異世界から「こんにちは」
接吻と赤面
金色の三日月が夜空に映えて輝いている。
二階の自室の窓辺から身を乗り出して夜空を眺めているともの悲しい気持ちになる。
私はひとつ深い溜め息をこぼした。
バカだな私。なんで唐突にキスなんてしちゃったんだろ。
その時の光景が脳裏を駆け巡る。途端に自分の顔が火照ってきたことに気づいて頭をブンブン振ってかき消す。
それでも考えてしまう。私はただ救ってほしかっただけなのに……
誰かに愛したことも、されたこともない。
胸のチクチクはなんだろうか?
わからない、病気?
『辛い』が『幸せ』に変わるときはいつだろうか、もしも運命通りならば……私はもうすぐ殺される。しかし『幸せ』を知った状態で殺されるのだから、運命通りならば。
木目の見えた天井を眺めていた。
いろんな形の木目がある。海で激しく上がった波のような形、焦げ茶色の丸点などなどとにかく眺めていて面白い。
しかしそれも結局食傷してしまう。
そうすると思考は先程唇に感じた柔らかさに移ってしまう。
左に寝返りすると、廊下が見えている。
こうこうと照明を点けて明るい廊下。誰も部屋を通り過ぎることなく時間だけが過ぎていく。
「館は少女と俺だけか」
あちらが来ないのなら、こちらから行くことにしよう。
俺は起き上がりベットから降りると部屋を出る。もちろん少女の部屋を探すためだ。
こうこうと光る照明に照らされながら、廊下を進んでいく。
廊下自体は狭く、一人通るので目一杯の幅しかないようだ。
少女に連れられて来たときは気づかなかったのは、きっと少女の後ろ姿に見とれていたからだろう。
一歩踏み出す度に揺れる後ろ髪が、あまりにも艶やかで美しくて……いかんいかん立ち止まって思い出してる場合じゃない。
俺は剣士だ。勇猛で誠実な剣士だ。泣き言も逡巡も許されない。
その場で片手を強く握って、意を決した。少女に先程の唇に感じた柔らかさを尋ねてみようと。
「あぁ見つからねぇ」
ある程度館内は散策したはずだが、部屋をノックして存在を確認しながら次々に部屋を当たっていったが姿どころか生活感すらも覚えない部屋ばかりだった。
結局、自室の前に戻って来てしまったのだ。
その場に立ち止まって思考してみた。
まず少女は高等魔法を使える。異空間を造り上げてそこにいるという考えはどうだろうか?
あるいは俺だけ取り残し館から逃げ去ったか?
でも俺は少女がそんなことをしないと信じている。
「あら起きてたのね」
不意に前方から声が聴こえる。顔を向けると少女が先程とは違う服装のゆったりとした白のワンピースを身につけて微笑みながら立ってこちらを見ていた。
俺は少女に駆け寄るなり尋ねた。
「俺が部屋にいたときの唇に感じた柔らかいものはなんだ?」
真剣に尋ねると自信の両手を前に出して顔を真っ赤にしてわたわたしている。
「知ってることがあるなら教えてくれよ」
「違うのそれは……」
違う? なんのことだろうか?
「あのーなんというか……そうそう幽霊よ幽霊!」
出していた両手の片方の人差し指を立てて俺に向かってくる振っている。
幽霊か、それなら成仏させた方が?
「幽霊だからそれ以外有り得ないから……うん有り得ない」
視線を逸らして幽霊であること以外有り得ないと、自分で頷いている。
よく見ると額から汗を流していた。
「暑いのか? 顔も赤いし熱でもあるんじゃないか?」
「えっ、ああ健康そのものだよ」
首を横に振りながらそう答える。
心配だなぁ顔赤いし。
「ちょっとこっち向いてくれ」
「えっ?」
こちらに顔を向けてきた。俺は少女の前髪を退かしつつ額に手を置く。
どうやら熱は無さそうだ。
それなのに少女はもっと顔を赤く染めて、でもやっぱり熱い気がする。
さっきより熱くなってきている。
「もう私寝ますからっ! それじゃあ!」
俺から一歩後ずさって踵を返したように走り去った。
顔全面に加え耳まで赤くなってたけど大丈夫かな?
でも追いかけたらこないでっ、とか言われて魔法を放たれたりかけられたり……うううおぞましい。
高等魔法を俺の体が耐えれるわけない。
本人が熱じゃないと断言するならば、無理に納得させることもないと俺は足の進む先を自室に選んだのだった。
額に手を置かれて羞恥で全速力で私は駆けてきた。
無造作にドアを閉める。
自室に駆け込んできて電気もつけず、閉めたドアにもたれ掛かった。
はぁはぁ、息切れが激しい。 走ってきたからか心臓が締め付けられるように痛い。
あぁ胸苦しい、血流が速くなり手のひらがいつもより赤くなっている。
体が熱い、汗が止めどなく全身から溢れでている。
……私のバカ!
これは走ってきたからではない、想うから胸苦しいんだ、恥ずかしいから体が熱いんだ。
自分の胸を押さえてみる。服の上からでもわかるほど激しく速く鼓動している。
もたれ掛かったまま腰を下ろし、一回大きく息を吸い込んだ。
吸い込んですぐに吐き出す。何回も何回も繰り返し鼓動は正常の拍を打ち始める。
赤いじゅうたんの敷かれた床を一点に見つめ溜め息。
思考を他へ移した。
『幸せ』とは具体的にどんなもの?
きっと笑顔とかが場を埋め尽くした状態のこと、なのかな?
そして『幸せ』をもたらしてくれるのが一人の剣士、その人は名も知れない人だけど……とても格好よくて優しい人なのだ。
私にとっての運命の人。
そして私の大好きな人……ああもう!
不思議すぎる、私の額を無許可に触ってくる奴が運命の人なのよ!
なんでなのよ……ほんと……まぶたが重い……あああ眠い。
ドアにもたれて身を縮ませ座り込んだまま突然の睡魔に負けてしまった。
      
二階の自室の窓辺から身を乗り出して夜空を眺めているともの悲しい気持ちになる。
私はひとつ深い溜め息をこぼした。
バカだな私。なんで唐突にキスなんてしちゃったんだろ。
その時の光景が脳裏を駆け巡る。途端に自分の顔が火照ってきたことに気づいて頭をブンブン振ってかき消す。
それでも考えてしまう。私はただ救ってほしかっただけなのに……
誰かに愛したことも、されたこともない。
胸のチクチクはなんだろうか?
わからない、病気?
『辛い』が『幸せ』に変わるときはいつだろうか、もしも運命通りならば……私はもうすぐ殺される。しかし『幸せ』を知った状態で殺されるのだから、運命通りならば。
木目の見えた天井を眺めていた。
いろんな形の木目がある。海で激しく上がった波のような形、焦げ茶色の丸点などなどとにかく眺めていて面白い。
しかしそれも結局食傷してしまう。
そうすると思考は先程唇に感じた柔らかさに移ってしまう。
左に寝返りすると、廊下が見えている。
こうこうと照明を点けて明るい廊下。誰も部屋を通り過ぎることなく時間だけが過ぎていく。
「館は少女と俺だけか」
あちらが来ないのなら、こちらから行くことにしよう。
俺は起き上がりベットから降りると部屋を出る。もちろん少女の部屋を探すためだ。
こうこうと光る照明に照らされながら、廊下を進んでいく。
廊下自体は狭く、一人通るので目一杯の幅しかないようだ。
少女に連れられて来たときは気づかなかったのは、きっと少女の後ろ姿に見とれていたからだろう。
一歩踏み出す度に揺れる後ろ髪が、あまりにも艶やかで美しくて……いかんいかん立ち止まって思い出してる場合じゃない。
俺は剣士だ。勇猛で誠実な剣士だ。泣き言も逡巡も許されない。
その場で片手を強く握って、意を決した。少女に先程の唇に感じた柔らかさを尋ねてみようと。
「あぁ見つからねぇ」
ある程度館内は散策したはずだが、部屋をノックして存在を確認しながら次々に部屋を当たっていったが姿どころか生活感すらも覚えない部屋ばかりだった。
結局、自室の前に戻って来てしまったのだ。
その場に立ち止まって思考してみた。
まず少女は高等魔法を使える。異空間を造り上げてそこにいるという考えはどうだろうか?
あるいは俺だけ取り残し館から逃げ去ったか?
でも俺は少女がそんなことをしないと信じている。
「あら起きてたのね」
不意に前方から声が聴こえる。顔を向けると少女が先程とは違う服装のゆったりとした白のワンピースを身につけて微笑みながら立ってこちらを見ていた。
俺は少女に駆け寄るなり尋ねた。
「俺が部屋にいたときの唇に感じた柔らかいものはなんだ?」
真剣に尋ねると自信の両手を前に出して顔を真っ赤にしてわたわたしている。
「知ってることがあるなら教えてくれよ」
「違うのそれは……」
違う? なんのことだろうか?
「あのーなんというか……そうそう幽霊よ幽霊!」
出していた両手の片方の人差し指を立てて俺に向かってくる振っている。
幽霊か、それなら成仏させた方が?
「幽霊だからそれ以外有り得ないから……うん有り得ない」
視線を逸らして幽霊であること以外有り得ないと、自分で頷いている。
よく見ると額から汗を流していた。
「暑いのか? 顔も赤いし熱でもあるんじゃないか?」
「えっ、ああ健康そのものだよ」
首を横に振りながらそう答える。
心配だなぁ顔赤いし。
「ちょっとこっち向いてくれ」
「えっ?」
こちらに顔を向けてきた。俺は少女の前髪を退かしつつ額に手を置く。
どうやら熱は無さそうだ。
それなのに少女はもっと顔を赤く染めて、でもやっぱり熱い気がする。
さっきより熱くなってきている。
「もう私寝ますからっ! それじゃあ!」
俺から一歩後ずさって踵を返したように走り去った。
顔全面に加え耳まで赤くなってたけど大丈夫かな?
でも追いかけたらこないでっ、とか言われて魔法を放たれたりかけられたり……うううおぞましい。
高等魔法を俺の体が耐えれるわけない。
本人が熱じゃないと断言するならば、無理に納得させることもないと俺は足の進む先を自室に選んだのだった。
額に手を置かれて羞恥で全速力で私は駆けてきた。
無造作にドアを閉める。
自室に駆け込んできて電気もつけず、閉めたドアにもたれ掛かった。
はぁはぁ、息切れが激しい。 走ってきたからか心臓が締め付けられるように痛い。
あぁ胸苦しい、血流が速くなり手のひらがいつもより赤くなっている。
体が熱い、汗が止めどなく全身から溢れでている。
……私のバカ!
これは走ってきたからではない、想うから胸苦しいんだ、恥ずかしいから体が熱いんだ。
自分の胸を押さえてみる。服の上からでもわかるほど激しく速く鼓動している。
もたれ掛かったまま腰を下ろし、一回大きく息を吸い込んだ。
吸い込んですぐに吐き出す。何回も何回も繰り返し鼓動は正常の拍を打ち始める。
赤いじゅうたんの敷かれた床を一点に見つめ溜め息。
思考を他へ移した。
『幸せ』とは具体的にどんなもの?
きっと笑顔とかが場を埋め尽くした状態のこと、なのかな?
そして『幸せ』をもたらしてくれるのが一人の剣士、その人は名も知れない人だけど……とても格好よくて優しい人なのだ。
私にとっての運命の人。
そして私の大好きな人……ああもう!
不思議すぎる、私の額を無許可に触ってくる奴が運命の人なのよ!
なんでなのよ……ほんと……まぶたが重い……あああ眠い。
ドアにもたれて身を縮ませ座り込んだまま突然の睡魔に負けてしまった。
      
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