花は示す 花は祝ぐ

ノベルバユーザー149578

お出かけ前

「そういえば、荷物とか持ってきてないんやけど。どないすればいいん?」
「女中に取りに行かせる」
「え・・・自分で取りに行くとかは?」
「ならば俺もついていく」


気分は旅館に泊まり込み。史月の話によると食事の世話から部屋の掃除に至るまですべて女中がやってくれるらしい。至り尽くせりも極まれりとはこのことだ。正直旅館よりも尽くされている。


さすがに手元にあるのが圏外の文字が立っているスマホだけじゃ心もとなくて、史月に声をかけてみると自分もついていくという。


(なんか花示様とか言われて大事にされてるっぽいんやけど、外出て大丈夫なん?)


うーんと首を傾げるひなこ。どう見ても長時間外に出たこともないような白い肌に、外に出ても大丈夫なのかと戸惑う。


家族のことは心配だが会える目途はついたし、家事は自分がいなくても兄弟が出来るし問題ないやろと思いつつ。ついでに家族の様子を見てこようと思っていたひなこは1人で大丈夫だということを史月に伝えようと口を開く。


「えっと、うち1人で・・・」
「俺も行く」
「外、出れるん?」
やしろの外に出たことはないな」
「え?」
「初体験だ」


全然出ないのではない。そもそもが出たことがない。え・・・と固まったひなこに、何を思ったのか史月は散歩に庭園を回ったことはあると付け加えた。そうじゃない。
頭が痛くなったように感じて、ひなこは頭を抱える。


「荷、取に行くぞ。ひな」
「ひなって・・・そんじゃあんたはふみか?」
「・・・好きに呼べばいい」


そうは言うものの、そわそわと嬉しそうに茶をすする史月に今さら「あ、チェンジで」なんて言えるわけもない。
ちらりと上目に史月を見ながら、なぜか甘いように感じるお茶をひなこはすすった。
こうしてひなこと史月、2人の初のお出かけが決定したのだった。

          

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