転生先は現人神の女神様
06 マイハウス
やって来ました貰った土地。
大通りに面しているものの、広さが貴族としては下から2番目ほど。
更に建物がぼろぼろかつ、古くからあるため貴族街ではかなり端っこになる。
住むにしても間違いなく建物から手を付ける事になり、大通りに面しているということは人の目にもよく入るため、ほぼ立て直しが確定。
当然お金がかかる。そして広さもそんな無いため、貴族からは人気がない。
が、そんなもの私からしたらなんの問題も無いわけで。
家? 自分で《土魔法》で立てるからいいよ。
むしろ家壊していいところ頼んだ。
広さ? 1人で住むにはこれでも正直広すぎるよね。
大通りに面しているとかもはや利点でしかない。
「うん、一応掃除はされてるようだけどボロすぎるね……」
ザ・貴族のお屋敷! 的な家だけど、壁紙が剥がれてるのは当たり前で、酷い所は壁が崩れている。そして家具も置かれていない。
何十年と放置され、国としてもどうしようか状態だったようなので貰ってきた。
崩す前に家を探索しているんですが。
「こんな広いくせにお風呂が無いとか……」
うーん。……平屋でいいかな? 住むの私だけだし。
リビングにキッチン、お風呂とトイレ、後は寝室。
これだけでいいよね……。家の外見は一応周りに合わせてっと。
中は日本風でいいや。普通の一軒家的な間取りにしようか。
……ああ、客室も1部屋あった方が良いかな?
問題は土地のサイズの割に家のサイズが小さすぎることかなぁ。
そういえば大通りの逆側。裏側に川流れてるんだよね……。
庭に引っ張ってやろうか。庭に溜めればプールになるね?
よし、始めるか。
3分くっきn……は流石に無理だな。
3時間ビルディングのお時間です!
用意するのは簡単。大量の魔力。たったそれだけ!
まずは夜中なので静かに今ある建物を崩そう。
《水魔法》で包んで、《重力魔法》で一気に崩すか。
あー、一応結界も張っておこうか。
音って確か空気の振動だったよね? そういえば周波数があったな……。
うん、分からん。全部通すな。酸素とかも全てだ。どうせ私は呼吸も必要ない。
家作ってからゆっくり思い出そう。過去に少しでも見てれば思い出せるみたいだし。神様ってすごい。過去の自分が調べていた事を祈ろう。
「水で包んでからのー、"グラビティ"」
やり過ぎると地面まで影響出るから少しずつ……。
元々ボロボロだったのもあり、すぐに崩れ落ちる。
崩れ落ちた物を西側の真ん中に纏めておいて……。結界はもういらんな。
じゃ、水回りやるか。
西の川を北、東と通して、中央東寄りに25メートルプールを作り、南から西の川に戻すと……。
ほんで、北と南に通ってる水路の間に家を作ろう。すると家の正面の庭に25メートルプールがある!
と言うか25メートルプールが敷地に入るんだからやっぱでかいわ。
川の水だから綺麗綺麗。土も当然水を吸収しないように固めたし、早速水を流そうか。北と南の川と通路を繋げて……プールが溜まったら残りは南から流れるようにっと。構造的に大丈夫だろうけど南は逆流を防ぐために結界を張る。
プールはこれでよし、と。
よし、建物やろうか。
西の川、北と南の水路、東のプールの間に長方形の土台を作る。
「家立てる順番とか知らんし、やり方も知らん。が、《土魔法》でどうにでもなる気がする」
《土魔法》しゅごい。魔力をふんだんに込めて土台を作る。
込めた魔力によって《土魔法》は強度が変わるらしい。なので大量に込める。
土台ができたら端っこに柱を立てて……真ん中にも立てよう。
そしたら上の方を柱で柱達をつなげーの。
……確か柱同士の間で壁になる部分にクロスさせて耐震強度上げるんだっけ?
ふむ、まだ柱5本だからな。中央の柱を中心に十字になるように柱追加して……。
これで9本。更に分割していって……21本ぐらいあればいいか。
周りに16本、中に5本。これで崩れんだろ。多分。中が少ない気がするけど、これは間取り決めながら柱でも立てよう。あれだ、なんかマ○クラしてるみたい。
ヤバイ。楽しいこれ。《土魔法》で楽々建設。
あ、柱変えようかな。中心は柔らかく、周りは固く。剣や刀のような複合材仕様にしてみよう。《土魔法》だからこんな事も楽々。柱に適してるかは知らんが。
そしたら玄関の位置やリビングの位置など間取りを決めていく。
傍から見ると8歳ほど――身長が小さいためそう見える――の少女がしゃがんで地面をぺしぺしした後、とてとてと別の所に走って行き、またしゃがんで地面をぺしぺし土台を作り、今度は柱をぺしぺししながら行ったり来たりと、とても微笑ましい状況である。
そのぺしぺししている付近の土の変化などを見なければ、であるが。
もはや素材が変わっている。恐るべし《物質創造》。当然それに相当した魔力を使用する訳だが、そんな魔力は月の女神からしたら雀の涙に等しい。
壁と玄関から客室の床に白大理石を使用。更にプールまで白大理石に変更。
流石に何で構成されてるかは覚えてないが、大量の魔力でガン無視して生成。雀の涙から増えたところで大差ない。
一度イメージから白大理石を生成し、それを《真実の魔眼》で構成成分を調べ、それをイメージし量産する。
《物質創造》は作りたい物をイメージし魔力を消費して作成するが、そこに科学知識を加えたり、より具体的なイメージをすることで消費魔力が減り、生成される物もより良い物ができる。よって、一度イメージだけで大量の魔力を使い、生成。その後《真実の魔眼》で調べ良い物を作りなおす。
まあ、普通はこんなことできないんだが。大量の魔力と貴重な《鑑定》持ちのためできる行為である。更に《真実の魔眼》つまり《精密鑑定》と同じだが、これを使用しても本来は構成成分などは出ない。
構成成分を見たいと思い《精密鑑定》を使用すれば見ることは可能だが、この世界の人達は科学知識なんか無いというのと、たまたま表示されたとしても情報量が多すぎて何が何だか分からない。
ルナは女神の能力、と言うよりデフォルト機能として見たものを忘れない。これは元々の力でありスキルなどには表示されない。
そのため、一度イメージだけで出した白大理石で、覚えた構成成分を少し弄って作成、気に入らなかったりイメージと違う場合は破棄し、また成分を変え生成と言う能力と魔力の無駄遣いを行っていた。
ふんすふんすと土地を改造すること早4時間。間取りとか決まってて建てるだけなら3時間ビルディングもできただろうが、間取りどころか素材からなのでできるわけもなく。素材の成分から弄ってるのだから尚の事である。
ルナは幼い頃――当然前世――から何かを作るのが大好きだった。
幼稚園や小学校の夢が大工や建築士だった程度には。
つまり、魔法でこんな事ができるようになればこうなるのも当然である……。
お城から土地に来た時には大体3時。そして4時間立ったので今は7時である。
電気が無く、明かりが普及していない異世界の朝は早い。
太陽が登ると当時に動き始める。特にファーサイスは農国である。皆早い。
その分寝るのも比較的早いが、5時には農家の皆さんが動き始める。
そしてルナの土地は大通りに面している。5時時点では最初はなにしてるんだろう? と思いつつも、てとてと動き回っている少女を微笑ましく見ながら各自お仕事へ。
6時になると畑仕事以外の人達も動き始め、ルナを目撃する。
絶世の美幼女……ギリギリ少女? がニコニコ楽しそうに動き回ってて大変微笑ましいのだが、5時時点の人達と違って見てられるため、異常に気づく人がちらほらと出始める。
「なあ、あれあの子がやってるんだよな……?」
「あの子しか居ないしそうなんだろうよ……」
「魔力操作と魔力量どうなってんだよ……」
魔法に触れることが多い冒険者達が真っ先に気づき、ざわめく。
当の本人はそんな事はつゆ知らず、黙々と建築を進めている。
「ぬ、明かりどうしよう……完全に忘れてた」
この世界の明かりはどうなってるんだろう?
くそう、崩す前に見とくんだったか。盲点だった……。よし、保留。
屋根作ってっと……。まあ、一先ず完成かな? 玄関入って廊下を少し進めば客室。
客室を素通りした先がリビングで、入る前に靴を脱ぐと。客室だけなら靴履いたまま行けるようにしておく。そして客室とリビングをキッチンと繋いで……。お風呂はすぐ入れるようにプール側に設置。当然窓ガラスも作ったし、鏡も置いてある。
周り見る限りオーバーテクノロジーだけどね。知った事か。
欲しけりゃ売ってやる。お金持って来い。
食器棚は作ったけど食器とかは作ってない。この世界のを見てから判断しよう。
気に入らなければ自分で作る。コップは間違いなく作ることになりそうだが。
冒険者じゃなくてこっちでお金稼いだほうが楽なんじゃ……。
いや、冒険者にはロマンがある! うん。
……それにしても、白大理石の平屋の家ってなんか悲しいな……。
まあ、普通大理石使って平屋なんか建てないよなぁ……。うん、これに関しては考えるのをやめよう。一先ず完成だ完成。
「すみません。ルナフェリア様」
誰かが近づいてくるのは気づいていたけど、呼ばれたので振り返る。
鎧を着たハンサムなおじ様が1人。ヨーゼフさんじゃないか。
「国王様よりお手紙をお預かりしています」
「私に?」
「ええ、冒険者ギルドへはもう行かれましたか?」
「これからよ」
「それは良かった。こちら、ギルドへの推薦状となります。登録する際受付に渡して下さい」
とりあえず受け取るけど、推薦状ってなんだろうか。試験免除とか?
「推薦状?」
「はい、ルナフェリア様の人柄、実力ともに保証するという物です。今回は国王様からなので推薦状としては最高ですね。大体はどこかしらの貴族や上級冒険者からが普通です。国王様からと言うのは少なくともこの国では初めてではないでしょうか?」
「なるほど」
「恐らくCランクまでスキップできるよう書かれているのではないでしょうか」
「ベテラン一歩手前まで行けるのね」
「そうですね。ギルドは国と独立しているので国王様と言えどCが限界なのですよ。Cより上のB、A、S、SS、SSSは完全に実力や経験を認められないとなれません。S~A、B~C、D~Eには壁があると言われますね」
「ふんふん、今の最大ランクはいくつ?」
「世界に2桁ほどのSランクがいます。SSとSSSは誰もいませんね」
「じゃあCでもそれなりなの?」
「そうなりますね。Cともなればだいたい文句は言われないかと。Bから上は依頼料が馬鹿になりません。Sに限っては1人でそれ以下の1PT以上だと言われます」
「Sからは完全に個人の能力が求められる?」
「はい。戦闘はもちろん、洞察力や指揮能力など全ての面で判断されます」
「ふむ。まあ、のんびりやるわ」
「では、私はこれで」
「ええ、ご苦労様。ありがたく使わせてもらうわ」
ヨーゼフさんが実に綺麗な礼をして帰っていった。さすが近衛の副隊長。
さて、ギルド登録の為に出かけるかなぁ。
おっと、その前にあれだ。土地を囲むように結界張っとこう。防犯防犯。
窓割られたりコップとか持ってかれるのは癪だからな! そんな事そうそう起きないって? 何言ってんだ、盗賊だっている世界だぞ。
万能結界でも貼っとけばいいかな?
普通に結界を張る……よりは魔法陣にした方が楽か……。
「えーっと、万能結界だな。”マナシールド”の魔法陣を……」
土地の中央で右手の人差し指で唇に触れ、左手で右肘を支え、たまに人差し指で唇をぺちぺちとしながら考える。おっさんがやってたらぶん殴るところだが、美少女なのでセーフ。
まず、切り替え式にしよう。起動中は術者から魔力を吸う。停止中でも消滅はせず、周囲のマナで維持。範囲は敷地全体を指定。高さは家より少し余裕を持たせてっと。こんなもんかな?
「いや、効率が悪いぞこの魔法陣……えーっと、ここをこうして……」
と、改良を初めてすぐ……。
「むあーっ!」
と頭をガシガシするが……。
「もう最初から自分で組もう……」
と言って、自分で乱した髪をささっと直しながら文字が書いてない自分の魔力光と同じ色の魔法陣を展開し、また同じポーズで考え始めた。
ここをこうして……そこをああして、こっちはこうで、ここで範囲を指定、こっちで高さを指定して魔力の無駄遣いを防ぎ……。ここで切り替えの、キーワードはこれで権限と供給は私を設定しーの……。停止時供給は周囲のマナでっと。発動魔法は物理も魔法も防げる万能結界”マナシールド”を指定してあげるんだけど、これだと伝導効率が悪いからここを……。
ルナが黙々と魔法陣を改造している時、外野は軽い騒ぎである。
近衛騎士団副隊長が会いに来て、何か渡し少し話して帰って行った。
近衛の副隊長がまさかのお使い? 何者なんだこの少女?
少女は真ん中辺りに歩いて行き、魔法陣が出たと思ったら何やら考え始め、魔法陣を見てみると文字の部分が変化してるし。
魔法陣を弄るなんて事に愕然としてたら突然叫びだし、直後今までの魔法陣を破棄、即座に新しい魔法陣を展開。
その魔法陣が何も書かれていない時点で異常である。しかも紫の魔法陣。
そう思った直後、ものすごいスピードで魔法陣に文字が書き込まれて行くではないか。もうどこから突っ込めば良いのか分からない。
まじで何者なんだ、この少女は。
大通りで人だかりと言うか、皆して遠目に見ている感じがあれば当然気になって見に来る人がいる。さらに言えば、見ている者達。特に冒険者達が愕然とした表情で見ていたら余計に気になるのが人の性と言うもの。更にこの国に住んでいる人なら大体は知っているであろう場所、誰も住んでいないはずのボロい家のところだ。そりゃもう集まる集まる。人が人を呼び、それを見た人達の表情で更に人を呼ぶ状態である。
ルナは人が集まってるなーというのと、見られてるなーと言うのは確実に感じているだろうが、特に気にしてない模様。邪魔されないならどうでもいい。
この容姿なら見られるのも当然だろう。一夜で家建ったしな! 程度にしか思ってない。実害が無ければそんなもんである。
「よーし」
唇のぺちぺちを止め、正面に展開していた魔法陣に右手を伸ばしそのまま地面に向けて腕を動かす。するとついてくるように魔法陣も動き、土地の中央に配置すると、今度は丁度家とプールの間に収まるように魔法陣のサイズを調整する。
魔法陣は大きければ大きいほど文字を書き込めるスペースができるため、効果がでかくなるが、当然書き方や処理の仕方も影響するため、でかいほど良いと言うわけでもない。
魔法陣のサイズに合わせて最後の微調整を行い、魔法陣を固定し、その場に定着させ、完成である。《結界魔法》は属性がないため色は魔力光と同じ色だ。
ルナの魔力光は暗い紫。ウェブカラーと言われる方のインディゴ。
「どれどれ……。”アクティベート”!」
キーワードを言った為に魔法陣が起動。
指定された通りに土地に魔力光と同じ紫色の”マナシールド”を展開した。
「うん、よしよし」
これで私以外は干渉するか破壊しなければ入れなくなったはず。
干渉するか破壊して入れるならむしろくれてやろう、うん。
さて、ギルド行くかね。
この王都では2番目に小さいサイズとは言え貴族の土地を囲む結界、しかもそれが”マナシールド”のため更に周囲がびっくり仰天な訳だが、魔法に関しては隠す気がさらさら無いルナであった。
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