異世界から「こんにちは」
お姫様抱っこ
俺の住んでいる街の中央に草木が生い茂って一般人は誰も立ち入らない標高の低い山がある。五百メートルにも満たない。
神聖な山という噂もあるが実際のことを知るものは数少ないだろう。
しかし、こうして緑があるだけでも俺の気分は爽快だ。
風情があるというか、こうポツンと鎮座しているような感じが、見ていて気持ちいい。
まぁ、山のことは置いといて。
「太刀さん、買い物に行きましょう」
俺が帰ってきてからずっとせがんでいる魔法使いをどう説き伏せるか?
「ダメだリアン、服装がどこからどうみても変人だろ」
「またそうやって……いつも酷いです」
可愛く頬をぷくっーと膨らませた。
わざとやってるのだろうか?
「そうです、ウィーターホクス入りたいのですがよろしいですか?」
ウィーターホクスとは夢で見たかぎりでは大浴場みたいなものだったような?
「お客様、よろしいでしょうか?」
「いつから俺が客になった」
ふふっ、と微笑みを見せる。
「そうやって突っ込んでくれるところも好きです」
小声で何か呟いたが、聞き取れなかった。
「太刀さんが、服を私にプレゼントしてください。大切にしますから」
「ちょっと金銭的に」
「買えないなんて言わせませんよ。私の魔法で数を増やすことだってできるんですから……一時間だけ」
一時間したら跡形もなく消えるのか、それは犯罪だな。それだけは避けたいところだ。
仕方なく意を決することにした。
「近いうちに一式揃えとくからな。そうすれば自由に出掛けることもできるようになるだろう」
「ありがとうございます!」
満面の笑みで、心から嬉しそうだ。
そう笑ってくれるとこっちも笑いを溢しそうになる。
「眠いので寝ていいですか?」
「唐突すぎるだろ」
俺が許可を出す前に入り口傍の壁に付いているスイッチを押して消灯させてしまう。
うぅ真っ暗で何も見えない。
入り口の壁にスイッチの横にある小さな電球が赤く点ってスイッチの位置を教えてくれている。
まずは部屋の照明を点らせないと。
足下が真っ暗で進むのにも躊躇いがあるけどやむを得ず足を一歩前に出す。
どこに何があるか、記憶と感覚だけでそれか確認する。
手探りながらだが徐々にスイッチ近づいた。
そして、ついにスイッチに手が触れる。
その瞬間点灯と同時に背中に重みが掛かる。
すぐには眩しさでわからなかったが、目が眩しさに慣れると正体がわかった。
リアンがもたれ掛かってきていたのだ。
目を閉じ、スゥースゥー寝息を立てているので俺が動いたら起こしてしまう。
どうしよう?
背中にもたれ掛かっているので抜け出すとリアンが倒れて体のどこかを強打してしまうからできないな……そうだ!
俺は片手でリアンを起こさないように軽く手で押してスペースを作り、自分の体勢を翻してから壁から手を離し、背中が向いているリアンを手でえる。
ここまでは順調、ここからどうするか?
このままでは俺の腕が耐えきれないだろう。
仕方ないな。
俺はリアンを起こさないように床に寝かせて首の裏と膝の裏に腕を通し丁寧にお姫様だっこした。
うーん、やってみると意外と恥ずかしいものだ。
そして、寝室まで運ぶと布団の上に起こさないように寝かせてあげた。
リアンの寝顔を見るとそれは笑顔で幸せそうな顔だった。
リアンが軽くて良かったよ。
「風呂入って俺も寝るかな」
リアンの寝顔を背に浴室へ向かった。
太刀さんは照明を消して部屋を去ったことを確認。
どうやら『よくしつ』というところに行ったようだ。
私が寝てると完全に思い込んでた。おもしいろなやっぱり。
太刀さんがお姫様抱っこしてくれるように仕向けた巧妙で不自然さのない完璧な思惑だった。心の中でガッツポーズしちゃったよ。
太刀さんが居ない間に、家を散策してスイッチを発見して良かった、とつくづく思う。
色々物を壊したり割ったりしたけど、私の再生魔法があればすぐ元通りだからね。
再生魔法は『物』を自分の見た状態に戻すことのできる魔法。
でも一度無くなってしまったものには効果がないのが、ちょっと残念。
ナレク様はいつも冷静でしかし、ときより人間味を醸し出すような失態をしてしまう。
片目を隠すように垂らした黒い前髪が、うん今日も素晴らしい。
そんなナレク様の仕事それは……まず生きること。
ナレク様はこう言った「生存できなきゃ元も子もないでしょう」、とまるで人生の晩年を迎えたような、 あるいは戦線で戦友に語りかけるような、まぁとにかく今日も悠然としていてカッコいい。
職業それは黒服達の統制。
幻法の悪用を根絶することだ。
ナレク様は異世界から来たらしく、皆をまとめ指示を出しいい方向に持っていく能力に長けたお方なのだ。
そんなナレク様は今、自室のガラス状のローテーブルで書類を凝視しながらハクション、と部屋に響かせる。
「風邪でもひいたかな?」
風を引く?
意味深そうなことを呟いて作業に戻った。
ナレク様はたまに意味不明な単語や使い方をしてるな、と思う私だった。
神聖な山という噂もあるが実際のことを知るものは数少ないだろう。
しかし、こうして緑があるだけでも俺の気分は爽快だ。
風情があるというか、こうポツンと鎮座しているような感じが、見ていて気持ちいい。
まぁ、山のことは置いといて。
「太刀さん、買い物に行きましょう」
俺が帰ってきてからずっとせがんでいる魔法使いをどう説き伏せるか?
「ダメだリアン、服装がどこからどうみても変人だろ」
「またそうやって……いつも酷いです」
可愛く頬をぷくっーと膨らませた。
わざとやってるのだろうか?
「そうです、ウィーターホクス入りたいのですがよろしいですか?」
ウィーターホクスとは夢で見たかぎりでは大浴場みたいなものだったような?
「お客様、よろしいでしょうか?」
「いつから俺が客になった」
ふふっ、と微笑みを見せる。
「そうやって突っ込んでくれるところも好きです」
小声で何か呟いたが、聞き取れなかった。
「太刀さんが、服を私にプレゼントしてください。大切にしますから」
「ちょっと金銭的に」
「買えないなんて言わせませんよ。私の魔法で数を増やすことだってできるんですから……一時間だけ」
一時間したら跡形もなく消えるのか、それは犯罪だな。それだけは避けたいところだ。
仕方なく意を決することにした。
「近いうちに一式揃えとくからな。そうすれば自由に出掛けることもできるようになるだろう」
「ありがとうございます!」
満面の笑みで、心から嬉しそうだ。
そう笑ってくれるとこっちも笑いを溢しそうになる。
「眠いので寝ていいですか?」
「唐突すぎるだろ」
俺が許可を出す前に入り口傍の壁に付いているスイッチを押して消灯させてしまう。
うぅ真っ暗で何も見えない。
入り口の壁にスイッチの横にある小さな電球が赤く点ってスイッチの位置を教えてくれている。
まずは部屋の照明を点らせないと。
足下が真っ暗で進むのにも躊躇いがあるけどやむを得ず足を一歩前に出す。
どこに何があるか、記憶と感覚だけでそれか確認する。
手探りながらだが徐々にスイッチ近づいた。
そして、ついにスイッチに手が触れる。
その瞬間点灯と同時に背中に重みが掛かる。
すぐには眩しさでわからなかったが、目が眩しさに慣れると正体がわかった。
リアンがもたれ掛かってきていたのだ。
目を閉じ、スゥースゥー寝息を立てているので俺が動いたら起こしてしまう。
どうしよう?
背中にもたれ掛かっているので抜け出すとリアンが倒れて体のどこかを強打してしまうからできないな……そうだ!
俺は片手でリアンを起こさないように軽く手で押してスペースを作り、自分の体勢を翻してから壁から手を離し、背中が向いているリアンを手でえる。
ここまでは順調、ここからどうするか?
このままでは俺の腕が耐えきれないだろう。
仕方ないな。
俺はリアンを起こさないように床に寝かせて首の裏と膝の裏に腕を通し丁寧にお姫様だっこした。
うーん、やってみると意外と恥ずかしいものだ。
そして、寝室まで運ぶと布団の上に起こさないように寝かせてあげた。
リアンの寝顔を見るとそれは笑顔で幸せそうな顔だった。
リアンが軽くて良かったよ。
「風呂入って俺も寝るかな」
リアンの寝顔を背に浴室へ向かった。
太刀さんは照明を消して部屋を去ったことを確認。
どうやら『よくしつ』というところに行ったようだ。
私が寝てると完全に思い込んでた。おもしいろなやっぱり。
太刀さんがお姫様抱っこしてくれるように仕向けた巧妙で不自然さのない完璧な思惑だった。心の中でガッツポーズしちゃったよ。
太刀さんが居ない間に、家を散策してスイッチを発見して良かった、とつくづく思う。
色々物を壊したり割ったりしたけど、私の再生魔法があればすぐ元通りだからね。
再生魔法は『物』を自分の見た状態に戻すことのできる魔法。
でも一度無くなってしまったものには効果がないのが、ちょっと残念。
ナレク様はいつも冷静でしかし、ときより人間味を醸し出すような失態をしてしまう。
片目を隠すように垂らした黒い前髪が、うん今日も素晴らしい。
そんなナレク様の仕事それは……まず生きること。
ナレク様はこう言った「生存できなきゃ元も子もないでしょう」、とまるで人生の晩年を迎えたような、 あるいは戦線で戦友に語りかけるような、まぁとにかく今日も悠然としていてカッコいい。
職業それは黒服達の統制。
幻法の悪用を根絶することだ。
ナレク様は異世界から来たらしく、皆をまとめ指示を出しいい方向に持っていく能力に長けたお方なのだ。
そんなナレク様は今、自室のガラス状のローテーブルで書類を凝視しながらハクション、と部屋に響かせる。
「風邪でもひいたかな?」
風を引く?
意味深そうなことを呟いて作業に戻った。
ナレク様はたまに意味不明な単語や使い方をしてるな、と思う私だった。
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