リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて~愛華と瀧編〜

石原レノ

受け入れ難い現実

「残念ながら、、、御両親とも、、」
「そんな、、、」
白い病室の中、愛華の両親はそれぞれの親族の前で息を引き取った。そこに愛華もいたのだが医者の言っていることが分からない。
—残念?何が残念なの?—
「ねぇおばあちゃん!何が残念なの?パパとママ大丈夫だよね!?」
愛華がそう問いかけても涙で顔を濡らしている祖母に声は届いていない。気がつくと周りのみんなは全員涙を流している。
「愛華ちゃん。今日からおばあちゃんの家で暮らそうね」
祖母の口から出てきた言葉は今まで愛華が一番聞きたくないと思っていた言葉だった。
「嫌だ!みんな変だよ!パパとママは寝ているだけだもん!パパとママとずっと一緒にいるんだもん!」
怒りをあらわにした声を上げたと思ったら走って病室を出ていく。その姿を見た祖母は愛華を追いかけることが出来なかった、、。
「う゛ぅ、、、」
誰もいない病院の敷地内の庭に愛華は一人泣き崩れていた。両親は死んでなんかいない。何度そう思っただろう。受け入れ難い真実。幼きながらも人が死ぬことで2度とその人とは会えないという事は愛華も分かっていた。
「愛華ちゃん」
誰かに名前を呼ばれ顔を上げると自分の数歩程前に一人の少年がこちらを見下ろしていた。
「瀧君、、、」
愛華が名前を呼ぶと瀧はゆっくりと歩み寄り横に座り込む。数秒静かな空気が2人の肌をなで、鳥のさえずりが聞こえた。口を開いたのは瀧からだった。
「お父さんとお母さん、残念だったね」
「パパとママはまだ生きてるもん!眠ってるだけなんだもん!」
愛華の強い意思には瀧も口出しできなかった。瀧自信まだ愛華の両親は死んでなんかいないと思いたかった。でも母と父から伝えられた事実はそれとは逆のもの。信じたくても、、、
「信じきれないよ、、、」
「え?」
「病院のお医者さんが言ったんだ!愛華ちゃんのお父さんとお母さんは死んじゃったんだって!もう、、、、起きないんだよ、、、絶対に、、、」
「、、、、、」
いつも笑いながら愛華の話を聞いてくれる少年がこちらを見落としながら涙を流している、、。いつも愛華の言う事を笑って聞いてくれる、あの優しい少年が大粒の雫を流しながら吐いた現実を愛華はこの時曖昧だった考えを理解へと向かわせた。それは受け入れ難い、受け入れたくない事実。
—それよりも、、、愛華は大好きな人に辛いことを言わせた自分を憎いとさえ思った、、、この感情が何なのかは幼い少女には分からないもの—
自然と愛華の目にも涙が溢れだしてくる。そのまま顔をうずくまらせ大声で泣きわめいてしまう。この現状をただ瀧は涙を流しながら見落とすことしか出来ることは無かった。
—もう言ってしまったのだ。愛華にひどいことを言ってしまった—
今の瀧の脳裏にはその言葉しか頭に浮かばない。
「瀧!愛華ちゃん!どうしたの!?」
不意に後ろから駆けつけてきたのは歌音かのんだった。母親からどうかしたのかと問いかけられるが、泣きわめく少女を前にして、これ以上口から出る言葉などもうない。瀧はそう心に打ち付けた。

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