ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】

日比野庵

17-148.これを持っていけ

 
ロンボクロック、まだ此方ウオバルにいるのか?」
「あぁ、暫くは大きなクエストもないからね。いや、もしかしたら何日か離れるかもしれない」
「うん?」
「万が一の救援クエストをギルドから打診されていてね。その時は……」
「誰のだ?」
「最近知り合った冒険者がパーティを組んだらしくてね。フォーの迷宮探索にいくんだそうだ」
「フォーの迷宮?」
「そう。目的は知らない。そのパーティにはソラリスが入っているから心配要らないと思うけど、十日経っても戻って来なかったら救援に来て欲しいというバックアップのクエストさ。依頼主はソラリスだ。相変わらず慎重だよ、彼女ソラリスは……」

 そこまで言ってロンボクは一瞬しまったという表情かおをした。ソラリスの事を慎重だと評したことが、ロッケンに対する当てつけになってしまったのではないかと思ったからだ。だが、ロッケンはそうとは受け取らず、ベッドの横の棚を指さした。

「あの箱を取ってくれ、ロック」

 棚の上には細長い木製の箱が置いてあった。焦げ茶色の表面の下半分に唐草模様のような彫り物がしてある。ロンボクは慎重な手付きで箱を取り、ロッケンの膝元に置いた。

 ロッケンが箱の蓋を開けると中に手首から肘くらいの長さの杖が入っていた。先端には透明な六角水晶が填めこまれ、根元を赤と青の宝玉が囲んでいる。その直ぐ下には翼を模した金属製の飾りがあしらわれていた。杖は水晶の反対側にいくにつれて細くなり、先端は丸まっていた。魔法使いであれば、誰でも魔法の杖だと分かる代物だ。

「これは、破門になったあのとき、師匠から戴いたものだ。体内マナオドを増幅して魔法発動を手助けする力がある。これを持っていけ。不可視や幻影の魔法なら、体内マナオドの消費を気にせず使えるだろう」
「しかし、これは師匠から君に……」
「魔法も魔法具マジックアイテムも、人の役に立ててこそ意味がある。師匠がいつも言っていただろう。役に立つと思うからお前に渡すんだ。それに俺は……」

 だが、ロッケンの言葉は、不意に遮られた。ロンボクが振り返ると、隣のベットで寝ていたミカキーノが体を起こしていた。

「ミカキーノさん」
「ロンボク、さっきフォーの迷宮といったか?」

 ミカキーノの鋭い視線がロンボクを射抜いていた。
 

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