ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
18-153.行こうか、フォーの迷宮へ
――翌日、早朝。
エマの中央広場。エマの中心部に陣取るこの広場は住民の憩いの場所であると共に、朝は朝市のための多くの物資の荷降ろしをする場所でもある。ヒロ達はここでエルテと待ち合わせすることになっている。寝ぼけ眼のリムを連れだって、ヒロ達が広場に来たときには、すでにエルテが待っていた。
「待ったかい? エルテ」
「いいえ、先程来たところですから」
ヒロの問い掛けにエルテが微笑む。
エルテは純白のローブを身に纏い、手した長い錫杖の端を地面に付けていた。代理人の証である白いサークレットを付けていたが、代理人で有ることなど全く感じさせない。その雰囲気はウオバルのリーファ神殿でみた神官そっくりだ。
「いかにも神官様といった格好だね」
「有り難う御座います。他の方にもそう見ていただければよいのですけれど」
ソラリスの評価にエルテは礼をいう。
「エルテ、俺のパーティでは、見習い神官ということにしておこうか。元々、君は神官教育を受けていたそうだし、大丈夫だと思う。万が一怪しまれたとしても、見習いということにしておけば、誤魔化せるさ。それにその格好はその積もりでいるんだろう?」
「えぇ。それにヒロさんのパーティには神官はいらっしゃらないということでしたから、私がその役目を出来れば、と」
「神官は冒険者の中でも引っ張りだこだと聞いている。歓迎するよ」
「エルテさん。私と同じ見習いですね」
エルテはヒロとリムに頷いて見せる。
空は雲一つない快晴。ヒロのパーティ初のクエストには幸先のよいスタートのようにみえた。
「皆、持ち物は大丈夫か」
広場にくる前にヒロ達はカダッタの所に寄って、十日分の食料を受け取っていた。準備は整っている。
「いいぜ、ヒロ」
「ヒロ様、行きましょう」
「よろしくお願いしますね。ヒロさん」
ヒロはソラリスとリム、そしてエルテの顔を見てから、一つ深呼吸をする。
「じゃあ、いこうか。フォーの迷宮へ」
ヒロのブーツが力強く地面を蹴った。
 
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