2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

54話 「猛勉強の始まり」

「えぇっ⁉︎ 赤点があったら部活出来ないの⁉︎」

「そうらしい…マズイな…」

モーナから「赤点があったら入部は認めない」と言われた後、そのまま職員室を追い出された俺は、セレナにモーナから言われた事を伝えた。

これは本格的にマズイ事になった。
真面目に授業を受けようとは言ったが、真面目に受けた所で苦手な物は苦手だ。

だから赤点は取りたくないが、もし取ってしまった場合は素直に受け入れようと、そう思っていた。

なのに…赤点あったら部活出来ないって…

「い、今から猛勉強すれば大丈夫だよきっと! 」

「この事はシルフィさん達には言わない方がいいな、余計な心配させたくないし…」

「そ、そうだね…」

本当はモーナに入部すると言った後すぐにシルフィ達に報告しに行こうと思ったが、やめだ。

今は少しでも勉強する時間が必要だ。

「悪いセレナ、俺やる事あるから先に寮に戻る」

「勉強でしょ? 私教えようか?」

よく勉強するって分かったな…

「いや…ありがたいけど、遠慮しとくよ。 元々はセレナの部活見学について来たんだから。 セレナは部活見学して来いよ」

「でも…」

「1人でも勉強は出来るよ」

俺がそう言うと、セレナは渋々だが部室棟に向かっていった。

よし……セレナには迷惑は掛けられないからな…

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「クリス! クリスー! 居るなら返事してくれ!」

ドンドンドンドン! と、クリスの部屋の扉を叩きながら叫ぶ。

「なんだルージュ、うるさいな」

すると部屋着のクリスが出て来た。

「おお! 居た、クリス頼む! 勉強教えてくれ!」

「勉強? どうしたんだ急に」

「実はな…俺入りたい部活があるんだけど、今度のテストで赤点があったら入部できないらしいんだよ」

「なるほどな、だから赤点を取りたくないと…」

「そうだ」

「分かった。 僕で良ければ教えよう。 アリスほど頭が良くはないけどね」

よし…! 部屋が隣のクリスならいつでも勉強を教えてもらえる。
これなら効率良く勉強が出来るぞ!

クリスを俺の部屋に招待し、早速勉強をする準備をした。

「で、何が分からないんだ?」

「全部だ」

「そ、そうか…」

こんな事になるんならドーラ村にいた時から真面目に勉強しとけば良かったな。
セレナはたまに勉強してたらしいし、俺は剣術と魔術ばかりやってたからなぁ……

「ちなみに、テストの教科は分かっているのか?」

「あぁ、古代文字、剣術基礎、魔術基礎、武術基礎だろ? 剣術と魔術はまぁまぁ分かるけど、古代文字と武術基礎がな…」

「まぁ、ルージュは武術とかやった事ないだろうしな」

「クリスはあるのか?」

「ん? あぁ、僕の親に無理矢理やらされたよ。 魔術だけじゃ身を守れないからってね」

護身術的な感じだな。 空手とか柔道みたいな。

そういえば武術と言えば…

「なぁクリス」

「なんだい?」

「ザックが使ってたのも武術なのか?」

ザックとソーマの手合わせを思い出し、クリスに聞いてみた。

ザックは剣も魔術も使わずにソーマと同等以上の戦いをしていた。

「あぁ…彼のも立派な武術だよ。 しかもかなり高レベルのね。 あれは基礎なんて物じゃないよ」

「そうなのか…」

「さぁ、話はこれくらいにして、そろそろ始めようか」

「あぁ、頼む」

俺は、分からない所はクリスに聞きながら、勉強を続けた。

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「ふぅ…今日はこれぐらいにしようか」

クリスが時計を見ながら言った。

時刻は6時30分。 勉強を始めたのが5時だったから、1時間30分勉強したのか。

「そうだな。 腹減ったし」

「はは…じゃあ食堂に行こうか」

「あぁ」

剣魔学園の食事は、基本的には食堂で取る事になっている。

朝ご飯は寮の中にある食堂で食べ、昼ご飯は校舎の中にある食堂で食べ、夜ご飯は男女共同スペースである食堂棟で食べる。

食堂棟は寮からかなり近い所にあり、3階建てで、1階は初等部、2階は中等部、3階は高等部専用の食堂になっている。

俺はそこでセレナ、クリス、アリス、フィリアのいつものメンバーで一緒に夜ご飯を食べている。

食堂棟も校舎と同じくレンガ作りだ。 

俺とクリスは食堂棟に入り、いつも俺達が座っている席に向かった。

「あ、ルージュ! 今日は遅かったね!」

「こんばんは、ルージュさんにクリスさん」

「早くご飯貰って来なさいよ」

いつもの席にはセレナ達が座っていた。

食堂のご飯は毎日決まっていて、今日は火炎鳥フレイムバードの唐揚げらしい。

俺とクリスは食堂の叔母さんから唐揚げを貰い、セレナ達の席の前に座った。

席順はフィリア、セレナ、アリスが隣同士で座っていて、俺がセレナの前、クリスがアリスの前に座っている。

これはいつも通りで、フィリアの前には俺とクリスは絶対に座らないようにしている。

「火炎鳥ねぇ…」

「どうしましたルージュさん? もしかして火炎鳥苦手なんですか?」

「いや、火炎鳥って見た事ないからさ、どんな奴なんだろうなって思ってさ」

「どんなって…簡単に言うと、飛ぶ時に燃えながら飛ぶ普通の鳥ですよ?」

飛ぶ時に燃えながら…ね。 この世界ではそれが普通なんだな。

朝にコケコッコーと鳴く鳥はこの世界には居ないらしい。

「ほぉ…いつか見て見たいな」

「え? ドーラ村にも居たじゃん火炎鳥」

「え⁉︎」

は? ドーラ村にそんな危ない鳥居たか?

一回も見た事ないが…

「偶に空を飛んでたよ。 ずっとドーラ村に居たのに見た事無かったの?」

マジかよ、そんな頻繁に見るもんなのか。

まぁ、異世界だもんな。 空飛ぶトカゲや目がある植物、燃える鳥が居たって何もおかしくないんだ。

さて…火炎鳥はどんな味がするのか…

「いただきます」

俺は火炎鳥の唐揚げを口に入れた。

「え…美味っ…」

何これ、超美味いじゃん。

こんな美味い鳥がそこら中を飛び回ってるのか? 
異世界最高だな!

「火炎鳥って高級なんだろうな」

俺がそう言うと、アリスは驚いた顔をして首を左右に振った。

「いいえ? 一般的な値段で売って居ますよ? 火炎鳥の唐揚げも一般的な食べ物ですし」

「え、こんなに美味いのにか?」

「はい、確か…銅貨2枚だったはずです」

「ど、銅貨…? なんだそれ」

知らない単語が出て来た。 いきなりなんだ

「え? ルージュ知らないの…?」

セレナが信じられないと言いたそうな顔で俺を見て来た。

なんだ? セレナは知ってるのか?

「全く分からん。 なんだ銅貨って」

「銅貨は、お金の単位ですよ? 他にも銀貨、金貨があります」

「お、お金…?」

そういえば俺、この世界に来てから買い物した事ないな。 お金も見た事なかった……

銅貨、銀貨、金貨か。 これから生きていくなら、知っておかなきゃダメな奴だな。

てかディノスの奴、絶対教えるの忘れてただろ、セレナは知ってたのに…

俺は4人からの可哀想な者を見るような視線を受けながら、唐揚げを食べ続けた。

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