ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
18-157.一つ聞いておきたいんだが
「ヒロ、じゃあ、あたいとリムは先に寝る。月が真上を過ぎたら起こしてくれ。そこで交代だ」
エルテからの地図の説明を一通り聞き終わり、明日のフォーの迷宮探索の作戦が決まった。作戦といっても何のことはない。目的地は迷宮の第三階層だ。地図に記された印を目指して真っ直ぐに進むという至極単純なものだ。モンスターとの戦闘は極力避け、魔力消費も最小限にする。危険を感じたら引き返す。これが基本だ。
明日に備えて交代で眠る。ソラリスがヒロに、自分が見張りをやるから、寝ておけといったが、ヒロは問題ないからと先をソラリスに譲った。
見張りは夜を二つに分けて行うことにした。前半はヒロとエルテ。後半の見張りはソラリスだ。リムは満場一致で朝まで寝させようということになった。
ソラリスがリムを連れだって、ふかふかの芝生に身を横たえた。野宿ではあるが、ヒロが張ったバリアの中だ。夜露に濡れることはないだろう。夜半に冷え込むようなら、焚き火をすればよいだけだ。無論、空気穴は開けておかねばならないが。
「おやすみ。ソラリス。リム」
ヒロの挨拶にソラリスが横向きに寝そべったまま腕を上げ、サムズアップで応える。しばらくすると、リムがスヤスヤと静かな寝息を立て始めた。
「なぁ、エルテ、一つ聞いておきたいんだが」
リムが寝入ったことを見届けたヒロがエルテに向き直った。どうしても聞いておきたいことがあったからだ。
「何でしょう?」
「君と闘ったとき、君は最後に青い珠を出してみせた。あの後、俺が張ったバリアが崩れ出したんだが、あれは、対防御魔法か何かなのかい?」
小悪鬼の矢や剣など全くうけつけなかったヒロのバリアが、いとも容易く剥がされた。青い珠の魔法についてはリーファ神殿でロンボクから説明を受けていたし、あの夜、シャローム商会でエルテから彼女自身の生い立ちを聞いた時も、そんな事を仄めかしていた。
周囲のマナを吸い取る恐るべき魔法が存在する。黒衣の不可触であるエルテがその使い手なのかどうか。それを彼女の口から確認しておきたかった。
「……神官魔法ですわ」
エルテは小さく首を振ってから答えた。
 
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