転生先は現人神の女神様

リアフィス

40 収穫祭 5 懐かしきあの子と未来の国

川沿いに森……?
創造神様に言われた通り、《月の魔眼》で川を上ってい……こうとしたらなんかいた。

種族:月精霊針鼠ルナエレメンタルヘッジホッグ
称号:月の民

うん、猛スピードで走ってる。凄い、なんだろう、面白い?
手のひらサイズのハリネズミが川沿いを跳ねるように走ってる。早すぎて笑う。
この世界のハリネズミはこんななのだろうか。
だが、正直笑えない事がある。

スキル
【???】
    《Unknown》
【種族】
    《精霊体》《月の祝福》《月の魔法》
【固有】
    《スタイルチェンジ》《变化の秘術》
    《忌月の魔眼》《闘気の魔眼》《霊魂の魔眼》《解析の魔眼》
【所持称号】
    一般
        [月の民]
    固有
        [転生者]

なんだ、Unknownアンノウンって。
《スタイルチェンジ》に《变化の秘術》なんて私の知識にない。
しかも[転生者]。挙句に[月の民]ときた。
一体何したんです? 創造神様……。

まあ、過去を見て分かってしまったのだが。
……そうか、お前も来たのか、シロニャン……。

「ブリュンヒルデ、少し待ってなさい」
「? 分かりました」



国を囲っているルナフェリアの作ったファーサイス魔導城壁。この城壁から外を見張る防衛部隊と言われる者達がいる。まあ、治安部隊の一部の者達なのだが。
北は川と聖域のある森があるが、村や街と言った物がないのでわざわざ北門を利用する者がいない。その為他の門に比べればかなり平和である。

そんな北門に客が現れた。
それは体が白く、薄っすら青みがかった銀色のフサフサの毛を持ち、目は紫の……ネズミだった。
物凄いスピードで川沿いを走り、城壁の前でズサーと停止した。
それで慌てて騎士達が来たが、この城壁はルナフェリア特製である。魔物だったら当然門で弾かれる事となる訳だが、そのネズミはトコトコと短い足で滑るように、軽くお尻を振りながら門に近づき、剣に手にかけいつでも抜けるように見ている騎士達をキョロキョロと見渡した後、普通に門を通過してしまった。
一瞬キョトンとしてしまった騎士達だが、はいそうですかとスルーする訳にもいかない。その為一旦捕まえようとするが、そのネズミはあろうことかすぐさま右折し、彼ら騎士達の師匠ルナフェリアの土地目掛けて突っ込んでいった。
ネズミは結界があることを知っているかのように張り付き、寂しそうな鳴き声をあげていた。

「ちゅいー……ちゅいー……」

騎士達が顔を見合わせ、『とりあえず捕まえるか』となった時、ネズミの後ろに女性が現れた。
その際転移を察知したネズミは振り返り、女性を見つめた。

「シロニャン……」
「ちゅいー!」

ネズミではあり得ない大ジャンプをし、女性の胸元へ飛び込み、甘えるように「ちゅいちゅい」鳴きながら、すりすりしていた。女性もそんなネズミを受け止め、目尻を下げ撫で撫でしていた。



「まさかこんなところまで付いてくるとわ」
「ちゅいっ!」
「《精霊体》持ってるなら雑食か。契約はもう少し後にしましょう。食べ歩くぞー」
「ちゅい!」

シロニャンを抱えたまま、ブリュンヒルデのところへ転移する。
騎士達は少し止まった後、何事もなかったかのように仕事に戻っていった。

「……お戻りですか。そちらは?」
「私が前世で飼ってたペットよ」
「ちゅい!」

シロニャンは鳴き声と共に片足上げ、『よっ!』的な動きをする。

「……え? では……」
「ある意味転生者ね。知能は人並み……と言うか、思考速度は人間以上ね。まあ、この子については後でゆっくり、纏めてするわ」
「かしこまりました」

2人と1匹で王都をうろうろし、目に付いたものを片っ端から買って行く。
シロニャンが手の平の上で立ち、前足で器用に持ってモグモグするのがこれまた可愛い。と言うか、よく見ると可愛くデフォルメ気味のハリネズミだな……。まあいいや。可愛いは正義。

「美味しいのは確かだけれど、少々不満ね……」
「……お聞きしても?」
「香辛料の種類のせいでしょうね……。工夫は感じれるけど、どうしても味が似てしまう。結果的に飽きが来る」
「なるほど……。この国で一般的なのは、南で採れるソルトクラブからの塩とオリーブ。後は他国から仕入れる胡椒ぐらいですからね……」
「私の土地で栽培してる物は売るには足りないし、仮に売れる分だけ作っても品質的に他から仕入れるのと同じぐらい、下手したらそれ以上の値段になるだろうから無意味だし」
「香辛料は前々からの課題なんですよね……仕入れようにもあしも……いえ、忘れてください」
「まあ、国の問題だからね。私が建国次第解決すると思うけど」
「えっ?」

うむ、やはり香辛料。十分金になりそうだ。人間に食は必須。食料品は割と安い世界だが、香辛料は別である。代わりに武器などの金属類が高い。採りに行くのも命懸け、加工は専門技術だ。
さて、2人の精霊が目覚めそうだな。帰るか。


「おきたー!」
「おはようトネール。グラースも」
「おはようございます」

ふむ、精霊王止まりか。皇女まではもう少しかかりそうだな。
スキルは《氷魔法》と《雷魔法》になっているだけで、他は同じか。
《月魔法》は凍る世界フリーレンワールド荷電粒子砲エレクトロキャノン。だが、2人にはまだ早いな。とは言え《月魔法》自体が威力過多なので使用禁止だが。
操作系の能力もないようだ。実は皇女専用だった可能性。もしくは水と風の発展型と言える氷と雷だからだろうか? その辺りは流石に私でも分からん。

さて、次はシロニャンと契約だ。
えっと……《従魔契約》? それとも《精霊契約》……?
マナでできた体の場合《精霊体》ってだけで、精霊だからそれを持つわけじゃないんだよね……。試せばいいか。違ったら通らないし。
シロニャンを両手で抱え、《精霊魔法》の"フェアトラーク"を試したが、ぷいっとされた。
続いて《従魔魔法》の"テイム"を試しても、ぷいっとされた。
なぜだ。

「ちゅいちゅい! (女神の直属がいい!)」

……はて? 【魔法】にそんなもんはないから、スキル系か? んな訳がないか。女神の直属……これか! ああ、こんなのあったんですね。完全にスルーしてましたわ。正直女神としてどうかと思う。自分のことだけど。

権能
    神々が持つ力。
    スキルや魔法なんて物ではなく、世界に影響を与える神の権限。

こんな物があったようだ。魔法にかまけて見落としてたわ。はっは。……半年もな。前世で言うと1年気づかなかった間抜けである。女神としての自覚が無かったのか、そもそも余り興味が無かったのか。まあ、気づいた訳だし良しとしよう。ぶっちゃけ、見た感じ使うことはほぼ無い。

1.神の眷属
    対象の魂と特殊な契約を結ぶ。
    眷属となった者は膨大な力を得るが、その器ではない場合死ぬことになる。
    契約した神の不利益になる行動が一切取れなくなる。
    今後共にする事になる為、お互いよく考えるように。
2.加護適応範囲の設定
    各神が司る物に応じた加護の設定。
    現在の適応範囲:世界中の生物。
    月神の加護:魔力を扱うことができるようになる。

今与えられている権能はこのぐらいか。
シロニャンが言ってるのは眷属のことだろう。器じゃないと死ぬらしいんだけど、創造神様経由で来てる訳だから、恐らく平気だろう。
問題は加護の方だ。これ加護の適応範囲を変えたら凄いことになりそう。信仰者のみとかにしたら、その人達以外魔力を扱うことができなくなる訳で。そうなると《身体強化》すら碌にできなくなるぞ? 割りと適応範囲は自由なんだな。今は弄らないでおこう。

「シロニャン……眷属契約ね?」
「ちゅいっ!」
「一応聞くけど、大丈夫なの?」
「ちゅいちゅい! (創造神様がそうしろって)」
「分かった」

確かに創造神様と話した後があるし、元々そのように調整されているようだ。
シロニャンと眷属契約を結ぶ。名前は当然シロニャンのままだ。変えるつもりはない。
名前を付け直し、契約を結ぶと座っている私の下腹部に頭を乗せて最適化に入った。

『ありがとうございます』
『いいのよ』


暗くなり帰ってきたジェシカとエブリンを交え、シロニャンについて話をする。
前世で捨てられ、死にかけていたところを拾い、家で飼っていた事。
そして数年経ったある日、私が死んでしまった事。
この子の過去を見る限り、息子家族がシロニャンを引き取ったようだが、私にもう会えない事を悟り、余り食べずに死んだらしい。その後、創造神様がこの子も転生させたようだ。

シロニャンのスキルについてだが……。
《月の魔法》は《月魔法》の事ではなく、私の持つ《月の魔導》の下位互換のようだ。マナ系統は無いが、魔力操作系についての補正が入る、月の民が持つスキル。
《月の祝福》は私も持っているがマナや魔力に関する効果が上昇するスキルだ。まあ【魔法】系に補正が入ると思っていればいいだろう。

問題は固有スキルだ。これがまたぶっ飛んでいる。私と眷属契約する前提の、私が手綱を握る前提で与えられたスキルだろう。普通にあったらやばすぎる。
これが簡単な説明。

《スタイルチェンジ》
    戦闘モードと通常モードを切り替える。
《变化の秘術》
    このスキルを使用し、亜空間での戦闘に勝利した対象に変化が可能となる。

《スタイルチェンジ》は単体だとどうでもいいが、《变化の秘術》との組み合わせ前提だろう。
《召喚魔法》にある"オーディール"と似ているのが《变化の秘術》だ。"オーディール"は召喚可能になるが、《变化の秘術》は自分がそれに变化できるようになる。
そしてこの变化だが……《スタイルチェンジ》と合わせることで、通常モード時はハリネズミ、戦闘モード時はドラゴンなんて事ができてしまう。当然状態は記録される。
つまり、予め戦闘モード時に《変化の秘術》で変化しておけば、いざ戦闘になった時《スタイルチェンジ》するだけでハリネズミから別の姿へと変わるということだ。
これは《スタイルチェンジ》の隠し効果のような物で、《変化の秘術》の秘術足る所以は、変化した対象のスキルまでも使用可能となる事だ。ドラゴンなら《竜魔法》や《竜眼》すら再現される。
まあ、"オーディール"のようにシロニャンがタイマンで勝たないとダメなんだけど。

シロニャンのスキル表記がUnknownアンノウンになってるのはこのせいだろう。
アップデートはよ。シロニャンの表示に対応してない。

忌月きづきの魔眼》は威圧、魅了、狂気のセットらしい。月の裏の顔だろうか。

そして、今回の眷属契約でどうなるか分からん。種族変わるんじゃないかなぁ……。
とは言え、起きるのを待つしかない。


「明日が最終日か。満腹がないから際限なく食べられたし、のんびりするかな」
「収穫祭が終わり次第、ベリアドースですか?」
「……正直な話、国作る気満々だから冒険者どうでもいいのよね……」
「冒険者どころじゃ無くなりますもんね……」
「まあ、条件がゴミだったら蹴って抜ければいいわ。国は人類呼ぶと絶対碌な事にならないから、しばらく忙しいでしょうしね。国に関して何も言って無かったわね?」
「聞いてないですね」

一応国について考えてはいるのだけれど、どーなることやら。所詮一市民だったからな。
とりあえず、私の独裁政治だ。私が全て管理する。面倒だが、他に任せる方が後々面倒だ。
国はダンジョンを基点にする。魔物素材、鉱石、香辛料、これら全てが金になる。
ファーサイスとの交易で、向こうから野菜、こちらから香辛料だ。魔物の肉も考えなくはないな。間違いなく国王は許可するだろう。この際商業国であるマーストも巻き込む。マーストを巻き込み、香辛料が採れるのだから商業ギルドも黙ってないだろうしな。金になるなら動くだろうよ。
更に魔物素材と鉱石も出るんだ、生産ギルドのあるテクノスも黙ってないだろう。こちらから話を持って行く気は無いが、ギルドを置きたいというのなら別に構わん。
ダンジョンには当然冒険者達に潜ってもらって、色々持ち帰って欲しいものだ。ただ、問題がある。ダンジョンの難易度もそうだが……SSSランクの条件がゴミだったら抜ける気満々だ。そうなった場合、冒険者ギルドの受け入れは癪よな。その場合も考えておかねばならん。

絶対創造神様は遊ぶ。つまり、ダンジョン内は色々新しい物が出る可能性が高い。新しい物は欲しいだろう? 冒険者達は高値で買い取って貰える訳だし。テクノス、生産ギルドはそれらの研究。商業ギルドは加工品だったりを売り捌けば儲けるだろう。

ギルドや何やらの所謂公共施設に関しては、私が作る予定なので金はかからんし、早々ぶっ壊れることもないだろう。それはつまり維持費が減る。
軍も不要だな。強いて言うならパトロールする治安部隊がいればいい。こいつらは歩き回りながら暴れた奴らを捕まえるだけでいい。どっちが悪いかは《真実の魔眼》で見ればいいからな。隠し事が一切不可能だ。誤認逮捕はあり得んよ。治安部隊は私の前に問題児を突き出すだけ。もしくは私が行くまでに耐えるだけ。戦争? 私が消し飛ばします。
ああ、そうそう。教会……いや、法国だな。お前はダメだ。我が国には不要です。

「……そう言えばジェシカにエブリン。貴女達って『各地を巡りながら治療する』のが目的なの?」
「?」
「あー、ジェシカはそこまで考えて無さそうですね。それに今までは『各地を巡りながら治療する』しか選択肢がなかった、感じです」
「ふむ、それなら……」
「あー、そういう事ですか。そうですね。『やたら高い治療費の要求』や『種族差別』が気に入らないから出てきたので、『各地を巡りながら治療する』しかありませんでした。どこかの国に……となると、結局教会などが絡んでくるので意味ないんですよね」
「教会や聖堂がある限りどうしても法国が邪魔になる訳だ」
「はい……」

こういった会話はジェシカよりエブリンの方が得意である。元上流階級のご令嬢だからな。私が聞きたいことを読むのが早い。
そして、これなら2人は国ができ次第、我が国に治療院やら用意すればよさそうだ。値段設定は赤字にならない程度に好きにさせよう。

我が国は種族関わらず受け入れる。亜人と言われる半人半魔の奴らも問題ない。
大体はファーサイスと似たような感じで行くが、精霊や妖精種に手を出した者や、国に生えてる果実に手を出す者はその場で処分する。精霊はともかく、妖精種の悪ガキはお仕置きだな。
我が国は精霊と妖精種がメインで、人類はおまけだ。問題をおこさないなら好きにするといい。
悪さするつもりなら命かけろ? 人殺すのに躊躇いなんかないからな? 内容によっては『国』に報復する気満々だ。こんな見た目してますが、どちらかと言うと脳筋です。売られた喧嘩は喜んで買います。財力? 権力? 武力こそ至高。死んだら意味ないよなぁ?
裏から手を回す? 《真実の魔眼》で1人ずつじっくり排除していきますね。次は誰かなぁ?
私から逃げたかったら異世界でも行くといいよ。行けるといいね。私でも異世界転移は無理だ。

「ええ、そんな気はしていました。ルナフェリア様、騎士達と訓練する時ルンルンですよね……」
「うん、楽しい」
「ハァ……」

何かすんごいため息吐かれたんだけど?
大人しそうに見えるかもしれんが、そんなことはないぞ? 動かないのは動く理由がないか、面倒だからだ。自分の体が老化で動かないから、伊達にダイブ型のVRゲームでハッスルしてないぞ?
そのおかげで戦うことには慣れてはいる。ゲームする時大体脳筋プレイなんだけどね。体を動かす近接が楽しいのなんの。まあ、今の体は魔法型な訳だが身体能力的に問題ないから、近接が手加減も楽だし丁度いいと言えば丁度いい。
作ったあの杖、魔力流して先端に浮いてるルナクォーツの部分に、魔力刃作ればいいな。槍に斧……ハルバードもできるな。薙刀何かもできる。本来の杖が身長の倍ぐらいあるから、長物系なら問題ない。杖の素材もルナクォーツとルミナイトだから、魔力流して使う前提の為強度は問題ない。
小さい人が大きな武器をぶん回してるのはロマンだよね。女神の体な私はそれができるので、ロマンに走ります。

明日はのんびりしながら、移動手段を考えるか。とは言え、そんな選択肢はないんだが……。
おやすみ!

◇◇◇◇

収穫祭最終日。

枕元に置いといたシロニャンを頭の上に固定し、行動を開始する。

「カツ作るか。……竜カツね」

シードラゴンの肉を油でカラッと揚げる。とは言え、ソースがないからな……肉に下味付けるか。お昼はこれですね。醤油はあるし、大根おろしで食べてもいいな。

シロニャンを撫でつついつも通りぐでっとしながら、考え事に没頭する。
ベリアドース大国にどうやって行くかだが、この世界は移動が馬車、もしくは徒歩だ。冒険者ギルドで護衛任務でも受けて商人と移動するのもありだが……自分で馬車作ってのんびり行くのもいい。
さて、どうするか。馬車を引かせるのは召喚するなり、《人形術》で作ってもいいからどうにでもなる。そうなると作ってしまった方がのんびりできるか……。
ブリュンヒルデは城に戻るだろうから3人と1匹旅だろ……作るか、馬車。移動する方向に確実に依頼があるとも限らんしな。馬車あっても護衛依頼は受けれるだろうし、問題無いだろ。

さて、馬車……馬車か……。どんなのにしようかな……。
……1室そのまま車輪付けて馬車にすればよくね? よし、その線で行こう。えっと……馬車のサイズは……確か城のこの辺りに馬車が……あったあった。

素材はどうするかな……。アダマンタイトは重すぎるか? 重力魔法で軽く……消費があれか。となるとやっぱ合金が安定か? 流石にどの合金がどんなのに向いてるか何か知らんぞ……。完全に専門知識だからなぁ。ステンレスだと強度が心配か? 『雑魚魔物の攻撃でおじゃんになりました』じゃ困るんだよ。いっそ自分で試しながら作ってやろうか……。
世界の法則が微妙に違うしな……少し試してみるか。


一番硬いのはアダマンタイト……ただ、一番重い。
純粋な魔力を持たないルミナイトは鋼と同じぐらいなので微妙。
ミスリルも魔力を持たないと鉄と同じぐらい……か。
そう言えば超高純度鉄ってのがあったな? 私なら《物質創造》で簡単にできるが……。
ミスリルだけで作られた武器はかなり高く、大体鉄と混ぜて鋼とミスリルの合金で使われる……。ミスリルだけの方は普段は柔らかいが、一定量の魔力さえ流せばかなりの物。逆に言えば、一定量の魔力を流す技量がないなら合金の方がいいらしい……。ルミナイトはミスリルの完全上位互換と言える。
しかし、鉄は魔力適正が死んでるんだよな……それをミスリルでカバーし、ミスリルの強度の無さは鉄でカバーしているようだが……。超高純度鉄は魔力適正が死んでる。

ふーむ……?
魔法法則により魔力が何かしているのか、魔力に反応する何かをこの世界の金属が持っているのか……はたまたその両方か。さて、どっちだろうか。
金属によって魔力適正が変わるんだから、反応する何かを持ってると考えた方がいいだろうか。
それならその反応する何かさえ分かれば……? 何個かインゴットをガン見するか……?

「「ご飯ー!」」

ヴルカンとシルヴェストルによる顔面張り付きをくらった。もうお昼ですか。早いですね。
ナイフを使わず箸で千切れる竜カツを堪能し、再開だ。


うーん……早々うまくは行かない物で、魔力に反応する物は見つけた。見付けたはいいんだけど、これを《物質創造》で出しても意味がない。
元素……分子……原子? この場合は……元素か。元素記号って言ったはずだからそうだな。
むむむむ……ああ、そうか、そうだな。アダマンタイトの構造をこの謎元素で再現してみる……。
……何もおきねぇ!

ぐぬぬ……そう言えば、魔晶石見てみるか。あれマナの結晶だったよな。
魔晶石ー魔晶石ー……これ、ダイアモンドのようなもんか? ……あ、殴ったら砕け散った。粉のような部分は消えて、マナに帰った。塊は一応残ってるか……ふーむ。
何気なく見てたエブリンが「大金がー!」とか叫んでるけど、スルーしとこう。その辺に転がってんだろ。
うーむ……できねぇ!

「「ご飯ー!」」

またかっ! 集中してる時でも容赦ねぇなこいつら。まあ、気分転換にはなるんだけど……。
もう夜ですか。面倒だし昼と同じのでいいや。美味しいからいいよね。


さて、やろうか。確か謎元素でアダマンタイトの構造を真似したけど無駄だったな。
魔晶石をよく見てみるか……。これは……マナだよな……これなんだ? ……周りのマナが邪魔だ、見えんだろうが。シッシッ。マナと……よく分からんこれが交互になってる? ふぅん……物は試しだ。

魔力に反応する謎元素と、マナと交互になってた謎元素を使って、アダマンタイトの構造を真似ると……? 何も起こりませんでしたー。ちくしょうめ!

次だ次!
さっきのやつにマナも組み込んじゃろう。3個を使ってアダマンタイトの構造を真似る。
すると……手のひらにころっと半透明の物体が現れた。
えっ! なんかできた! ってこれ魔晶石じゃねぇの? 魔晶石を作ってる奴に謎物質加えて、アダマンタイトの構造にしただけなんだけど?


名前:Unknownアンノウン
品質:Unknownアンノウン
Unknownアンノウン


何かきた! 世界初じゃね!
ちょっとマナのところ神力にしてみようぜ!


名前:={>?*{=)’”%#+><*!?”{$=
品質:@:」¥ー「¥:・、」
「」@。」・「¥、^-¥^」。・¥;「、」l@kp)#’&$=%~+*>}`}*+~


………………………"ストレージ"に封印しとこうと思う。

『……創造神は見た』

ビクゥッ!

『ほんとすみませんでした』
『……神力の扱いには気をつけるように。完成品に与えると神器になるけど、生成に使うのはNG』
『いえすまむ』
『後者は封印しとくとして、面白いものを作ったわね……ふむ……ダンジョンに採用しよう。人類に加工できるか分からないけど……』
『私性能分からないんですけど?』
『ふむ……ちょっと待って』
『はい』

創造神様に怒られて一気にテンションが下がった。が、調子に乗ったことは間違いないのでなんとも言えねぇ。

『これでいいかしら?』


名前:マナタイトクォーツ
品質:高級
世界最高の硬度を持つ星晶石せいしょうせき
魔晶石と似ているが全くの別物。魔石系ではなく鉱物系に位置する。
アダマンタイトより硬く、軽い最高の鉱物。
加工は非常に困難だが、最高の武具になるのは間違いない。


『おおー……馬車にしようと思ったけど、先に武器作ってみようかな……』
『月神が馬車を作ろうと悪戦苦闘して生まれた鉱石』
『『………………』』
『……真実は封印しておきましょう』
『……そうしてください』
『マナタイトクォーツはね……簡単でいいか。全ての物は小さい粒から出来ている訳だけれど、マナタイトクォーツはその粒の結合にマナが関与しているの。アダマンタイトの構造で普段から頑丈。ただ、それその物がマナのエネルギーを持ってる訳だから、魔力は受け付けないわね。それに、魔装具にすると、結合エネルギーがそっちに吸われて自壊する。工夫が必要ね』
『ふぅむ……』
『そして、加工は《魔導工学》一択ね。マナのエネルギーでくっついてるのを剥がすのは《魔導工学》でも難しいけど、それ以外には無理でしょう。加工の難しさと入手方法を除けば本当に素晴らしい物ね。見た目も水晶だから綺麗だし。ダンジョンのかなり奥にやっとこうか……マナタイトクォーツフィールド! 実は採取可能。アダマンタイトのツルハシでもツルハシが折れるけどね』
『しかし、何で白に? 魔晶石の様な薄緑じゃ無いんですね』
『聞きたい?』
『……いえ、やっぱいいです。こういう物と認識しておきます』
『そうしておきなさい。マナの塊と言うよりは、エネルギーその物の色とでも思っておけばいいわ。結合している力が白く見える。そう思っとけば十分』
『なるほど、分かりました。ダンジョンはどうですか?』
『やろうと思えば今からでもできるけど、分身体の方よね?』
『早いですね……。今分身体が立っているところですね。サイズが分からないので勘ですが、空き地にしてあります』
『入り口は亜空間転移門を置くだけだからどうにでもなるけど、どんな外見がいい?』
『湖や果樹、何か御神木まであるので、それに合うようにお願いします』
『森の中の遺跡風にするか……いっそ神殿風に…………まあ、近いうちに出すわね』
『ええ、お願いします』
『《物質創造》は私の力。イタズラに使わないように! じゃあねー』
『……いえすまむ』



さて、イタズラを発見された子供のようになってしまったが、本題に入るか。
とりあえずマナタイトクォーツを量産して、グノームに頼んで最高級品にしてもらおう。

そしたら、まずは剣だな! んー……ロングソードかな……? 細身にしよう。どでかいのは杖があるので、シンプルなスラッとした剣を作りましょう。それでも刃渡り90センチ以上だっけ? 私の身長と大差無いんだよな……。まあいいや、かっこよく行こうぜ。
マナタイトクォーツしか使う気が無いので、全体が透き通った白い水晶だな。
素材自体が派手なので、デザイン的にはシンプルに……刀身は1メートル程の両刃で細身。根本から中央付近まで微かにヘコませ、中央付近で膨らませ、また先端付近まで微かにヘコませ、先端付近でまた膨らます。そしてそのまま先端の方は尖らせ、剣先に行くにつれよーく見ると微かに波打ちながら細くなっていく。
って、確かに加工が難しいな。これは苦労しそうだ。
鞘も当然マナタイトクォーツで作る。刀身より鞘の方が脆かったら意味ないわな。
いっすねー、水晶剣。問題は一見クソ弱そうに見えることか。簡単にへし折れそう。
うむ、完成か?


デュランダル アーティファクト
    ルナフェリアの作品。
    アダマンタイトすら叩き切り、一切欠けない不滅の刃を持つ細身の剣。
    マナタイトクォーツで作られたこの剣は、魔力を拒絶する。


……あれ、デュランダルって聖剣じゃね? ……聖剣とは書いてないし、セーフセーフ。
どれどれ、早速腰に付けて……問題が発生した。抜けん! 自分の胸下まである剣が抜けると思ったか! 馬鹿め!
って、そうだ。間違いなく馬鹿だった。これ位置が違うんだ。刀じゃないんだから腰じゃないわな。ロングソードは腰から吊るすから刀より下に来たはずだな。刀は挟むから位置が高くなる。
マナタイトクォーツで吊るすやつ作って調整せねばな……問題があるとすれば、今のドレスは剣を吊るすには向かんということか。ぐぬぬ……。

「ベアテ、起きてる?」
「起きてますよ」
「武装状態でも違和感のない戦闘用の服が欲しいの。武器はこの剣とこの杖ね」
「デザインはどうします?」
「うーん……」

問題はデザインよな……どうしようか。また以前来てた軍服風のドレスもありだな。
もしくは……鎧ドレスか? ドレスアーマーとも言うかな。姫騎士と言えば分かりやすいだろうか。まあ、ドレスに金属をくっつけたやつだな。マナタイトクォーツをつければいいだろう。
と言うか、マナタイトクォーツを使うなら鎧ドレスの方がいいのか? 見た目は白い水晶だしな。
軍服の鎧加工はちょっとイメージが浮かばんな。
……よし。

「ベアテ、ここをこうして……こっちはこうして……金属はこっちで用意するから……ここはこう」
「ふむふむ、色はどうしますか?」
「髪の色がこれだから、かなり限られるのよねぇ……マナタイトが白だから黒にしましょうか」
「分かりました。では作りますね」
「ええ、よろしく」


む……? 更なる問題が発生した。
『マナタイトクォーツで作られたこの剣は、魔力を拒絶する』ってダメじゃんな。マナ結合により魔力以上のエネルギーを持つからか? 私の魔力でもかなりの抵抗がある。これは武器としてよろしくない。かと言って、マナタイトクォーツが持っているマナを魔力に変換すると結合が壊れて自壊する……。
所有者を決めて、その魔力はレジストしないようにした方がいいか。マナタイトクォーツは全部そうした方がいいな。所有者の魔力はレジストせず、纏うように魔導文字が必要か。刀身に魔導文字が浮かんでかっこよくなったから良し!


魔導剣・デュランダル アーティファクト
    ルナフェリアの作品。
    アダマンタイトすら叩き切り、一切欠けない不滅の刃を持つ細身の剣。
    所有者の魔力操作をアシストをし、所有者以外の魔力を拒絶する。
    現在の所有者:ルナフェリア


さて、次は馬車作ろうか。
預けたりすることがあるので、サイズは基本同じにする。でかい荷馬車サイズだな。
馬車のために作ったマナタイトクォーツで一度形を作ってしまい、カモフラージュ用の木で覆う。これだけで作ったら中見えるからな……。窓となる部分だけ切り取っておく。
床は畳も考えたが、外の移動用なのに靴を脱ぐ訳にもいかんか? 私はぶっちゃけ畳でのびのびしたいが、侍女2人が落ち着かなそうだな。下は薄い大理石にしておくか。
テーブルと椅子を固定できるようにしておき、寝る時は外してベッドを置けるようにする。

ついでに移動時用の携帯キッチンと料理道具、更にテーブルと椅子も作成し"ストレージ"にぶっ込んでおく。……? "ストレージ"に浴槽ぶっ込んどけばいいんじゃね? 入れとこう。お湯はどうせ魔法だ。《土魔法》なりで壁作ればいいだろ。
道端で唐突に浴槽取り出して風呂入る奴……いや、考えるのはよそう。重要なのは快適かどうかだ。

《物質創造》でゴムを生成し、ゴムタイヤにする。問題はサスペンションだな。これは試行錯誤しよう。前世と構造が違っても、同じ効果が出りゃ問題ない。
知識がいつ役に立つか、分からないもんだねぇ。グッジョブ、前世の私。
気密性とかはよく分からんが、その辺りは結界でどうにでもなるからいいや。

サスペンション装備のため、敷地内で魔法で動かしつつ試運転をしていく。
うーん、やな揺れをするな……。ってそうだな、この揺れを止める物が必要なんだな。しかし、飲み物溢れるぞこれ……どうするべ?
………………出前機! あの構造も真似しようか! でかいバネと小さいバネ2個だったな。あれを魔道具か何かで再現できないだろうか……。

あーだこーだと弄ってる間に朝になった。
祭りの最終日工作してて終わったぞ? 祭りとはいったい……。

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