転生先は現人神の女神様

リアフィス

27 作戦準備と着替え

バンッ!

「突発じゃんけん大会! いえーい! あ、ペルシアだ」
「……」
「「「「「うおおおおおおお!」」」」」

うむ、今日も騎士達は元気だな。良いことだ。

「あの、師匠。勝ったは良いのですが、自分ペルシアは……」
「ほう、珍しい。……リンゴ」
「ありがとうございます!」


さて、練習だ、練習。
早速弓兵達に混じって訓練をする。

「な、なんですかそれ」
「魔導城壁の次に苦労したであろう魔導弓。あ、そうだ。これ引いてみて」
「え、良いんですか?」
「私以外に引ける人がいるのか気になるのよね」
「それはどういう……」
「まあまあ、使ってみたまえ。持つ所はここ。左手に魔力を少し流して魔力矢の生成、右手にこれ持って魔力を流すと"プレスティージオ"でストリングを引けるから」
「なるほど……」

この世界の人間の身体能力は、前世より高い。まあ、それでも魔物に殺られる事が多いのだから、あれなのだが。

「ふっ! ……んん!? かって! えっ!? かってぇ!」

うーむ……。あ、《身体強化》した。

「ふっ! ……お、お?」

お、引けたか。ある程度引いてしまえば、コンパウンドボウはカムのおかげで楽なんだ。

「その魔導弓は偏差の必要がないから、真っ直ぐ射ってみて」
「分かりました」

カシュン!

あ、だいぶズレたな。

「うーむ、不思議な感じですね。しかし、やはり慣れてるのが1番でしょうか」
「まあ、少し待ちたまえ。その弓の売りはカスタム製。弄ってみましょう」

今のカムの動きと、昨日の練習時の記憶を掘り起こし、調整する。

「どう?」
「……ああ、これはすごいですね」
「まだ少しズレてるかしら。…………これで射ってみて」
「分かりました」

静かに引き、カシュン! という風切音だけ残し、真っ直ぐ吸い込まれる。

「…………最初と全然違いますね」
「最初は私専用のチューニングだったもの。それはベースの弓本体にオプションを付けて、よりその人に合わせる。そして、弓の両端についている滑車で、引けば引くほど力が必要なくなっていくの」
「なるほど……。これはルナフェリア様が?」
「いいえ、前世で競技などに使われていた弓よ。2種類ある弓が組み合わさった感じかしら。本来はもっと小さいのだけど、魔装具にするに当たって、こんなサイズになったわ……」
「これ、素材なんです?」
「それは秘密よ。白い部分はミスリルとだけ教えてあげる。とりあえず私以外にも引けるのが分かったし、良しとしましょう」

チューニングを全て自分用に戻し訓練を開始する。
作戦開始までに《弓術》をどこまで上げられるかね。

・・・・・・
・・・


弓が完成してから2日。《弓術》はまだLv2。まだまだ見習いレベル。
今日も今日とて練習だ。

「ルナフェリア様」
「どうしたの?」

カシュン!

「予定が決まりました。今日から一月半後、冒険者達と一斉討伐開始します」
「そう……。して欲しい事は?」
「出来る限りサポートに回って欲しいと言うことです」
「サポートねぇ……考えておくわ」
「お願いします」

さてさて、サポートか。どうしようかね。相手はアンデッドだから、リュミエールを使う?
《ライトエンチャント》に《ダークシールド》、後は《オールレジスト》かな。
後はてきとーに弓射ってよう。サイズ的に森では使いにくそうだが、経験にはなるか。
私がさっくり大規模殲滅してしまうと色々問題だから、サポートに回れと言ってるんだろう。
そういう意味では弓で丁度いいのかもしれんね。

後で冒険者ギルドに顔出しておく必要があるな。あっち側で参加だし。

そう言えばここ2日で分かった事だが、この弓、杖に近い機能もありそうだ。
この世界の杖は、RPGなどでよくある魔力増幅、制御補助の杖だ。
魔力を杖に流し、杖先で魔法を発動させる。
魔導弓の場合、弓がと言うより、弓の部位がって感じだが。
魔力制御は本体とリリーサー(弦を引っ張る物)、魔力増幅はストリング(弦)の聖魔糸。
更に、先端の矢速強化。ただし、弓の使用と魔力制御を同時に行う必要があるが。

魔法を矢にできると言うことで、"ファイアランス"や"エクスプロージョン"などを試したが、素晴らしいのはオリジナル魔法すら矢としてぶっ放せる事か。弓とはいったい……って挙動する矢を撃てる。
メインウェポンこれにしても良いな。全然使える。魔導銃はカートリッジの仕様的に弾種、威力固定だったが、魔導弓はそんなこと無いし。テンプレ(変態)に1発ぶち込んだだけでお蔵入りである。
思ったより魔導バレルが優秀。即席じゃなくて、もっとちゃんと作ってやろう。

さて、作戦開始まで練習と改良だな。

・・・・・・
・・・


「ルナフェリア様、ここはこう……」
「……こう?」
「いいですね。ここはこう……」

何をしてるかって? 指導されてる。

「淑女たる者、常に優雅に、高潔に、淑やかにです。上っ面だけでも完璧にして下さい」
「上っ面だけでも……」
「貴族の時点で高潔とは無縁ですからね。男女関係なくしっかり被ります。悟られる時点で貴族としては3流ですね。冒険者は魔物との戦闘、商人は商売、貴族は……会話が戦場です。日常会話すら殴り合いです。下手したら殺し合いです」

私の前に立った時点で強制3流だな……。悟られるどころか筒抜けだが。

「下手なこと言った時点で首が飛ぶことがあります。特にこの国、無能は消えるのが早いですね。まあ、ルナフェリア様は貴族ではないのですが、容姿や服装的にそれに合わせて淑女目指しましょう? 表向きは皇族ですし」

なんてことを話しながらピシッと指導されてました。ブリュンヒルデさん結構手厳しい。
『侍女にもプライドと言うのがあるんです!』だって。
ちなみに、ずっと私の歩き方が気になってたらしいよ。しょうがないね、約90年男だったから。

「せっかく良いの持ってるんですから胸張って歩きましょう」

すみません。言うことを聞かなくなってきた老体時の癖なんです。許して。
未だに無意識に体を庇ってしまう時があるんです。

「足運びはこうですよ。上半身の動作はなるべくゆっくりを意識して下さい。余裕を見せるのです。ポーカーフェイスは完璧なので良いとします」

ポーカーフェイスしているんではなく、なっちゃうんですよ!

「言葉遣いは……皇族なので高圧的、命令形が基本なのですが……。基本的に冒険者という事なので、良いとしましょうか」

助かった。

・・・・・・
・・・


「ルナ様、脱いで下さい」
「……は?」
「ドレスが完成しました!」
「……ああ、うん。突然何を言い出すんだこいつとか思っちゃったわ」
「他の3人は?」
「着替えの準備してます!」
「……着替えますかね」
「こちらでーす」

エブリンに連れられ移動する。
さて、どんなドレスになったのか。

「お連れしました!」

部屋に入ると、正面にドレスが飾られていた。

「ほっほう……」


聖魔のドレス レジェンド
    ルナフェリアの従者達の作品。
    精霊の加護(全属性軽減)、魔力増幅、皺防止、清潔、体温調整、形状記憶。
    従魔と契約精霊、侍女の3人が主の為に作った思いのこもったドレス。
    聖魔布で作られているため、非常に高い防御力を発揮し、魔法攻撃を軽減する。


白ベースのドレスか。紐……と言うか布が絡んでるが、羽衣のイメージだろうか。所々透けてるな……。
とりあえず……カラフルじゃなくてよかった……本当によかった……。

どれどれ?

「エブリン……胸、ギリギリ過ぎだと思うのだけど?」
「わ、私じゃないですよ!」
「嘘つくな、見なくても分かるわ」
「うぐっ……」

羽衣的な布を首にかけ、胸の外側に引っ掛けてお腹でクロスさせ、腰でちょうちょ結びか。
スカートは……内側に黒のミニと、外側に白のロングか。あ、これ両方胴体に繋がってるんだな。
布を重ね合わせてるからできる芸当か。横に置かれているこれは……?

「そちらは袖になります」

ベースが白で、内側のミニが黒、袖が薄っすら青で、羽衣的布が薄っすら緑か。ニーソも黒か。
うん、大人しく着せられるとするか。

「本当に素晴らしい布です。軽いし丈夫。それに加え皺になりませんし汚れも付かない。高くなりすぎて売るのは無理でしょうが」

知ってた。弓で『聖魔糸』として使用してる感じ売るのは無理だな、と。
まあ、精霊達の力の一部とも言えるから売る気は無いが。
そういえば、あれ作ってもらおうかな。この容姿なら問題ないはずだ!
リンゴ……ナシ……微妙か? ミカン……はありきたりだろうか。……よし、あれにしよう。
開放されたらベアテ達に頼もう。

「ルナ様、服に魔力を流して下さい」
「うむ」

ジェシカの指示通り、軽く服全体に魔力を流す。
すると、服が微調整され、スッと体に吸い付くようにフィットした。

「はい、終わりました」
「ふむ、軽いわね。肌触りもいいわ。これからはこの服ね」

少し動いて服のチェックをする。
腰のリボンが動いてもあまり崩れず、形を保っている。これが形状記憶か。
外側の白のロングスカートは、前には無いから動きやすさは変わらずか。
この外側のスカートも少し膨らんでいるが、これも形状記憶だな。
針金とかが入ってる訳でもないから、気にせず座れ、皺にもならないと。

「うん、良いわね。ありがとう、大事にするわ」
「ご期待に添えられたようで」
「ところで、ベアテは?」
「完成させてから寝ました。起きたら見るって」
「そう、じゃあ、寝かせておきましょう」

せっかく綺麗なドレスになったのだから、あの子達と優雅なお茶会行こうか。
……あの子達がいる時点で、優雅とは無縁な気がするな。主にヴルカンとシルヴェストルのせいだが。

「お茶にするわよ」
「畏まりました」
「「はいっ」」

ある程度お茶をしてたら、侍女組が指導に移ったので、ベアテが起きるまでのんびり。
そして、ベアテが起きてきたらあるものを渡して、聖魔布を使って《裁縫》をお願いする。

「これならすぐできそうですね」
「よろしくね」

ベアテ本人はよく分かって無さそうだが、何をするのかは分かってるから良しとしよう。
作ってるうちに気づくだろう。


最近の王都はざわついているな。
作戦2日前だから騎士と冒険者達がバタついてるだけだが。
私? 準備する物なんか無いが。《弓術 Lv3》になったぐらいか。
ああ、後ブリュンヒルデさんに仕込まれた。

そう言えば、あの子達はついてくるとして、ベアテとかはどうするかね。
ブリュンヒルデはお留守番。だが、ジェシカが来たいと。そしてエブリンもセットか。
ベアテはどっちでもいい……と。
……ジェシカとエブリンは臨時拠点待機だな。そこで運ばれてくるだろう怪我人の治療させるか。
本人達もその方が良いだろう。ベアテは2人につけるか。
私は精霊達と最前線だな。森が広いからかなり広がるだろうし、激戦区に行くかね。

明日、ギルドに顔出すか。

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