死霊術師は笑わない
7話
「こいつ、一体なんなんだよ……」
すっかり怯え切った様子のクレイ。1人の女がその背中に手を回し、一旦その輪から外れて行った。
「……しかし、まいったな。ただのアンデッドってなら倒して終わりだったんだが……」
「そうよね、まさか知性があるだなんて……」
「…………おい」
うんうんと首を傾げ、悩む2人にアガミが声をかける。
「どうしたの?」
「いつ、に、なった……なわ、ほどいて、くれる……?」
「ごめんね……少なくともあなたの、その……正体が分かるまでは……」
その答えを聞き、今度はアガミが頭を抱える。無論、手は縛られているが。
(どうする……ここで死霊術師である事を伝えた場合、細かい説明が難しいぞ。……それに、そもそも死霊術師とバレた時点で命を狙われるか)
忘れてはいけないのが、死霊術とは禁術であり、一切の研究、修得、使用が禁じられている。
しかし国によって研究されている場合があり、死霊術師は意外といる。
いるのだが、それは極秘なものであり、所属する死霊術師も細かく管理されるのである。
よって一般的には、死霊術師はただのA級犯罪者なのだ。
「なあ、お前自身、どうしてそうなったのか知らないのか……?」
(きた……)
そしてついに予想通りの質問だ。
アガミはどう答えたものか、一瞬考え────
「しりょうじゅ、つし、の、じっけんに……」
「……!?」
己が死霊術の被害者である事にしたのだ。
「そんな……なんでこんな子供を……!」
「落ち着け、ミレーア……なあ、その死霊術師について、なにか分からないか?」
「なまえ、わか、らない……いし、もった、アン……デッド、つくる、じっけん……」
「そいつがそう言っていたのか?」
この姿が上手いこと作用した。小さな子供であるから、作文能力が低いだろうと一つずつ訊いてくる上、分からないと言ってもそれを信じる。
アガミは内心で冷ややかな視線を送りながら、コクリと首を振る。
「そいつは……どうした? どうしてキミは1人でここにいた?」
「────きし、はいって、きて、ころされ、た。そのすき、……にげ、た」
完璧なシナリオだった。
これでアガミは、この少女は被害者であり、動物の生き肉を与える限り無害である、そんな存在になったのである。
もっともこれは一時しのぎでしかない。この先どうするか、考えなければならなかった。
そうこうする内に、残りの2人が帰ってきた。
ギルと、ミレーアと呼ばれた女が事情を説明し、クレイは疑わしそうな目でアガミを見たが、その他3人とも少女を憐れんでいた為、なにも言えずにいた。
「とりあえず、これからどうするか考えるしかあるまい」
「まさか、街に連れて行く訳にもいかないし……」
「おいおい、その……聖騎士にコイツを渡せば解決だろ?!」
クレイに、3人の冷たい目が向けられる。
「馬鹿なの? 聖騎士は、人間至上主義なのよ? さっさと殺されて終わりに決まってるじゃない……」
ミレーアは吐き出す様にそう言った。
「けどよう、このままじゃラチあかねえぞ!」
しかしクレイが言うことにも一理ある。
気に縛り付けられた少女は、影を落とす面々をつまらなさそうに眺めながら、自身、そうやって生き延びるかを考えていた……。
すっかり怯え切った様子のクレイ。1人の女がその背中に手を回し、一旦その輪から外れて行った。
「……しかし、まいったな。ただのアンデッドってなら倒して終わりだったんだが……」
「そうよね、まさか知性があるだなんて……」
「…………おい」
うんうんと首を傾げ、悩む2人にアガミが声をかける。
「どうしたの?」
「いつ、に、なった……なわ、ほどいて、くれる……?」
「ごめんね……少なくともあなたの、その……正体が分かるまでは……」
その答えを聞き、今度はアガミが頭を抱える。無論、手は縛られているが。
(どうする……ここで死霊術師である事を伝えた場合、細かい説明が難しいぞ。……それに、そもそも死霊術師とバレた時点で命を狙われるか)
忘れてはいけないのが、死霊術とは禁術であり、一切の研究、修得、使用が禁じられている。
しかし国によって研究されている場合があり、死霊術師は意外といる。
いるのだが、それは極秘なものであり、所属する死霊術師も細かく管理されるのである。
よって一般的には、死霊術師はただのA級犯罪者なのだ。
「なあ、お前自身、どうしてそうなったのか知らないのか……?」
(きた……)
そしてついに予想通りの質問だ。
アガミはどう答えたものか、一瞬考え────
「しりょうじゅ、つし、の、じっけんに……」
「……!?」
己が死霊術の被害者である事にしたのだ。
「そんな……なんでこんな子供を……!」
「落ち着け、ミレーア……なあ、その死霊術師について、なにか分からないか?」
「なまえ、わか、らない……いし、もった、アン……デッド、つくる、じっけん……」
「そいつがそう言っていたのか?」
この姿が上手いこと作用した。小さな子供であるから、作文能力が低いだろうと一つずつ訊いてくる上、分からないと言ってもそれを信じる。
アガミは内心で冷ややかな視線を送りながら、コクリと首を振る。
「そいつは……どうした? どうしてキミは1人でここにいた?」
「────きし、はいって、きて、ころされ、た。そのすき、……にげ、た」
完璧なシナリオだった。
これでアガミは、この少女は被害者であり、動物の生き肉を与える限り無害である、そんな存在になったのである。
もっともこれは一時しのぎでしかない。この先どうするか、考えなければならなかった。
そうこうする内に、残りの2人が帰ってきた。
ギルと、ミレーアと呼ばれた女が事情を説明し、クレイは疑わしそうな目でアガミを見たが、その他3人とも少女を憐れんでいた為、なにも言えずにいた。
「とりあえず、これからどうするか考えるしかあるまい」
「まさか、街に連れて行く訳にもいかないし……」
「おいおい、その……聖騎士にコイツを渡せば解決だろ?!」
クレイに、3人の冷たい目が向けられる。
「馬鹿なの? 聖騎士は、人間至上主義なのよ? さっさと殺されて終わりに決まってるじゃない……」
ミレーアは吐き出す様にそう言った。
「けどよう、このままじゃラチあかねえぞ!」
しかしクレイが言うことにも一理ある。
気に縛り付けられた少女は、影を落とす面々をつまらなさそうに眺めながら、自身、そうやって生き延びるかを考えていた……。
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