リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて~愛華と瀧編〜

石原レノ

2人で、、、

「愛華ちゃん、、、」
瀧が何度話しかけても愛華はそっぽ向いたまま話を聞く様子はなかった。当たり前である。愛華を瀧が泣かしたのはつい一時間前。愛華の機嫌が直ることは長いか、ないかである。
「愛華ちゃん、、、」
このままでいても愛華は自分の話を聞いてはくれないと、そう瀧は思った。
「俺さ、愛華ちゃんの思ってることが分からなかったんだ、、、」
自分のことを正直に言おう、、、瀧はそう心に決めた。まだ愛華は顔を向こうに向けたまま話を聞いているようには見えなかったが、いじいじしていた指が瀧が話し始めた途端にか止まった事を瀧はしっかりと覚えていた。
「母さんや父さんが居なくなるなんて俺には分からないし、、、分かりたくないし、、、でもこれだけは分かる、、、」
これまで両親と学んできたこと、それは少年の優しい心を異常なまでに成長させた、、。
人が死ぬという事は自分が思う事以上に悲しいこと。それを分かっていたはずなのに、、愛華に情に任せてこんなことを言う限りはまだまだ自分も酷い人だとつくづく思う。
「愛華ちゃんの思いは俺にだって分かる」
瀧の発言は愛華を振り向かせた。それは少女にもわかる、、、誰にだって分かる事、、。
「寂しいんだよね、、、愛華ちゃんの顔を見てれば分かるんだ、、、何となく。それは俺には分からない母さんや父さんが居なくなったから寂しいんだよね、、。分からないところがあったとしても想像するだけで悲しいと俺だって思う、、、だから、、、」
それはただ自分の思いを告げただけの、端的な告白。悲しいのは自分だけじゃないと、少年の言葉を境に少女はそう実感した。互いに目に涙を溢れさせ、はたから見ればどうしたのかと声をかけられるこの瞬間は、2人にとって意味のあるものだった。
「さっきはひどい事を言ってごめんね、、、俺も愛華ちゃんのことを考えていえばあんな事思わなかったのに、、、それと、、、」
瀧の謝罪の言葉に愛華は無言ながらも許諾を表す頷きを行う。そしてこれからいう言葉は瀧自身言うことが恥ずかしい言葉。父親にこれを言えと言われている以上他の言葉は考えていなかったのだが、いざ言うとなると気恥しい。
「その、、、あの、、、ええと、、」
急にもじもじしだした瀧を不思議に思う愛華。瀧は顔を赤くしながらも父親に言われた言葉を思い出して口に出した。
「俺と、、、俺と一緒に、、す、、すす住まないかな?家族に、、、なるん、、だよ、、、」

「兄さん!兄さん!コレ見てよ!」
「おぉ!これ小さい頃一緒に見てたアニメのキャラグッズじゃん!どこにあったの?」
「懐かしいよねぇ!クローゼットの奥に転がってたんだよ!」
十年前、2人は家族になった。それが愛の告白による結果なのか、、、それは2人には分からない、、、。少なくとも愛華と瀧はこの『今』に後悔はしていなかった、、、。

ー私ね!瀧く、、、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだ!ー

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