2度目の人生を、楽しく生きる
35話 「感謝 」
突然剣魔学園の校門に転移させられた俺達は、グレンの言った通りそのまま解散となった。
俺は現在セレナとクリスとアリスの4人で王都を歩いていた。
「入学試験、思ったより疲れましたね…」
「そうだな、でも僕達全員合格できて良かったじゃないか」
「そうですね! 」
「明日からは楽しい学園生活が始まるんだね!」
「……………」
セレナとクリスとアリスが楽しそうにはしゃいでいる中、ただ1人、何も話さずに3人の後ろをトボトボ歩いている奴がいる。
…………俺だ。
「ねぇルージュ。 さっきまで元気だったじゃない、なんで今元気ないの?」
「そうですよ、何かあったんですか?」
「ほら、僕達に話してみろ」
3人が振り向いてそう言ってくる。
皆急に元気が無くなった俺を心配してくれているんだ、それは素直に嬉しい。
だが……皆が思っているような複雑な問題じゃない、俺が今元気がないのはもっと単純な問題だ。
「ま、まさかどこか怪我してるの?」
「何⁉︎ それは大変だ! ルージュ! 遠慮せずに言ってみろ!」
「い、いや…違うんだ」
「隠し事は良くないですよルージュさん! セレナさんは回復魔法が使えるんですから!」
「そうだよルージュ! 怪我くらい治せるよ!」
「いや……だからな…単純に…」
言いづらい、とても言いづらいが……皆が心配しているので言うしかない。
3人はこんなに元気なのに、俺がこんな事を言うのは凄く恥ずかしいが……
「あの……魔術を使いすぎたせいで…ちょっと…いや、かなりダルいんだよね今」
そう、俺は今単純に疲れているのだ。 昼頃から試験が始まり、今は夕方、その間俺は常に魔術を使っていた。
しかも中級魔法や複合魔術など、威力や消費魔力の大きい魔術ばかりをだ。
あの部屋にいた時は疲れは感じなかった、だが校門に転移させられた途端、安心したせいか疲れがドッときたのだ。
ぶっちゃけ立ってるだけでキツイ。
「えっと……それはつまり魔力切れって事?」
「まぁ…そうだな」
「とりあえず…どこかに座りますか?」
「そうしてもらえると助かる」
「ちょうどこの先に公園があったはずだ、そこに行こう」
クリスの提案で公園に行く事になった。
公園に行く際、3人は歩くペースを落とし、俺に合わせてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー…やっと座れる…」
公園に着き、ベンチが見えた途端、俺は速攻ベンチに座った。
うわ何これ、座るってこんなに癒される事だったのか。
「…なんかおじさんみたいだよ? 」
「ははは…もっと魔力増やさなきゃダメだなー」
俺がそう呟くと、3人は驚いた表情をしていた。
何か変な事を言っただろうか?
「る、ルージュさん…それ以上魔力を増やすんですか…?」
「できる事なら増やしたいな、そうすれば使える魔術が増えるし」
「今の魔力で満足してないとは……流石だな」
「その内私よりも魔力が多くなりそう……」
「気を抜いてるとすぐに抜かすからな。 ……なぁアリス、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「はい? なんですか?」
アリスが首を傾げる。
多分この4人の中で1番頭が良いのはアリスだ、俺はアリスに質問する事にした。
「あのさ、すぐに魔力を回復する方法ってないのか?」
「え?」
「魔力を回復するには休むのが1番ってのは分かるんだけどさ、もし戦闘中に魔力が切れた場合、どうすればいいんだ?」
俺はずっとこれが知りたかった、魔力が切れたのでもう戦えません。 では迂闊に魔力を使えない。
しかも俺は移動手段に魔力を使う事が多い為、方法があるなら知っておきたいのだ。
「一応…あるにはあります」
「本当か⁉︎ どうすればいいんだ?」
「えぇと…”マギの実”という木の実があるんですが、それを食べれば魔力が回復すると聞きました」
なるほど、木の実か。 
ならそれを常に2、3個持っていれば……
「ですが……」
アリスが言いづらそうにしている。
「なんだ?」
「マギの実は、強制的に魔力を回復させるので、身体への負担が大きいんです。 
なので”子供は食べてはいけない、大人でも1つ食べたら2週間は食べてはいけない”という決まりがあるんです」
「……もし、1日に複数個食べた場合は?」
「えーと……後日尋常でない程の疲労が来るらしいです。 噂では、命に関わるかもしれないと…」
「い、命…⁉︎」
「だからルージュさん、マギの実には気をつけて下さいね」
「お、おう。 二個はダメなんだろ?」
二個がダメなら別に一個でも……
「一個でも、子供の内はダメですからね‼︎」
「はっ、はい…」
アリスに釘を刺されてしまった。 
それにしてもマギの実か……未成年が食べたらダメとか、なんかアルコールみたいだな。
「魔力とかの話をする前に、ルージュはちゃんと知識をつけないとね」
「うっ……」
セレナに痛い所を疲れてしまった。
そうだ、明日から勉強が始まるんだ。
学校に通う以上、勉強も頑張らなくては……
「なんだ、ルージュは勉強が苦手なのか?」
「…あぁ、問題を理解するのが難しくてな…」
「意外です、ルージュさんにも苦手なものってあるんですね」
「そりゃあるだろ……」
「もし分からない時は、遠慮せずに聞いてくださいね? 私、勉強には自信があるので!」
「おぉ、頼むな」
流石はアリスだ、とても頼りになる。
きっと育ちも良いんだろうな。
「さて…休憩したお陰で大分調子良くなってきたぞ」
「本当? 良かったー」
「んで、これからどっか行くのか?」
「どうしましょう…」
「もう夕方だしな…僕ら子供がうろついていい時間ではないだろう」
「そうだな」
皆が立ち上がり、荷物を確認する。
確かに10歳が街をうろつくのは危ないな。
10歳……なんだよな、こいつらも。
「…………」
「どうしました?」
「なんだ? ジッと見て…」
3人が不思議そうな顔をする。
10歳にしては立派すぎる、日本で10歳といったら、はしゃいだり、親にべったりとくっついている年齢だ。
この世界の人々は大人びた性格なのだろう、やはり日本とは違うんだなと思い知らされる。
「…いや、何でもない。 んじゃ解散するか?」
「ですね」
「では、また明日な。 同じクラスになれるといいな」
最後に軽く挨拶をして、皆公園で別れる。 
俺とセレナは同じ部屋だから方向は同じだけどな。
「今日、いろんな人と出会ったね」
道を歩きながら、セレナが言った。
「そうだな」
そうだ、セレナにとっては今日は初めての事だらけだったんだ。
アリスとクリスに出会い、初対面のフィリアと共闘し、知らない大人とも会話した。
ずっと人が怖いと言っていたセレナがだ。
「私、上手く話せてたかな…?」
「あぁ、何も心配する必要はないぞ。 アリスもクリスもいい奴だろ?」
「うん…フィリアも、皆私がエルフなのに…」
「皆がエルフの事を嫌ってる訳じゃないんだよ、それは今日分かっただろ? 
セレナは今日自分の力で友達を作ったんだ、それはすごい事だよ」
セレナは今日、3人も友達を作った。 ドーラ村にいた時のセレナとは違うんだ。
「ルージュのおかげだよ」
「何がだ?」
「ルージュがあの日、私を変えてくれたから、今日アリス達に会えた。 だから、ありがとう」
セレナが俺をジッと見て、そう言ってくる。
感謝されるのは嬉しい、だが……
「感謝するのは俺もだよ」
「え…?」
「俺さ、ずっと友達が欲しかったんだ、実際、セレナに説得されるまで剣魔学園に行くか行かないかで迷ってた」
あの頃の俺は、自信がなかった。
友達を作ろうとしても相手にされず、信じていた奴らには裏切られ、親にも嫌われた。
異世界に来て、ディノスに「剣魔学園に入学しないか?」と言われた時も、またイジメられるかもしれないと思っていた。
だがその思いは変わった。
「セレナに出会って、友達になって、剣魔学園に入学する為に一緒に修行して強くなった。 だから王都でクリス達に会えたんだ」
「……………」
「あの日セレナに会わなかったら、俺は今でも孤独だったはずだ。 だからあの日、俺と友達になってくれてありがとう」
「……救われたのは、私だけじゃなかったんだね」
「あぁ、おかげで今は毎日が楽しいよ」
「ふふっ…私もだよ」
俺の最初の友達が、セレナで良かった。
そして、この世界に来れて…本当に良かったと思う。
明日からは学園生活が始まる。 
向こうの世界とは違い……この世界では……楽しく、自由に生きてやる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二章  少年期 剣魔学園 入学編
終
俺は現在セレナとクリスとアリスの4人で王都を歩いていた。
「入学試験、思ったより疲れましたね…」
「そうだな、でも僕達全員合格できて良かったじゃないか」
「そうですね! 」
「明日からは楽しい学園生活が始まるんだね!」
「……………」
セレナとクリスとアリスが楽しそうにはしゃいでいる中、ただ1人、何も話さずに3人の後ろをトボトボ歩いている奴がいる。
…………俺だ。
「ねぇルージュ。 さっきまで元気だったじゃない、なんで今元気ないの?」
「そうですよ、何かあったんですか?」
「ほら、僕達に話してみろ」
3人が振り向いてそう言ってくる。
皆急に元気が無くなった俺を心配してくれているんだ、それは素直に嬉しい。
だが……皆が思っているような複雑な問題じゃない、俺が今元気がないのはもっと単純な問題だ。
「ま、まさかどこか怪我してるの?」
「何⁉︎ それは大変だ! ルージュ! 遠慮せずに言ってみろ!」
「い、いや…違うんだ」
「隠し事は良くないですよルージュさん! セレナさんは回復魔法が使えるんですから!」
「そうだよルージュ! 怪我くらい治せるよ!」
「いや……だからな…単純に…」
言いづらい、とても言いづらいが……皆が心配しているので言うしかない。
3人はこんなに元気なのに、俺がこんな事を言うのは凄く恥ずかしいが……
「あの……魔術を使いすぎたせいで…ちょっと…いや、かなりダルいんだよね今」
そう、俺は今単純に疲れているのだ。 昼頃から試験が始まり、今は夕方、その間俺は常に魔術を使っていた。
しかも中級魔法や複合魔術など、威力や消費魔力の大きい魔術ばかりをだ。
あの部屋にいた時は疲れは感じなかった、だが校門に転移させられた途端、安心したせいか疲れがドッときたのだ。
ぶっちゃけ立ってるだけでキツイ。
「えっと……それはつまり魔力切れって事?」
「まぁ…そうだな」
「とりあえず…どこかに座りますか?」
「そうしてもらえると助かる」
「ちょうどこの先に公園があったはずだ、そこに行こう」
クリスの提案で公園に行く事になった。
公園に行く際、3人は歩くペースを落とし、俺に合わせてくれた。
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「あー…やっと座れる…」
公園に着き、ベンチが見えた途端、俺は速攻ベンチに座った。
うわ何これ、座るってこんなに癒される事だったのか。
「…なんかおじさんみたいだよ? 」
「ははは…もっと魔力増やさなきゃダメだなー」
俺がそう呟くと、3人は驚いた表情をしていた。
何か変な事を言っただろうか?
「る、ルージュさん…それ以上魔力を増やすんですか…?」
「できる事なら増やしたいな、そうすれば使える魔術が増えるし」
「今の魔力で満足してないとは……流石だな」
「その内私よりも魔力が多くなりそう……」
「気を抜いてるとすぐに抜かすからな。 ……なぁアリス、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「はい? なんですか?」
アリスが首を傾げる。
多分この4人の中で1番頭が良いのはアリスだ、俺はアリスに質問する事にした。
「あのさ、すぐに魔力を回復する方法ってないのか?」
「え?」
「魔力を回復するには休むのが1番ってのは分かるんだけどさ、もし戦闘中に魔力が切れた場合、どうすればいいんだ?」
俺はずっとこれが知りたかった、魔力が切れたのでもう戦えません。 では迂闊に魔力を使えない。
しかも俺は移動手段に魔力を使う事が多い為、方法があるなら知っておきたいのだ。
「一応…あるにはあります」
「本当か⁉︎ どうすればいいんだ?」
「えぇと…”マギの実”という木の実があるんですが、それを食べれば魔力が回復すると聞きました」
なるほど、木の実か。 
ならそれを常に2、3個持っていれば……
「ですが……」
アリスが言いづらそうにしている。
「なんだ?」
「マギの実は、強制的に魔力を回復させるので、身体への負担が大きいんです。 
なので”子供は食べてはいけない、大人でも1つ食べたら2週間は食べてはいけない”という決まりがあるんです」
「……もし、1日に複数個食べた場合は?」
「えーと……後日尋常でない程の疲労が来るらしいです。 噂では、命に関わるかもしれないと…」
「い、命…⁉︎」
「だからルージュさん、マギの実には気をつけて下さいね」
「お、おう。 二個はダメなんだろ?」
二個がダメなら別に一個でも……
「一個でも、子供の内はダメですからね‼︎」
「はっ、はい…」
アリスに釘を刺されてしまった。 
それにしてもマギの実か……未成年が食べたらダメとか、なんかアルコールみたいだな。
「魔力とかの話をする前に、ルージュはちゃんと知識をつけないとね」
「うっ……」
セレナに痛い所を疲れてしまった。
そうだ、明日から勉強が始まるんだ。
学校に通う以上、勉強も頑張らなくては……
「なんだ、ルージュは勉強が苦手なのか?」
「…あぁ、問題を理解するのが難しくてな…」
「意外です、ルージュさんにも苦手なものってあるんですね」
「そりゃあるだろ……」
「もし分からない時は、遠慮せずに聞いてくださいね? 私、勉強には自信があるので!」
「おぉ、頼むな」
流石はアリスだ、とても頼りになる。
きっと育ちも良いんだろうな。
「さて…休憩したお陰で大分調子良くなってきたぞ」
「本当? 良かったー」
「んで、これからどっか行くのか?」
「どうしましょう…」
「もう夕方だしな…僕ら子供がうろついていい時間ではないだろう」
「そうだな」
皆が立ち上がり、荷物を確認する。
確かに10歳が街をうろつくのは危ないな。
10歳……なんだよな、こいつらも。
「…………」
「どうしました?」
「なんだ? ジッと見て…」
3人が不思議そうな顔をする。
10歳にしては立派すぎる、日本で10歳といったら、はしゃいだり、親にべったりとくっついている年齢だ。
この世界の人々は大人びた性格なのだろう、やはり日本とは違うんだなと思い知らされる。
「…いや、何でもない。 んじゃ解散するか?」
「ですね」
「では、また明日な。 同じクラスになれるといいな」
最後に軽く挨拶をして、皆公園で別れる。 
俺とセレナは同じ部屋だから方向は同じだけどな。
「今日、いろんな人と出会ったね」
道を歩きながら、セレナが言った。
「そうだな」
そうだ、セレナにとっては今日は初めての事だらけだったんだ。
アリスとクリスに出会い、初対面のフィリアと共闘し、知らない大人とも会話した。
ずっと人が怖いと言っていたセレナがだ。
「私、上手く話せてたかな…?」
「あぁ、何も心配する必要はないぞ。 アリスもクリスもいい奴だろ?」
「うん…フィリアも、皆私がエルフなのに…」
「皆がエルフの事を嫌ってる訳じゃないんだよ、それは今日分かっただろ? 
セレナは今日自分の力で友達を作ったんだ、それはすごい事だよ」
セレナは今日、3人も友達を作った。 ドーラ村にいた時のセレナとは違うんだ。
「ルージュのおかげだよ」
「何がだ?」
「ルージュがあの日、私を変えてくれたから、今日アリス達に会えた。 だから、ありがとう」
セレナが俺をジッと見て、そう言ってくる。
感謝されるのは嬉しい、だが……
「感謝するのは俺もだよ」
「え…?」
「俺さ、ずっと友達が欲しかったんだ、実際、セレナに説得されるまで剣魔学園に行くか行かないかで迷ってた」
あの頃の俺は、自信がなかった。
友達を作ろうとしても相手にされず、信じていた奴らには裏切られ、親にも嫌われた。
異世界に来て、ディノスに「剣魔学園に入学しないか?」と言われた時も、またイジメられるかもしれないと思っていた。
だがその思いは変わった。
「セレナに出会って、友達になって、剣魔学園に入学する為に一緒に修行して強くなった。 だから王都でクリス達に会えたんだ」
「……………」
「あの日セレナに会わなかったら、俺は今でも孤独だったはずだ。 だからあの日、俺と友達になってくれてありがとう」
「……救われたのは、私だけじゃなかったんだね」
「あぁ、おかげで今は毎日が楽しいよ」
「ふふっ…私もだよ」
俺の最初の友達が、セレナで良かった。
そして、この世界に来れて…本当に良かったと思う。
明日からは学園生活が始まる。 
向こうの世界とは違い……この世界では……楽しく、自由に生きてやる。
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二章  少年期 剣魔学園 入学編
終
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