ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】

日比野庵

15-129.本物の地図なんざぁ、十枚に一枚あればいい方だ

 
「確かに、道具屋やギルドにいけば迷宮ダンジョンの地図は手に入るさ。冒険者の中には、そういう所に行って地図を作って、それを売って小銭を稼いでいるのもいる。だけど、その殆どは適当にでっち上げた地図インチキなんだ。仮に本物だったとしても、お宝の場所なんざぁ書いてある訳がねぇ。だいたい迷宮の奥深くに入って、地図を作れる程の奴がそのまま手ぶらで戻ってくるとでも思ってんのか?」

 ソラリスの指摘にヒロははっとした。地図そのものが嘘の可能性もあるのか。元の世界では、地図は正確なのが当たり前だった。それだけに、地図そのものを疑うという発想は浮かばなかった。完全に盲点だ。ヒロはソラリスがベテラン冒険者であることを有り難く思った。

「……それもそうだな」
「本物の地図なんざぁ、十枚に一枚あればいい方だ。増してやお宝を書いた地図モノホンなんて、あたいは見たことないね」

 ソラリスは足を組んで、かぶりを振った。話にならないといった風だ。

「ヒロ様。エルテさんってあの時の代理人マネージャーさんなんですよね?」

 じっと話を聞いていたリムが屈託無く尋ねる。エルテが水晶玉でヒロの体内マナオドを測定した時の事をリムはしっかりと覚えていた。

「あぁ、そうだが」
「エルテさんってもの凄い魔法使いですよ。だって、あの人の水晶玉には、超強度の対魔法結界が張ってありましたから。結界を破って、ヒロ様に魔法干渉するのが、全然間に合わなかったです」

 あれはタイミングが遅れた訳ではなかったのか。ヒロは一瞬だけエルテの水晶玉が赤く光ったのは、リムの魔力干渉が遅れたせいだと思っていたのだがその原因が、エルテの結界のせいだったとは。そういえば、エルテは自分を襲ったときもマナを吸収する魔法ドゥームを使ったと言っていた。彼女エルテの風魔法の威力といい、並の使い手ではないことは間違いない。何せ彼女エルテは一人でスティール・メイデンを退ける程の実力者なのだ。そして何より、ヒロには、レーベの秘宝には天空を渡る力が秘められていると説明したエルテの言葉が心に残っていた。元の世界に帰る手掛かりになるものなら、手に入れて置きたい。この時のヒロは、いつもより、少し興奮していたかもしれない。

「リム、ソラリス。明日、一緒にエルテに会って呉れないか。石板と地図を見せて貰って詳しく話を聞こう。このクエストを受けるかどうかはそこで決めたい」
「はい、ヒロ様」

 リムは直ぐに承諾してくれたが、ソラリスは何か思案しているようだった。

「……仕様がねぇな」

 ソラリスは宙を見つめたまま面倒くさそうに言った。
 

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