ解放されていくのだ。
ちなみに方法はもう一つあって、課金で解放する方法である。
クラウドはライトなゲーマーだったので、課金まで手を出したことはない。
というか、課金のやり方が彼はわからない。お金の入れ方がわからないのである。
初心者に毛が生えた程度の理解度なので、おそらく彼はこのゲームでも無課金で通すことだろう。
懇話休題。
まずは装備ができるマジックポーチを腰にセットし、アイテムポーチの中に生産関係以外のものの詳細を確認しながら移していった。
[マジックポーチ] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術が施された最高級のマジックポーチ。上質な高級毛皮をなめしたもので作られているため通常のマジックバッグよりもとても頑丈。付属のベルトを使って腰に装着できるようになっている。
特殊効果:空間拡張(特大)・防水・防腐・劣化防止・時間停止
強化可能回数残り:5
[最高神からの贈り物] 分類:ゴッドアイテム 製作者:GM 品質:??
特典コードの恩恵の一つ。中には限定の品物も入っている一点もののプレゼントボックス。
[中央図書館への通行許可証(無料パス)] 分類:称号アイテム 品質:??
町の中央にある図書館への通行許可証。これがあると無料で蔵書などの閲覧が可能。
火気厳禁。図書館ではお静かに。
[万能万年筆] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術によって中のインクが切れないという不思議な万年筆。木材部分は世界樹の枝が使われており、芯材は古代竜の牙。金具部分には魔力伝導率トップクラスの稀少なミスリルを混ぜた合金が使われているためちょっとやそっとじゃ壊れない高級品。
特殊効果:防水・防腐・劣化防止・インク無限
強化可能回数残り:6
[魔法手帳] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術によって日に焼けない不思議な手帳。紙はオールドトレント・メイジというモンスターから作られているため魔力伝導率が高く、不思議なことに見た目とはほど遠いほどページ数が多く、めくってもめくっても終わりが見えない。
破っても魔力を注ぐと自己修復するため気が遠くなるほど価値がとても高い。
特殊効果:魔力障壁・ページ量増加(大)・自己修復・魔力吸収
強化可能回数残り:6
[幸運角兎の心石] 分類:召喚アイテム 品質:A+
個体名:ラッキーホーンラビットが心を許し助けたいと思った者に渡す心の結晶。
このアイテムを使用すると《召喚魔法》スキルの召喚リストに個体名:ラッキーホーンラビットが登録され、個体名:ラッキーホーンラビットの通常召喚ができるようになる。
個体名:ラッキーホーンラビットとの信頼度によって品質が変化し、最低品質のF-になるとこのアイテムは自然消滅する。
※このアイテムは一度使用すると効力を失い、砕けて消えます。
[幸運の輝石] 分類:強化アイテム 品質:A+
極々稀に、モンスターの魔石が突然変異したもの。何かを生み出す時、偶然の産物を必然的に引き起こす効果がある。
使うとなくなるので、取り扱いには注意が必要。
[占術大全] 分類:本 品質:A+
占いの全てが載っている立派な装丁の本。占うのならまずは初歩から。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[散歩杖] 分類:杖 品質:A+
長距離を歩くための杖。散歩の相棒的存在。無理はせずに歩くこと。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[釣り具一式] 分類:道具 品質:A+
釣りに必要な道具一式。餌は別売り。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
《職業レベルが上がりました》
[世界大全] 分類:本 品質:A+
世界の全てが載っている立派な装丁の本。知識を得たい、がっつり本を読みたい者にお勧め。
ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[筆記具] 分類:道具 品質:A+
物書きなら必須の道具。適度に休息はとること。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[地図作成キット] 分類:道具 品質:A+
地図を作るときにあると助かる道具一式。作るときは周りに気をつけること。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
あらかた移すと、さっきよりは枠に余裕ができた。
なのでクラウドは、現在進行形で気になっているプレゼントボックスを開けてみた。
《種族経験値獲得チケット×10を獲得しました》
《ステータスポイント獲得+10チケット×10を獲得しました》
《プレミアムガチャ券×5を獲得しました》
《アイテム枠(課金分の枠)拡張チケット(最大)を獲得しました》
《マイホームを獲得しました》
《魔法の鍵を獲得しました》
《魔法の鍵に〈マイホーム〉が登録されます》
《不思議な卵を獲得しました》
《職業:精霊術士を確認。職業別専用アイテムが適用されます》
《無色の精霊石(極大)×6を獲得しました》
《守護の棍杖を獲得しました》
《10,000,000エンを獲得しました》
《上級HPポーション×10を獲得しました》
《上級MPポーション×15を獲得しました》
《称号【創造主の友人】を獲得しました》
しばし固まったのは致し方ないといえよう。
それでも常人よりも早く気を取り直したのはさすがというべきか。
見てわかる範囲でいうと、チケット類とガチャ券はメタいので理解はできた。
マイホームも、まあ理解はできた。家が持てると、そういう方向でまず間違いはないだろう。
装備品や通貨、ポーション類も一応用途は理解できる。
称号も、なんとか理解できた。おそらくはこの『創造主』というのがGMの彼、杉原氏のこの世界での立ち位置なのだろう。
それで友人と認められていることは素直に嬉しい。
だが、よくわからないものがあるのも事実。
無色の精霊石はさっき得たばかりの《精霊知識》というスキルで必要なものであるとわかった。
魔法の鍵。説明ウインドウにはどんな鍵穴にも差し込め、どんなものも開け閉め可能で、登録した扉と近くの扉を繋げて一瞬で移動もできる魔法の鍵。と書かれている。
非常に便利な鍵ということはクラウドも理解できたし、どこかもわからないマイホームに安全に行けるのならそれはとても助かることであると彼は思った。
だがしかし。
不思議な卵 分類:??
全てが謎に包まれた卵。何が生まれるかは孵してみないとわからない。
これを自分にどうしろというのだろうか。
クラウドは彼に割と本気で自分をどうしたいのかメールを打ちたくなったのは余談である。
さすがの彼も扱いに困る素振りをしたが、それでもそこは肝っ玉の持ち主。
貰えるものは貰おうと気を持ち直して、とりあえずとアイテムの拡張チケットを使った。
アイテムの枠は課金で最大初期のアイテム枠と同数分解放できる。つまり2倍になるので、正直言って助かったというのがクラウドの本音である。
《アイテムの枠が拡張されました。より多くのアイテムが持てるようになりました》
続けて他のチケットも消費した。
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》・・・
といったインフォメーションがしばらく脳内を流れていき、止まったのを見計らってクラウドはステータスポイントの追加のチケットも使った。
インフォメーションが大変やかましいことになっていたのは言うまでもないのでここでは割愛させていただくが、当の本人はまるで堪えていなかったとだけ追記しておく。
およそ25レベル分の種族経験値と10レベル分のステータスポイントを追加し、次に彼が行ったのはガチャチケットの消費だった。
まず最初に初回無料のガチャを回し、次にプレミアムガチャとギラギラにデコレーションされてある字体の付いたガチャにチケットを消費して回した。
結果は以下の通りになった。
初回無料 スキル石×5
プレミアムガチャ(1回目) 神々の庭
プレミアムガチャ(2回目) 回復薬セット(最高級)
プレミアムガチャ(3回目) 鉱石セット(伝説級)
プレミアムガチャ(4回目) 生産の全て(レシピ本)
プレミアムガチャ(5回目) 育成の全て
《スキル石×5を獲得しました》
《神々の庭を獲得しました。〈マイホーム〉に設置されます》
《回復薬セット(最高級)を獲得しました》
《鉱石セット(伝説級)を獲得しました》
《レシピ本〈生産の全て〉を獲得しました》
《育成の全てを獲得しました》
スキル石は一つ消費でスキルを一つ獲得できる。ただ、派生スキルや進化したスキルは獲得対象外である。
神々の庭 分類:マイホーム(庭)
広大な敷地に神気を満たした庭。神秘の泉とよばれる、捧げものをすると女神が現れると謂われる泉もある。
マイホームの『庭』のカテゴリーに入るので、マイホームを持っていない場合は使用不可能。
中にはこんなものもあった。マイホームにいろいろ追加するシステムらしく、庭もその一つらしい。
回復薬セットは最高級と付いているだけあって、卒倒ものの性能だ。
エリクサー 分類:回復薬 品質:A+
究極の回復薬。一滴でHP・MPを全回復させ、あらゆる状態異常を消し去る。余りに強力なため、神聖魔法並みの浄化能力も備わっている。
欠損部位すらもたちまちのうちに治すが、蘇生薬ではないので死人には効かない。
ネクタル 分類:回復薬 品質:A+
究極の蘇生薬。一滴で一つの命を生き返らせることが可能。HP・MP・あらゆる状態異常を回復させ、全快の状態で完全復活させる。
それぞれに×5と表示されている。
鉱石セット(伝説級)も同じようなもので、伝説級や準伝説のような稀少性の高いものの豪華詰め合わせとなっている。
ミスリル鉱 分類:鉱石 品質:A+
聖銀とも呼ばれる稀少価値の高い鉱石。魔力伝導率が高く、鉄よりも硬いが入手が困難なため数が少なく、用途は主に小道具の金具や装飾品である。
アダマンタイト鉱 分類:鉱石 品質:A+
稀少価値が高く、また加工の腕に自信のあるものにしか扱えない特殊鉱石。非常に硬く、加工するには相応の専用道具が必要。
オリハルコン鉱 分類:鉱石 品質:A+
合金材に使うことで様々な特徴を見せる万能金属。魔力伝導率も申し分なく、別の魔力伝導率の高い金属と合金させることによって途轍もない代物を生み出せる。
ヒヒイロカネ鉱 分類:鉱石 品質:A+
もはや存在するのかすらわからない伝説の金属と呼ばれる鉱石。金より軽く、ダイヤモンドよりも硬いうえ、錆びる事が無い。さらには世界最高峰の魔力伝導率を誇るとされている。他に『太陽のように輝く』、『触ると冷たい』、『表面が揺らいだように見える』、『探知スキルに反応しない』などの特徴がある。
玉鋼 分類:鉱石 品質:A+
東洋の小さな島国が産地の、非常に高いポテンシャルを持つ鋼。これで打った刀と呼ばれる武器は、全てを一刀のもとに伏すといわれている。
素材にあてはまるからだろうか、個数はそれぞれ×10と回復薬セットよりも多く表示されている。
他二つは本である。一つはゲームの攻略本を彷彿とさせる分厚い本で、もう一つは淡い緑色のハードカバーに青色の立派な装丁が施された本だ。
生産の全て 分類:本 品質:A+
生産の全てが載せられたレシピ本。簡単な入門編から始まり、応用やその先まで書かれてあれば、謎に包まれた鉱石の採れる場所や鍛造方法・製造方法まで載っている。
育成の全て 分類:本 品質:A+
育成関連の全てが記載された立派な装丁の本。魔物や精霊ほか、全ての生きとし生けるものの育成方法が載っている。
どう考えても手に余る代物の数々がことごとく自身の手に渡っているのだが、当の本人はすごいのが当たったなあくらいにしか思っていなかったのであった。
それがこの、別名始まりの町と呼ばれる地の正式名称だ。
そこは今、現在進行形で大量の人ごみでごった返していた。
当然だ。その人ごみは所謂プレイヤーであり、今日が待望のサービス開始の日なのだから。
その人ごみを避けた場所にまた次々と新しくログインしてくるため、町はてんやわんやしている。
そんなサービス開始のMMOならどこでも見られる光景をよそに、クラウドは一人町中の道という道を通って探検していた。
「助かったよ。ありがとう」
~♪
~♪、♪
否、正確には一人ではなく、クラウドの周りでは綿毛のようなふわふわとした光がいくつも漂っていた。
クラウドが礼を言うと、そのいくつもの光の綿毛は嬉しそうにそれぞれ跳ね回る。
火の精霊 精霊種Lv.5 適性:火属性
水の精霊 精霊種Lv.5 適性:水属性
風の精霊 精霊種Lv.4 適性:風属性
土の精霊 精霊種Lv.3 適性:土属性
光の精霊 精霊種Lv.4 適性:光属性
闇の精霊 精霊種Lv.4 適性:闇属性
彼ら綿毛の正体は、精霊。
そう。あのネットに消息不明と書かれていた精霊だった。
いきなり大本命の存在に出会ったクラウドだがしかし、初めに一度びっくりしたような顔をして以降は、まるで近所のこどもを相手にするがごとく接していた。
これには運営側も精霊側もびっくりである。クラウドはとんだ肝っ玉の持ち主であった。
ちなみに現在クラウドは精霊たちに案内され、彼らのオススメの穴場に移動中である。
そうして精霊についてのいろいろなことをのんびりと学びながらクラウドは町並みを歩いていく。
本来精霊の言葉を初めから理解出来はしないのだが、そこは最高神の加護持ち。
精霊たちが何を伝えたいのかを深くまで知れる《超直感》のスキルが遺憾無く発揮され、おまけにカウンセリング(リアル職)で培った持ち前の対人スキルでもってほぼ完璧に精霊との意思疎通ができている。
《スキル《精霊言語》を取得しました》
《※言語スキルについては後ほどヘルプにてご確認ください》
「うん?」
ど✽した✽? ✽✽か✽たい?
✽かれ✽✽った? や✽む?
「いや、大丈夫だよ」
先程まで、今にも消えてしまいそうなほどの小さな小さな音が、意味のある言葉に変わっている。
が、スキルレベルが低いため聞き取り難く、また所々の言葉がわからない。
クラウドは聞き漏らさずに注意しながら、精霊たちに導かれるままに歩を進めた。
たどり着いた場所は、彼ら曰く『秘密の場所』。
もうすっかり精霊の言葉をマスターしたクラウドは、その秘密の場所の光景を目にして思わずほうっと息が漏れた。
街並みが突然途切れ、ぽっかりと拓けた場所に一本の大樹。千年は生きているだろうその大きな姿に、ただただ圧倒される。
その大樹から溢れる木漏れ日が、この空間を柔らかく包んでいる。
大樹の枝葉は青々と生い茂り、テーブルを根元に設置してもおそらく余裕で木陰に入るほどに大きく広がっている。
種類は広葉樹の類だろうか。
だがクラウドが驚いたのはそれだけではない。
――――――精霊だ。
見渡す限りに、いくつもの淡い色をした綿毛のような光たちが思い思いに過ごしている。
それらは全て精霊と呼ばれる存在で、まさにここは精霊にとっての『秘密の場所』・・・精霊の楽園とも言える場所であった。
「これはまた、とても良い場所だねぇ」
クラウドは柔らかな笑みを浮かべて、その秘密の場所に足を踏み入れた。
その場の精霊たちはクラウドが自分たちの場所に入ってきても逃げなかった。
何か、自分たちと似た匂いがするからだ。
普通の、ただの人間とは違う。かといって、獣人のような獣の気配は強くはなく普通の人間と同じ。
竜人族かといわれたら、それも違う。精霊に敬意を払うエルフでもドワーフでもない。
もっと神秘的な・・・そう、自分たち精霊と同じ存在だ。
同じ、『神様に通じる匂い』がするのだ。
精霊とは元々は神様がこの世界に注いだ魔力という存在から産まれる存在。
なので精霊は実質、神様の子供や孫のような存在だ。
クラウドの種族は神人。人から産まれた設定ではあれど、元々は神様にそういう風習で落とされた神の子の種族。
精霊たちが恐れずにいるのはそれが要因だろうとクラウドは思っている。
さしずめ自分は、親戚のおじさんだろうか。それも母方や父方の兄弟という、一番近い位置の。
現に彼ら精霊たちは、大樹の方へ向かうクラウドの後を興味津々についてきたり、離れたところから様子を伺ったりしている。
クラウドはそんな精霊たちににこにこと挨拶を返して大樹の根元に腰を降ろし、メニューを開いた。
[ステータス] [アイテム]
[メール]新着![フレンド]
[ガチャ] [掲示板]
[ショップ] [各種設定]
開くと、一つのウインドウに八つの項目が縦2列に並んでいる。
クラウドはまず、各種設定の項目を押して一つ一つの設定を確認し、変更したりしていく。
神眼の効果はウインドウが出てくるのを頭の中に入ってくるものに変えたり、自分のHPとMPが常時見えるようにしたり。
そうしていろいろな設定を終えた後は、近寄って自分の膝や頭の上でぽんぽん跳ねて遊んでいる精霊たちをそのままにステータスを開いた。(※精霊には質量という概念がない)
クラウド 神人Lv.1
職業≪精霊術士Lv.5≫ サブ職業≪――――≫
HP 650/650
MP 1145/1150
攻撃 200
防御 300
精神 600
知力 710
器用 350
敏捷 300
運気 ∞〈カンスト〉
ステータスポイント のこり0
スキルポイント のこり6025
所持金 462,000エン
スキル
種族スキル
《神眼Lv.4》《変幻自在Lv.4》
通常スキル
《精霊術Lv.5》《杖術Lv.1》《棒術Lv.1》《体術Lv.1》《蹴りLv.1》
《火魔法Lv.1》《水魔法Lv.1》《風魔法Lv.1》《土魔法Lv.1》
《光魔法Lv.1》《闇魔法Lv.1》《召喚魔法Lv.1》《付加魔法Lv.5》
《呪魔法Lv.5》《生活魔法Lv.1》《念動魔法Lv.1》
《鍛冶Lv.1》《裁縫Lv.1》《彫金Lv.1》《調薬Lv.1》《皮革加工Lv.1》
《宝飾Lv.1》《木工Lv.1》《料理Lv.1》《錬金術Lv.1》
《採取Lv.1》《採掘Lv.1》《解体Lv.1》《平衡Lv.3》《跳躍Lv.1》
《走行Lv.1》《持久Lv.3》《HP自動回復Lv.1》《MP自動回復Lv.4》
《HP上昇Lv.1》《MP上昇Lv.3》《知力上昇Lv.1》
《MP消費削減Lv.4》《魔法才能Lv.3》《魔力操作Lv.1》
《魔力感知Lv.5》《気配感知Lv.4》《気配遮断Lv.3》《隠蔽Lv.4》
《健康Lv.1》《声Lv.1》《テイムLv.1》《魔法陣Lv.1》《占いLv.1》
《散歩Lv.4》《釣りLv.1》《読書Lv.1》《筆記Lv.1》
《マッピングLv.4》
《精霊言語Lv.10★》
称号スキル
《神気Lv.4》《超直感Lv.5》《超運》《次元の門》《神格召喚》《多才》
《危機回避Lv.1》《不殺の心得》《サポートの心得》《精霊知識》
《精霊召喚》《士気向上》
称号 神に見守られし者 最高神の加護 賢者の卵 スキルコレクター
才能に恵まれし者 死を恐れる者 殺さずの心 AIカウンセラー
精霊言語のスペシャリスト 精霊に認められた者 注目の的
クラウドはここに来るまでにいくつかスキルの発動実験を行っているうちにいつの間にかレベルが上がっており、また新しいスキルや称号が増えていた。
職業レベルが上がっているのはおそらく、視認した精霊と接触し続けていることが関係している可能性が高い。
じっと見ていると職業の上に小さくメーターが表示され、左から右に黄色のバーが伸びていて現在も伸び続けている。
それがメーターの左の端までいくとレベルが上がるのだろう。
ネットでレベルが上がらないといっていたのに上がっている。
ここまでの相違点は明らかに精霊との意識的な触れ合いが経験値取得の鍵であることに間違いはないだろう。
ここに来るまでに《付与魔法》で自分や精霊たちにステータスを上げる魔法を付与し、精霊たちは人ではないため人が通れる道を選んでくれていたとはいえ、躓きそうな足場の悪い所も通ったためバランスを保つ《平衡》や体力を使ったために《持久》のレベルも上がっている。
魔法を使ったためにMP関連のスキルも上がり、ドキドキ感を味わうために《気配遮断》や《隠蔽》を使ってコソコソしてみたり、感知系スキルで周囲を把握して景色を別の目線で見てみたりしたためそういったスキルも上がっている。
《超直感》や《神眼》は大いに活躍していたため、上がっているのも納得である。
レベルが一律でないのは、必要経験値の差だろう。
《マッピング》のスキルが上がったのは、視界の隅に表示された町の簡易マップが関係しているようだ。
どうやら、自動で埋められるこのシステム的なマップにもこのスキルが反映されるらしく、メモなどが書けるようになっているようである。
《散歩》はまあ、精霊たちに案内されていたとはいえ、のんびり気分で歩いていたので間違いなくあれは散歩だろうなとクラウドは苦笑した。
《精霊言語》パッシブ
精霊の言葉が理解でき、また精霊の言葉を話すことができる。スキルレベル上限はLv.10まで。
スキルレベル上昇により、理解難度の高い言葉も理解できる。
レベルMAX報酬:精霊との好感度が大幅上昇・スキル《知力上昇》を獲得。※スキルが被った場合は統合され、該当スキルに経験値が上乗せされます。
精霊たちと交流している途中に得たスキルだ。他の《超直感》などのスキルが言葉を覚えるのに役立ったため、あっという間にMAXになっている。
初めて見るが、スキルレベルがカンストするとスキルのレベルの横に星が付くらしい。
死を恐れる者
死を恐れ、殺し殺されることを嫌う者。この称号がある限り、自分から戦闘(討伐)で攻撃行動ができない。
称号効果:討伐時戦闘攻撃動作不可・回復行動時回復量増加・称号スキル《危機回避》を獲得。
殺さずの心
チュートリアルの戦闘で相手を殺さず慈愛を与えた者、殺さずの意志(精神力)を持って戦闘(討伐)を回避した者に贈られる称号。
称号効果:攻撃以外のステータス+50・慈善活動に大幅補正・称号スキル《不殺の心得》を獲得。
AIカウンセラー
AIの心を解きほぐした者。
称号効果:精神+50・全てのAIとの好感度が大幅上昇・称号スキル《サポートの心得》を獲得。
精霊言語のスペシャリスト
スキル《精霊言語》のレベルをMAXまで上げた者。
称号効果:知力+100・称号スキル《精霊知識》を獲得。
精霊に認められた者
精霊に好かれ、懐かれた者。一定数以上の精霊に信頼を受けている証。
称号効果:精霊との好感度が上昇しやすくなる・称号スキル《精霊召喚》を獲得。
注目の的
一定数以上の視線を好奇心やプラスの感情で一度に受けた者。
称号効果:自身にプラスの感情または好奇心を向けている者からの支持率が上昇しやすくなる・称号スキル《士気向上》を獲得。
《知力上昇》パッシブ
知力のステータスを上昇させる。上昇値はスキルレベル×5。
《危機回避》パッシブ
危機を察して回避できる。(フラグをへし折り、新しいルートを構築できる)
《不殺の心得》パッシブ
どうすれば命を奪わずに済むかがわかるようになる。
《職業レベルが上がりました》
《サポートの心得》パッシブ
回復・補助などの行動に大幅な補正が付く。
《精霊知識》パッシブ
精霊の知識を得られる。精霊の誕生・精霊の存在意義・在り方・現存する全ての精霊の種類・・・その他あらゆる精霊関連の情報を知ることができる。
《精霊召喚》アクティブ
MPを消費して精霊を召喚できる。※職業が精霊術士でない場合、召喚できる数に制限がかかります。
《士気向上》アクティブ
自身にマイナス感情以外のものを持っている者のコンディションを最高まで引き上げ、少しだが全てのステータスも上昇する。範囲による複数指定が可能。
持続時間は対象者の使用者への信頼度依存。信頼度が高ければ高いほど効果が強く出るが、懐疑的だったり最初から使用者の全てを疑う者はスキル対象外になる。
14の新しい称号とスキルの獲得。開始数十分で酷いありさまである。
普通はここまで短時間で大量の称号やスキルを得るなどありえないことなのだが、皆様憶えているだろうか?
一番最初の称号にトンデモ称号があったことを・・・。
ヒントは最高神からの称号である。
要因はそれだけではないのだが、突き詰めていけば彼にこの称号付きのVR一式を送った張本人が事の発端であり、クラウド自身は流されるままに人並みの興味でゲームを楽しもうとしているだけである。
それで職業上AIもカウンセリングしてしまったり、友人曰く枯れた思考のままに兎モンスターや精霊を近所の子供のように接したりしているのだとしても、そもそもその称号に付いた効果や特典コードがなければそのほとんどの行動に制限がかかるので、決して彼だけのせいでは断じてない。
そんなぶっ壊れたステータスを改めて全体的に見たクラウドの感想はただ一つ。
「凄いことになってるのはわかるんだけど、多過ぎて目が滑っちゃうなぁ・・・」
これに尽きた。
昔にゲームを一通りとはいっても、クラウドは重度のゲーマーではなかった。
ストーリーがあるものはストーリークリアをゴールとし、パズルゲームなどは最高難易度までは一度クリアすれば満足してそこまで。
レベルがある場合は全て上限まで上げきるもののそれだけで十分満足してしまうし、ましてや見えない数値を上げることにはあまり興味が持てなかった。
そんなライトもライト、浅く広くを地で行くぺらっぺらに軽いライトゲーマー精神の彼は、興味のままにスキルを取ったことをほんの少しだけ反省しながらゆっくりと説明を頭に入れていった。
ちなみにクラウドの辞書には反省はあっても後悔という文字はない。
クラウドは『何を選んでも後悔だけはしないように』という親の教えのもと、元から後悔しないように今まで生きてきた人間であった。
懇話休題。
頭に入れ終わったクラウドは休憩もそこそこに作業を続けた。
ステータスを閉じアイテムを開くと、全体のほぼ80%の枠がアイテムで埋まったアイテム覧が現れた。
一つ一つ見ていくと、どうやら入手順で並んでいるらしい。
[最高神からの贈り物]
[中央図書館への通行許可証(無料パス)]
[マジックポーチ]
[万能万年筆]
[魔法手帳]
[ルビー]
[サファイア]
[エメラルド]
[モルガナイト]
[シトリン]
[アメジスト]
[ラッキーホーンラビットの皮×5]
[ラッキーホーンラビットの肉×4]
[ラッキーホーンラビットの尻尾×2]
[幸運角兎の心石]
[幸運の輝石]
[赤の屑宝石×50]
[青の屑宝石×50]
[緑の屑宝石×50]
[黄の屑宝石×50]
[白の屑宝石×50]
[紫の屑宝石×50]
[初級鍛冶セット]
[屑鉱石×50]
[初級裁縫セット]
[普通の布×50]
[初級彫金セット]
[銅のインゴット×50]
[初級調薬セット]
[薬草×50]
[初級皮革加工セット]
[ホーンラビットの皮×50]
[初級宝飾セット]
[無色の屑宝石×50]
[初級木工セット]
[廃材×50]
[初級料理セット]
[ホーンラビットの肉×50]
[初級錬金術セット]
[小石×50]
[占術大全]
[散歩杖]
[釣り具一式]
[世界大全]
[筆記具]
[地図作成キット]
《職業レベルが上がりました》
中身はメニューを全部見てからにするようで、クラウドはそのままアイテム覧を閉じて次のメール画面を開いた。
ウインドウの上部には〔システムメール〕と〔フレンドメール〕というタブがあり、タブをタッチするとそれぞれのウインドウに切り替えられる仕組みである。
その中のシステムメールの方にいくつかメールが届いているが、クラウドは確認のため開いただけなのですぐにメール画面を閉じた。
[フレンド]は、フレンド登録が必須らしい。
リアルのアドレスも登録できるらしいので、とりあえずはゲーム関係者である杉原氏のアドレスをクラウドは登録しておいた。
[ガチャ]はどうやら昔遊んだよくあるオンラインゲームと同じ、ネタ衣装やらなんちゃって伝説の武器などの攻略にあまり関係のないアイテムから、召喚士が欲しがりそうな召喚モンスターの装備や召喚に必要な強そうなモンスターの心石の他、剣士職が欲しがる剣や盾、魔法職や回復職が欲しがる宝石付きの杖、その他実用性のあるものも用意されている。
生産職御用達の素材なんかも、複数がセットになってるものが配置してある。
オンラインゲームでよくみた、『初回無料!』なんてものもあった。
掲示板はそのままだ。
開いてみると、ゲームが開始して少ししか経っていないにも関わらず実に多種多様なスレが既に存在している。
総合スレはもとより、職業別だったり○○好きスレだったり。
自分のプレイを語る日記スレのようなものもあったりして、タイトルだけ流し見するだけでもなかなかに秀逸なものもあって面白く、思わずふふっと笑ってしまった。
ショップは、実に様々なものが売られている。
リアルマネーでの換金やガチャチケットなど、所謂『メタい』と呼ばれる品物が一覧に並んでいるのだ。
取得経験値を1時間の間1.5倍にするチケットや、武器防具はもちろんマジックアイテムやスキルポイント無しでスキルが覚えられるスキル石など全てのジャンルのアイテムが詰め込まれたランダムボックスなるものもあって、見ているだけでなんだか楽しくなってくる。
リアルマネーだけでなく、ゲーム内通貨用のアイテムコーナーも設置されているので、ここを覗く人も多そうだなぁとクラウドは思った。
そうして一通り確認を終えた後は、少しだけ目を休めたあとにメール画面を開いた。
新着メールは4件。
差出人は上から順に運営、GM、GM、システム。
運営メールの内容は『ようこそ!ファンタジーな剣と魔法の異世界へ!!本日は――――』といった、プレイヤー全員に送ったのであろう常套句が述べられていた。
クラウドはそれを最後まで目を通すと、次のメールを開いた。
こちらは『クラウドさんへ。このゲームを初めてくれてありがとな!』といった感じの、杉原さんからの感謝や、このゲームは本当に面白いからぜひ楽しんでくれ!という旨が書かれたものだった。
続けて送られたメールは追記のようで、何か面白かったこと楽しかったことなど、不満でもいいから思ったことがあれば教えてほしいというものだった。
あと、プレイヤー間でトラブルになった場合は連絡をよこしてほしいというようなことが最後に記載されていた。
クラウドは友人からの用件をしっかりと記憶に刻んでから、最後にシステムメールを開いた。
内容には、『ラッキーホーンラビットの経験値を受け取れます』と簡潔に書かれていて、メールの最後に[受け取る]というボタンが点滅している。
あとは持ち物の詳細を確認するだけで他は特にないので、クラウドは一切の迷いもなくぽちりと受け取りボタンを押した。
《ラッキーホーンラビットの経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
ステータスは後で確認しようと思ったクラウドは、まずこの大量のアイテムたちを整理するところから取り掛かった。
アイテムの枠の数は縦×横で10×5=50。
一つの枠には99個同じものを纏めて入れられるが、違う種類同士は纏められない。
それがおよそ46種類。まだ空いてる枠はあるがどう見ても逼迫してしまっている。
生産セットとその素材が場所を取っているのは明らかである。
アイテム枠の上限を解放することもできるにはできるが、解放条件が『種族レベルを5の倍数に上げること』である。
5、10、15とレベルを上げるごとに枠が5ずつ解放されていくのだ。
ちなみに方法はもう一つあって、課金で解放する方法である。
クラウドはライトなゲーマーだったので、課金まで手を出したことはない。
というか、課金のやり方が彼はわからない。お金の入れ方がわからないのである。
初心者に毛が生えた程度の理解度なので、おそらく彼はこのゲームでも無課金で通すことだろう。
懇話休題。
まずは装備ができるマジックポーチを腰にセットし、アイテムポーチの中に生産関係以外のものの詳細を確認しながら移していった。
[マジックポーチ] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術が施された最高級のマジックポーチ。上質な高級毛皮をなめしたもので作られているため通常のマジックバッグよりもとても頑丈。付属のベルトを使って腰に装着できるようになっている。
特殊効果:空間拡張(特大)・防水・防腐・劣化防止・時間停止
強化可能回数残り:5
[最高神からの贈り物] 分類:ゴッドアイテム 製作者:GM 品質:??
特典コードの恩恵の一つ。中には限定の品物も入っている一点もののプレゼントボックス。
[中央図書館への通行許可証(無料パス)] 分類:称号アイテム 品質:??
町の中央にある図書館への通行許可証。これがあると無料で蔵書などの閲覧が可能。
火気厳禁。図書館ではお静かに。
[万能万年筆] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術によって中のインクが切れないという不思議な万年筆。木材部分は世界樹の枝が使われており、芯材は古代竜の牙。金具部分には魔力伝導率トップクラスの稀少なミスリルを混ぜた合金が使われているためちょっとやそっとじゃ壊れない高級品。
特殊効果:防水・防腐・劣化防止・インク無限
強化可能回数残り:6
[魔法手帳] 分類:マジックアイテム 製作者:NPC 品質:A+
特殊な技術によって日に焼けない不思議な手帳。紙はオールドトレント・メイジというモンスターから作られているため魔力伝導率が高く、不思議なことに見た目とはほど遠いほどページ数が多く、めくってもめくっても終わりが見えない。
破っても魔力を注ぐと自己修復するため気が遠くなるほど価値がとても高い。
特殊効果:魔力障壁・ページ量増加(大)・自己修復・魔力吸収
強化可能回数残り:6
[幸運角兎の心石] 分類:召喚アイテム 品質:A+
個体名:ラッキーホーンラビットが心を許し助けたいと思った者に渡す心の結晶。
このアイテムを使用すると《召喚魔法》スキルの召喚リストに個体名:ラッキーホーンラビットが登録され、個体名:ラッキーホーンラビットの通常召喚ができるようになる。
個体名:ラッキーホーンラビットとの信頼度によって品質が変化し、最低品質のF-になるとこのアイテムは自然消滅する。
※このアイテムは一度使用すると効力を失い、砕けて消えます。
[幸運の輝石] 分類:強化アイテム 品質:A+
極々稀に、モンスターの魔石が突然変異したもの。何かを生み出す時、偶然の産物を必然的に引き起こす効果がある。
使うとなくなるので、取り扱いには注意が必要。
[占術大全] 分類:本 品質:A+
占いの全てが載っている立派な装丁の本。占うのならまずは初歩から。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[散歩杖] 分類:杖 品質:A+
長距離を歩くための杖。散歩の相棒的存在。無理はせずに歩くこと。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[釣り具一式] 分類:道具 品質:A+
釣りに必要な道具一式。餌は別売り。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
《職業レベルが上がりました》
[世界大全] 分類:本 品質:A+
世界の全てが載っている立派な装丁の本。知識を得たい、がっつり本を読みたい者にお勧め。
ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[筆記具] 分類:道具 品質:A+
物書きなら必須の道具。適度に休息はとること。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
[地図作成キット] 分類:道具 品質:A+
地図を作るときにあると助かる道具一式。作るときは周りに気をつけること。ちょっとやそっとじゃ破損しない。
あらかた移すと、さっきよりは枠に余裕ができた。
なのでクラウドは、現在進行形で気になっているプレゼントボックスを開けてみた。
《種族経験値獲得チケット×10を獲得しました》
《ステータスポイント獲得+10チケット×10を獲得しました》
《プレミアムガチャ券×5を獲得しました》
《アイテム枠(課金分の枠)拡張チケット(最大)を獲得しました》
《マイホームを獲得しました》
《魔法の鍵を獲得しました》
《魔法の鍵に〈マイホーム〉が登録されます》
《不思議な卵を獲得しました》
《職業:精霊術士を確認。職業別専用アイテムが適用されます》
《無色の精霊石(極大)×6を獲得しました》
《守護の棍杖を獲得しました》
《10,000,000エンを獲得しました》
《上級HPポーション×10を獲得しました》
《上級MPポーション×15を獲得しました》
《称号【創造主の友人】を獲得しました》
しばし固まったのは致し方ないといえよう。
それでも常人よりも早く気を取り直したのはさすがというべきか。
見てわかる範囲でいうと、チケット類とガチャ券はメタいので理解はできた。
マイホームも、まあ理解はできた。家が持てると、そういう方向でまず間違いはないだろう。
装備品や通貨、ポーション類も一応用途は理解できる。
称号も、なんとか理解できた。おそらくはこの『創造主』というのがGMの彼、杉原氏のこの世界での立ち位置なのだろう。
それで友人と認められていることは素直に嬉しい。
だが、よくわからないものがあるのも事実。
無色の精霊石はさっき得たばかりの《精霊知識》というスキルで必要なものであるとわかった。
魔法の鍵。説明ウインドウにはどんな鍵穴にも差し込め、どんなものも開け閉め可能で、登録した扉と近くの扉を繋げて一瞬で移動もできる魔法の鍵。と書かれている。
非常に便利な鍵ということはクラウドも理解できたし、どこかもわからないマイホームに安全に行けるのならそれはとても助かることであると彼は思った。
だがしかし。
不思議な卵 分類:??
全てが謎に包まれた卵。何が生まれるかは孵してみないとわからない。
これを自分にどうしろというのだろうか。
クラウドは彼に割と本気で自分をどうしたいのかメールを打ちたくなったのは余談である。
さすがの彼も扱いに困る素振りをしたが、それでもそこは肝っ玉の持ち主。
貰えるものは貰おうと気を持ち直して、とりあえずとアイテムの拡張チケットを使った。
アイテムの枠は課金で最大初期のアイテム枠と同数分解放できる。つまり2倍になるので、正直言って助かったというのがクラウドの本音である。
《アイテムの枠が拡張されました。より多くのアイテムが持てるようになりました》
続けて他のチケットも消費した。
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》
《経験値を獲得しました》
《種族レベルが上がりました。別途ステータスポイントを割り振ってください》・・・
といったインフォメーションがしばらく脳内を流れていき、止まったのを見計らってクラウドはステータスポイントの追加のチケットも使った。
インフォメーションが大変やかましいことになっていたのは言うまでもないのでここでは割愛させていただくが、当の本人はまるで堪えていなかったとだけ追記しておく。
およそ25レベル分の種族経験値と10レベル分のステータスポイントを追加し、次に彼が行ったのはガチャチケットの消費だった。
まず最初に初回無料のガチャを回し、次にプレミアムガチャとギラギラにデコレーションされてある字体の付いたガチャにチケットを消費して回した。
結果は以下の通りになった。
初回無料 スキル石×5
プレミアムガチャ(1回目) 神々の庭
プレミアムガチャ(2回目) 回復薬セット(最高級)
プレミアムガチャ(3回目) 鉱石セット(伝説級)
プレミアムガチャ(4回目) 生産の全て(レシピ本)
プレミアムガチャ(5回目) 育成の全て
《スキル石×5を獲得しました》
《神々の庭を獲得しました。〈マイホーム〉に設置されます》
《回復薬セット(最高級)を獲得しました》
《鉱石セット(伝説級)を獲得しました》
《レシピ本〈生産の全て〉を獲得しました》
《育成の全てを獲得しました》
スキル石は一つ消費でスキルを一つ獲得できる。ただ、派生スキルや進化したスキルは獲得対象外である。
神々の庭 分類:マイホーム(庭)
広大な敷地に神気を満たした庭。神秘の泉とよばれる、捧げものをすると女神が現れると謂われる泉もある。
マイホームの『庭』のカテゴリーに入るので、マイホームを持っていない場合は使用不可能。
中にはこんなものもあった。マイホームにいろいろ追加するシステムらしく、庭もその一つらしい。
回復薬セットは最高級と付いているだけあって、卒倒ものの性能だ。
エリクサー 分類:回復薬 品質:A+
究極の回復薬。一滴でHP・MPを全回復させ、あらゆる状態異常を消し去る。余りに強力なため、神聖魔法並みの浄化能力も備わっている。
欠損部位すらもたちまちのうちに治すが、蘇生薬ではないので死人には効かない。
ネクタル 分類:回復薬 品質:A+
究極の蘇生薬。一滴で一つの命を生き返らせることが可能。HP・MP・あらゆる状態異常を回復させ、全快の状態で完全復活させる。
それぞれに×5と表示されている。
鉱石セット(伝説級)も同じようなもので、伝説級や準伝説のような稀少性の高いものの豪華詰め合わせとなっている。
ミスリル鉱 分類:鉱石 品質:A+
聖銀とも呼ばれる稀少価値の高い鉱石。魔力伝導率が高く、鉄よりも硬いが入手が困難なため数が少なく、用途は主に小道具の金具や装飾品である。
アダマンタイト鉱 分類:鉱石 品質:A+
稀少価値が高く、また加工の腕に自信のあるものにしか扱えない特殊鉱石。非常に硬く、加工するには相応の専用道具が必要。
オリハルコン鉱 分類:鉱石 品質:A+
合金材に使うことで様々な特徴を見せる万能金属。魔力伝導率も申し分なく、別の魔力伝導率の高い金属と合金させることによって途轍もない代物を生み出せる。
ヒヒイロカネ鉱 分類:鉱石 品質:A+
もはや存在するのかすらわからない伝説の金属と呼ばれる鉱石。金より軽く、ダイヤモンドよりも硬いうえ、錆びる事が無い。さらには世界最高峰の魔力伝導率を誇るとされている。他に『太陽のように輝く』、『触ると冷たい』、『表面が揺らいだように見える』、『探知スキルに反応しない』などの特徴がある。
玉鋼 分類:鉱石 品質:A+
東洋の小さな島国が産地の、非常に高いポテンシャルを持つ鋼。これで打った刀と呼ばれる武器は、全てを一刀のもとに伏すといわれている。
素材にあてはまるからだろうか、個数はそれぞれ×10と回復薬セットよりも多く表示されている。
他二つは本である。一つはゲームの攻略本を彷彿とさせる分厚い本で、もう一つは淡い緑色のハードカバーに青色の立派な装丁が施された本だ。
生産の全て 分類:本 品質:A+
生産の全てが載せられたレシピ本。簡単な入門編から始まり、応用やその先まで書かれてあれば、謎に包まれた鉱石の採れる場所や鍛造方法・製造方法まで載っている。
育成の全て 分類:本 品質:A+
育成関連の全てが記載された立派な装丁の本。魔物や精霊ほか、全ての生きとし生けるものの育成方法が載っている。
どう考えても手に余る代物の数々がことごとく自身の手に渡っているのだが、当の本人はすごいのが当たったなあくらいにしか思っていなかったのであった。
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